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  第40話 『 各々の修行 ~カノンの場合~ 』


 ――〝異能キ 〟、オーバーロック



   憑   依   弾   丸



 ――チャージ



    破    王    砲



 ――僕の身体に〝破王砲〟が装填された。


 「……準備OKです」

 「では、それをこの岩壁に叩き込みなさい」


 ……ニアさんが僕の隣から指示を出す。


 「わかりました」


 僕は目の前の岩壁を睨み付けた。

 集中する。

 そして、構えた。


 「 〝バースト〟 」


 ――そして、僕は渾身の力で岩壁に拳を叩き込んだ。



    破    王    拳



 ――森中に、大砲を撃ち込んだ轟音が鳴り響いた。


 「……よし、まあまあかな」


 僕は目の前の岩壁を見て、満足した。


 ……目の前の岩壁は大きく抉れ、そこからは幾重にも亀裂が走っていた。


 「OK、まあまあね。じゃあ、今度は〝破王砲〟を隣の岩壁に撃ち込んで」

 「はい」


 僕は〝火音〟をホルダーから抜き出し、岩壁から少し距離を空けて構える

 ……そして、深呼吸を一回挟み――引き金を引いた。




 ――ドォンッッッッッッッッッ……!




 ……先程よりも数段馬鹿でかい轟音が森中に鳴り響いた。


 「……やっぱりね」


 ニアさんが僕の後ろで笑った。

 ニアさんの視線の先には――巨大な風穴が空いた岩壁があった。


 「〝憑依弾丸〟の方が破壊範囲が狭いことを含めても、同じ一発の〝破王砲〟でも威力が桁違いね」

 「はい」

 「何故だかわかる?」


 当然だ。僕自信の〝特異能力〟だからね。


 「はい、100パーセントの〝破王砲〟を拳で撃ち出すと僕の拳が反動で耐えられなくなります」

 「その通り♪」


 ……でも、とニアさんが続けた。


 「100パーセントを撃てるようにならないとオールラウンダーにはなれないわ」

 「はい」

 「どうすればいいと思う?」

 「そうですね、衝撃を緩和することができれば、100パーセントを使うことができると思います」

 「じゃあ、どうすれば衝撃を緩和できると思う?」

 「……すみません、わかりません」


 ……お手上げだった。


 「答えはわたしからは教えられないけど、それを克服すればきっとあなたは弱点を克服できるわ」


 更にニアさんが続ける。


 「弱点を克服するということは能力を支配するということに繋がるの。そうすればあなたも〝第2形態〟へたどり着くことができるわ」


 ……なるほどね。


 「じゃっ、わたしはちょっくらタツタくんの様子みてくるから一人で試行錯誤でもしといて」

 「あの、何かヒントとかありませんか」

 「無し! 考えることも仕事よ」


 それだけ言ってニアさんはそそくさとタツタくんの下へと行ってしまった。


 「……」


 一人になってしまった僕は取り敢えず腰を下ろして、思考に浸った。

 ……ポイントは至って簡単だ。

 要は〝憑依弾丸〟の衝撃に身体に耐えられるようにする。そして、その為には次の二つの内の一つをクリアしなければならない。

 一つは〝憑依弾丸〟の衝撃に耐えられる肉体、たとえば〝おにぐも〟のような強靭な肉体を手に入れること。

 もう一つは〝憑依弾丸〟の衝撃を何かしらの方法で緩和すること。

 その二つのどちらかをクリアをすれば、〝憑依弾丸〟を支配し、〝第2形態〟への足掛かりになる筈だ。


 「……でも、昔なら考えもしなかったな」


 ……昔の僕なら自分の命なんてどうだっていいと思ってたのに、今ではどうすれば自分を傷つけないようにできるのだろうと考えていた。

 少し心に余裕ができたのかもしれないな。

 これもタツタくんにぶっ飛ばされたお陰かもね、あの一撃で色んなことが吹き飛んだんだ。

 全力を出し切って敗ける、そのお陰で僕はもう一度自分自身を見直すことができたんだ。たぶん、タツタくんにそのつもりは無かったのだろうけど……。

 ……ありがとう、僕は心の中でこっそりとタツタくんに謝辞を述べた。


 「……って、感傷に浸ってないで真面目に修行しないと」


 ――装填、〝破王砲〟……!


 僕は気を取り直して、再び右腕に〝破王砲〟を装填した。

 ……〝おにぐも〟並の強靭な肉体を手に入れるのは今の僕にはできない。ならば、第二案――衝撃を如何に殺すか、を採用する他無かった。

 ……腕を庇えば、100パーセントの威力が出せない。

 ……100パーセントの威力を出せば、腕が耐えられない。


 じ ゃ あ 、 ど う す る ?


 「……〝破王砲〟と拳の間に何かクッションがあればいいんだけど」


 ……考えろ。


 「……そんな便利なクッションなんて」


 ……考えろ。


 「……なんて」


 ――考えろ……!


 ……………………。

 …………。

 ……。


 「 あっ 」


 ……思いついた。


 できるかどうかわからないし、実際に効果があるのかもわからない。でも、可能性を感じる一案だ。

 思い立ったら即実行。僕は〝破王砲〟を――もう一発装填した。


 「……」


 ……精神集中。

 僕は岩壁の前まで歩み寄り、立ち止まった。


 「……」


 ……集中。

 そして、構える。


 「……」


 集中。集中。集中。集中。集中。集中。集中。集中。集中。集中。集中。集中。集中。集中――……。


 「 〝バースト〟 」



 ―― 1 0 0 % 突 破 !



    破    王    拳



 ……僕は拳を振り抜いた。


 「 か ら の 」


 拳と岩壁が接触する――その同時。


 「 〝バースト〟 」


 ……もう一発の〝破王砲〟を解放する。

 〝破王拳〟の衝撃を殺すクッション、それは――〝破王拳〟だ。

 〝破王拳〟の反動は確か確か大きい。しかし、撃ち出された火力に較べれば数段劣る。

 それならば100パーセントの〝破王拳〟から自身にかかる衝撃をもう一発の威力を抑えた〝破王拳〟で相殺すればいい筈だ。

 そうすれば僕の右腕は壊れない。

 求められるのは一発目の衝撃よりも速い二発目の発射の速度――速撃ちだ。


 「 大丈夫 」


 ……そして、〝破王拳〟が岩壁に炸裂した。


 「 得意なんだよ、速撃ちは 」






 ――ドォンッッッッッッッッッ……! 森中に轟音が鳴り響いた。


 「……」


 僕は恐る恐る岩壁の方へと視線を滑らせた。


 「 検証成功 」


 ……そこには巨大な風穴が空いていた。


 「それに」


 ……腕も無事だった。


 「……」


 どうやら僕はたった一日にして〝憑依弾丸〟をマスターしてしまったようだ。


 「ははっ」


 僕は短く笑って芝生に倒れた。


 「あー、疲れた」


 緊張の糸が切れたのか、どっと疲れが回ってきた。


 「……ははっ、ちょっと眠ろうかな」


 修行の第一段階攻略完了。

 次は――……?


 「……」


 少し居眠りした後でもいいかな。



 ……僕は眠気に身を委ねて、瞼をゆっくりと閉ざした。


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