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 第167話 『 お父様を取り戻せ! 』



 「……これから私はお父様を〝水由〟様から奪還します」


 ――ドロシーちゃんはこれからどうしたいの?


 ……わたしがしたその質問に、ドロシーちゃんが真摯な瞳で答えたのだ。


 「しかし、私一人では〝水由〟様には敵いません」


 話に聞けば〝水由〟は〝魔将十絵〟と呼ばれる精鋭の一人らしい。間違いなく強敵であろう。


 「それでも、私はお父様を助けたいんです」


 しかし、ドロシーちゃんの瞳はとても真剣なものであった。


 「ですので、勝手な話と承知の上でお願いさせていただきます」


 ドロシーちゃんはわたし達にとって大切な仲間であって、そんな仲間の涙をわたしは見たくなかった。


 「どうか、私に皆様のお力を貸していただけないでしょうか」


 ――だから助ける。


 「 愚問だよ 」


 わたしは不敵に笑んだ。


 「仲間ならこの程度の試練、乗り越えて然るべきじゃないかな」

 「……ありがとう……ございますっ……!」


 ドロシーちゃんはわたしの手を握り、頭を下げた。


 「感謝の言葉は後――今は一刻も早く〝LOKI〟さんを奪還しよう」

 「はいっ……!」


 とはいえ、状況は緊迫している。


 「まずは状況を確認するよ」


 何故なら、〝LOKI〟さん奪還のチャンスはもう一刻も残されていないのだ。


 「ここから魔王城までは歩いてどのくらい到着したか、覚えている?」

 「……走って二十分……歩きであればその倍は掛かります」

 「じゃあ、〝水由〟がこの場所から離れたのはいつ頃か覚えてる?」

 「……たしか……二十分くらいかと思われます」

 「なるほど、大体わかった」


 わたしは思考した。


 「……」


 ……ここから魔王城までの徒歩での移動時間はおよそ五十分弱。

 ……そして、現在の経過時間は二十分超。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 「……………………よしっ」


 ――整った!


 「カノンくん! 今すぐここから南西へ向かって! 勿論、全速力で……!」


 わたしはカノンくんの方を向いて、南西の方角を指差した。


 「ギルド様、突然慌ててどうされたんですか?」

 「時間が無いの!」


 そう、時間が無いのだ。


 「〝水由〟は魔王城の住人、だから必ず戻る筈――だけど、そうなれば〝LOKI〟さんの奪還はほぼ不可能になる!」


 〝水由〟が魔王城に戻れば、それは〝白絵〟やアーク、他の〝魔将十絵〟がいる。とてもではないが太刀打ちできる戦力ではなかった。


 「だから、〝水由〟が魔王城に戻るよりも早く接触して、〝LOKI〟さんを取り戻す!」

 「……それで僕?」

 「うん、一先ず〝水由〟の足を止めることが先決だからね。〝雷華〟を使えばすぐに追い付くよね」


 本当は全員まとまって戦いたいところではあったが、今は〝水由〟を魔王城に到着させないことの方が優先事項であった。


 「カノンくんが足止めをしている間にわたし達が合流して戦う」

 「戦うって、勝算や作戦はあるのかい?」


 そう、相手は〝魔将十絵〟の一人――〝水由〟だけではない。炎の巨人、〝LOKI〟さんもいるのだ。

 それに加え、こちらはタツタさん抜きで戦わなければならない。


 ……はっきり言って〝無謀〟である。


 「別に二人に勝つ必要はないんだよ。要は、〝水由〟の持つ〝LOKI〟さんを支配している指輪さえ奪うか破壊すれば、形勢は幾分か覆る……その後は皆で協力して〝水由〟を撃破すればいいんじゃないかな」

 「……大雑把だね」

 「悪いけど作戦を煮詰める時間はもう残っていないから」

 「いや問題ない、それで行こう」


 カノンくんは頷き――〝雷華〟を発動した。


 「カノンくん」

 「……何?」


 いざ出発しようとしたカノンくんにわたしは最後に一言だけ残す。


 「すぐに追い付くから」

 「うん、待ってる」


 それだけ言ってカノンくんは〝水由〟の向かった方向へ飛び出した。


 「それじゃあ行こっか、ユウくん」

 「りょーかい♪」


 わたしの呼び掛けにユウくんが能天気に応える。


 「あの、わたしはどうしましょうか」

 「うーん、フレイちゃん、か」


 フレイちゃんが控えめに前に出た。


 「そうだね、危険だけど来てくれると助かるよ。戦力は一人でも欲しいし」

 「はい、任せてください!」


 迫る戦いの刻に、フレイが意気揚々に頷いた。


 「……あの、わたしは?」

 「クリスちゃんは今回はタツタさんの傍にいて、タツタさんの火傷を氷魔法で冷やしてくれる助かるよ」

 「……わかった。そうする」


 わたし、ユウくん、フレイちゃん、フゥちゃんは出発組。

 クリスちゃんは待機組。

 後は――……。


 「ドロシーちゃんはどうするの?」

 「……」

 普通に考えれば待機組であるが、〝LOKI〟さんはドロシーちゃんのお父さんなのだ。助けたいに決まっていた。


 「行く?」

 「……」


 ドロシーちゃんは少し考え、すぐにこちらを向き直った。


 「行きますっ、お父様は私の父親です、こんなところでただ待っているだなんてできませんっ」

 「ええ、わかったわ」

 ドロシーちゃんの答えにわたしは頷き、了承した。


 「ただし、わたしとユウくんも全速力で行くから悪いけど全力で着いてきてね」

 「はいっ!」

 「足手まといにはなりません!」


 フレイちゃんとドロシーちゃんは力強く頷いた。

 何にしてもこれで準備は整った。


 「それじゃあ、行くよ!」

 わたしを先頭に皆が着いてくる。


 〝LOKI〟さん、奪還作戦――……。


 「よしっ、行くか」

 「はいっ!」

 「必ず助け出します、お父様」

 『キューッ!』



 ――開始。



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