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 第153話 『 失踪 』



 「 滝だーーーッ!!! 」


 ……俺は豪快に水飛沫を散らす滝を前に興奮していた。


 「皆、泳ごうぜ!」

 「傷の方は宜しいのでしょうか」

 「治った!」


 そう、グレゴリウスとの戦いからかれこれ二週間が経っていた。

 俺達は雷の精霊――〝アルマガンマ〟を仲間にすべく、西の大陸――ウェルタン大陸を目指していた。

 その為、現在、俺達は〝暗黒大陸〟を横断しているのであった。


 「いいんじゃない、ずっと森の中で景色が変わんなかったし、気分転換になるんじゃないかな」


 カノンが賛同してくれた。


 「水着は前買ったのがあるし、いいと思います」


 ギルドも賛同してくれた。


 「イヤッホーーーッ!」


 ――バッシャーーーンッ! 既に水着に着替えていた夜凪が滝壺に飛び込んでいた。


 ……早っ! 流石は元〝KOSMOS〟の一員とでも言うべきであろう(意味不明)。


 「そうですね、少し休憩しましょう」

 「……ちょっと着替えてくるね」

 「滝ーーーッ!」

 『キューッ!』


 ドロシー・クリス・フレイ・フゥも賛成してくれた。


 「よっしゃあ、泳ぐか!」


 ……そんなこんなで、俺達は少しばかりの寄り道をすることにした。



 「水、冷たいですね♪」

 「……ああ」

 「ん? タツタさん、何か心ここに在らずって感じですよ」

 「……ああ」

 「タツタさーん」

 「うおぃっ! いつの間に俺の前にいたんだよ!?」

 「……ずっと、いたんですが?」


 ……そうなんだ、君達の水着姿に心奪われてて全然気づかなかったよ。


 「……熱心に見られていたようですが、何かあったんですか?」

 「ああ、ドロシーのマイクロビキニを見ていたんだよ。何度見てもヤバいな、あれ」


 ……と、ついつい正直に答えてしまう。


 「……って、どうしたんだ、ギルド」


 ギルドはぷくぅー、頬を膨らませていた……リスに似ているなと思った。可愛い。


 「な・ん・で・も・あ・り・ま・せ・ん・!」


 (あからさまに怒ってるーーー!)


 ……乙女心は難しい。


 「悪い、何か怒らせたか?」

 「怒ってませんよ!」


 そう言ってギルドは滝壺に身体を投げ出した。


 ――ブシューーーッ! ギルドの身体に触れた水が水蒸気となって吹き出した。


 (蒸発したーーーッ! てか、やっぱり怒ってるじゃないかーーーッ!)


 とにかく、今のギルドには触れないでおこう……比喩無しで火傷しそうだし。


 ――ちょんっ、ちょんっ


 ……むっ、何者かに背中をツンツンされたぞ。


 「……て、クリスか。どうしたんだ?」


 ……背中ツンツンの主は小悪魔系ロリ巨乳、クリスであった。


 「……あの、タツタさん。少しいいかな」

 「おう、どうしたんだ?」


 クリスは顔を赤らめながら小さな声で話し掛けてきた。


 「……あの、実はわたし、泳げなくて」

 「あー、だったね」


 ……水の精霊なのに。


 「……その、泳ぎ方を教えてほしいなぁーって、思ったりして」

 「おっ、いいぞ」


 別に時間はあったので、俺は快諾した。


 「えへへー、やったー」


 そう言って、クリスは俺の腕にぎゅーとしがみついた。


 (……むっ、胸が当たっているんですが、クリスさん!)

 「こほんっ」


 鼻の下を伸ばしていた俺であったが、ギルドが後ろで咳払いしていたのですぐにキリッと表情を引き締めた。


 「手取り足取り、優しく教えてね(熱視線)」


 ……わざとですか、クリスさん。


 「おっ、おう。任せろよ(鼻の下にょいーん)」


 ……これは生理現象なので仕方ない。


 「こほんっ、こほんっ! ごほっ、ごほっ! カァーッ! カァーッ!」


 喘息かな?


 ……まあ、何はともあれ、クリスに泳ぎを教えることになった。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 「おー、いい感じいい感じ」


 ――バシャッバシャッ


 「そうそう、そんな感じ」


 ――バシャッバシャッ


 「はい息吸ってー、はい止めてー」


 ――バシャッバシャッ


 俺はクリスの手を掴み、クリスはひたすらばた足をしていた。何と言うか俺も泳ぎ方を教えるなんてよくわからないので、イマイチ要領が掴めなかった。

 まあ、最初に息を止めて顔を水に入れる練習したから、次はばた足でいいと思う……うん、テキトーですまん。

 それから、かれこれ三十分ほどばた足練習もしたので、一旦、休憩を挟んでみた。


 「……どうだ、そろそろ一人で泳いでみるか?」

 「……ちょっと、怖いかも」

 「大丈夫さ! 試しにちょっとやってみようぜ!」


 クリスの性格上、先伸ばしたらズルズルと後回しにしそうだったので、俺は強引にも挑戦させてみた。


 「……うん、タツタさんが言うんならやってみるね」


 クリスが小さくガッツポーズして、頷いてくれた。


 「大丈夫さ! 何かあっても俺が助けてやるよ!」

 「……タツタさん(ぽっ)」

 「こほんっ! こほんっ!」


 ……そんな訳で、クリスの挑戦が始まった。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 「何だかんだあったが泳げるようになって良かったな、クリス」


 ……色々割愛したが、クリスは無事一人でも泳げるようになった。


 「……うん、タツタさんが優しく教えてくれたからかな」

 「そんなことないさ、クリスが頑張ったからだよ」


 俺はクリスの頭を優しく撫でた。


 「えへへー、頑張ってよかったかなー」


 クリスが控えめにはにかんだ。

 こんなに喜んでもらえるなら、こっちも教えた甲斐があったというものだ。



 「 皆さーん! バーベキューの準備ができましたよー! 」



 ……俺がクリスに水泳を教えている間に、ギルドとドロシー・カノンがバーベキューの準備をしていてくれた。


 「肉ゥー!」

 「わーい!」

 『キューッ!』


 夜凪、フレイ、フゥも滝壺から飛び出し、焚き火の前に集まった。


 「それではすぐ焼きますので少々お待ちくださいね♪」


 ドロシーは上にパーカーを着けていた……くっ、余計なことを!


 ……まあ、それはさておき。


 「悪い、ドロシー。ちょっと、火の見張りをしてもらっててもいいか」

 「はい、構いませんが」


 俺達はドロシーを置いて、そそくさ茂みの奥に潜っていった。

 ……今日、俺達はドロシーを除いてある計画を立てていたのだ。

 そもそも今日は一年に一度しかないある特別な日なのであった。

 そう、それは――……。

 着替え終わった俺達は茂みから飛び出した。



 『 ハッピーバースディ!!! ドロシー……!!! 』



 ……全員、メイド服姿で。


 「……ふぇっ、えっ?」


 ドロシーは訳がわからないという感じであった。


 「お誕生日おめでとう! ドロシーさん!」


 ……そう、今日はドロシーの誕生日であった。


 「今日は日頃御世話になっているドロシーさんの代わりに、皆でメイドになろうってアイデアなんだ」

 「ちなみに俺が考えた!」


 ドヤ顔で胸を張る俺であるが死ぬほど似合っていない。


 「今日は皆でドロシーさんを御奉仕するんだよ」

 「ささっ、主役は座って座って!」

 「えっ、えっ?」


 クリスとフレイのロリ勢の勢いに圧され、ドロシーは取り敢えず椅子に座らされた。


 「ドロシーさんはいつもマッサージしてくれているので、今日はわたしがマッサージします!」


 フレイがドロシーの肩を叩いた。


 「……ドロシーさんはいつも皆のご飯をよそってくれるので、今日はわたしがドロシーさんのお肉をよそおうかな」


 クリスがドロシーの皿に焼けた肉を並べた。


 「俺は片付けが苦手でいつもやってたもらってるから俺がお皿を洗うよ」

 「僕はいつも紅茶を淹れてもらっているから、今日は僕が飲み物を注ぐよ」

 「今日はわたしが料理担当よ! 手出しは無用だからね!」

 「俺はいつもドロシーのメイド姿に癒されてるから、今日は俺のメイド姿で癒されてくれ!」

 『キューッ!』


 皆、いつもギルドにしてもらっていることの恩返しをした。


 「……」


 そんな俺達を前にドロシーは――涙を流した。


 「どうしたんですか、ドロシーさん。お腹でも痛いんですか!」

 「……いいえ」

 「目にゴミが入ったりした?」

 「……いいえ」

 「タツタさんのメイド服姿がグロすぎたからとか?」


 ……オイオイ、事実でも傷つくぞ。


 「……いえ、私、嬉しくて」


 ドロシーは泣いていたけど、涙を拭う手の隙間から見えるドロシーの顔は笑っていた。


 「皆様にこんな風に祝ってもらえるなんて思っていなかったので、とても嬉しく思います」

 『……』


 俺達は嬉し泣きをするドロシーを優しく見守った。


 「本当にありがどうございますっ」

 「馬鹿、感謝するには早いぜ」


 俺達は各々準備した誕生日プレゼントを前に出した。


 「楽しいのはこれからだ……!」

 「……っ!? はいっ♪」


 ……そんな訳で、ドロシーのお誕生日パーティーは夜まで続くのであった。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 ――明け方、俺は小鳥のさえずりで目を覚ました。


 (……俺、いつから寝てたっけ?)


 俺は記憶をたどった。

 そうそう、昨日途中から酒が入って、酒に弱い俺は早々にダウンしたんだっけな。


 「……」


 ……俺は周りを見渡した。


 「……」


 ギルドもカノンもフレイもクリスも夜凪もフゥも、全員毛布にくるまって眠っていた。


 ……あれ? ドロシーがいないな。


 まあ、たぶん顔でも洗っているんだろ。この毛布もドロシーが掛けてくれたに違いない。

 何にしても楽しい一時だった。また、やりたいな……次は誰が誕生日だったっけ?


 「……俺も顔でも洗いますか」


 俺は独り言を呟き、立ち上がろうとした。


 ――クシャッ、何か手で押し潰したようだ。


 「……何だ、これ?」


 ……それは一枚の羊皮紙であった。


 「何か書いてあるな」


 羊皮紙には短い文章が書かれていた。


 「えーと、なになに――……!」


 俺は躊躇いもせずに、その文章を読み――絶句した。


 「……嘘だろ」


 俺は何度も何度も、その短い文章を黙読する。


 「……」


 しかし、何度読んでも、文章の内容が変わることはなかった。

 それでも、俺はその事実を認められないでいた。

 ……そう、羊皮紙にはこう書かれていた。



 拝啓、親愛なる方々へ。


 短い間ではありましたが、皆様との旅はとても楽しいものでありました。

 しかし、この度、一身上の都合により私はこの旅を降りさせていただきます。

 説明や言い訳はありません、ただ、そうしなければならなかったということだけは、どうか御理解ください。

 私の方から申し出ておいて、勝手に皆様の下を離れることに関しては誠に申し訳ございませんでした。

 最後に、共に旅をしていただき、又、昨日のようなパーティーを開催していただきありがとうございました。


 ドロシー=ローレンスより。



 ……それは、認めたくない、しかし、認めざるを得ない、残酷な現実であった。


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