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82話 氷の世界

 未知の発見があるかもしれない。

 そんな期待感に胸を膨らませつつ、攻略を開始……


「あわわわっ!?」


 しようとしたところで、サナが足を滑らせた。


「ひゃ!?」


 隣のアンジュに掴まる。

 しかし、いきなりのことにアンジュも驚いてしまい、体勢を崩す。

 そのまま、ダーンと二人は折り重なるようにして転んでしまう。


「アンジュ! サナ! 大丈夫……あ、えっと……」


 とあることに気がついて、俺は慌てて駆け寄るのを止めた。


「師匠ぉ……助けてくださいっす」

「すみません、ハルさま……手を貸していただけるとうれしいのですが」

「あ、いや……そうしたいところではあるんだけど、なんていうか……」

「ハルさま?」

「えっと……その前に、スカートを……」


 もつれあい倒れた拍子で、アンジュのスカートが大きくまくれていた。

 その奥にちらりと下着が……


「……っ!!!?」


 氷の世界にいるとは思えないくらい、アンジュの顔が赤くなる。

 そのまま強引に起き上がり、勢いよくスカートを両手で押さえた。


「……見ました?」

「……ごめん」


 見てないと言っても、これ以上ないほどウソっぽいため、素直に頭を下げた。


「うぅ……ハルさまにはしたないところを見られてしまうなんて、うぅ……」

「えっと……」

「大丈夫っす!」


 落ち込むアンジュをサナが慰めるのだけど、


「人間のオスはパンツとか好きって聞いているっす! だから大丈夫っす!」


 ぜんぜん慰めになっていない。

 というか、サナはどこでそういう知識を仕入れてくるんだろう?

 本?


 だとしたら、今後、サナが読む本はきっちりと管理した方がいいかもしれない。


「その……お、お騒がせいたしました。もう大丈夫です。先に進みましょう」

「うん、そういうことなら」


 なかったことにしてくれるアンジュ、優しい。

 心の中でもう一度ごめんと謝りつつ、先に進む。


「大丈夫?」

「あ、はい……ありがとうございます」


 また転ばないように、アンジュに手を差し出した。

 なぜか頬を染めつつ、俺の手を握る。

 照れているのかな?

 でも、手を繋ぐくらいで?


 気のせいか。

 そう納得しつつ、もう片方の手をサナに。

 すると、サナがぽかんとする。


「自分とも手を繋いでくれるっすか?」

「え、そりゃそうだよ」

「うぅ……師匠が優しいっす。やっとデレたっす」


 にっこりと笑顔になり、俺の腕に抱きついてくる。


 俺、そんなに冷たくしていたかな……?

 確かに、最初は弟子にしてほしいと言われて困惑していたけど……うーん。

 もうちょっと優しくした方がいいのかもしれない。

 昔はどうあれ、今は、サナは大事なパーティーメンバーなのだから。


 そうして、三人で手を繋いで氷の世界を進む。

 気をつけていれば滑るということもなく、ハプニングに襲われることもない。


「うぅ……寒いっす」

「大丈夫?」

「ドラゴンはトカゲみたいなものなので、寒さに弱いっす……風邪引かないといいっす」


 自分でトカゲみたい、とか言うの……?


「風邪を引いたら、私が看病をしますね」

「アンジュ、優しいっす」

「うーん」

「どうしたっすか、師匠。難しい顔をして」

「おかしいと思わない?」

「えっと……なにがでしょう?」


 二人共、特にこの状況に違和感を覚えていないみたいだ。

 たぶん、いきなり氷の世界になっていることに驚いて、感覚が麻痺しているんだろう。


「ぜんぜん魔物が出てこない」

「「あっ」」


 12層に降りて、10分以上は経っている。

 それなのに、未だに魔物の一匹と出会わない。

 こんなこと、他の階層ではなかったんだよね。


「どういうことでしょうか……?」

「カチコチに凍っていることといい、ここ、おかしいと考えた方がいいっすね」

「だね。最大限に警戒して進もう」


 時間はかかってしまうけど、それは仕方ないと諦める。

 二人の安全が第一だ。


「むっ」


 突然、サナが足を止める。


「どうかした?」

「……師匠、なにか音がするっす」

「音?」

「争うような音と……あと、悲鳴が聞こえるっす」

「悲鳴!?」

「あ、人のものじゃなくて、魔物の悲鳴っすね」

「よかった……のかな?」


 一瞬、安堵するものの……

 この先にいるのが味方とは限らない。

 紅の牙のような連中とまた遭遇しないとも限らない。


「サナ、具体的な場所はわかる?」

「わからないっす!」

「わからないのですね……」

「うー……面目ないっす」

「まあいいよ。この先、なにかあるとわかるだけでも、色々と違うし。今まで以上に、慎重に進もう」

「ハルさまの魔法でどうにかできないんですか?」

「うーん……アレンジはできると思うけど、そのために、基礎になる魔法を習得していないと。さすがに、一から魔法を作り出すのは無理かな」

「ハルさまなら、なんなくやってのけそうですが……」

「自分も同感っす」

「ゆっくり進む、ということで」

「ラジャーっす」


 足を進めると、俺にも物音と悲鳴が聞こえてきた。

 どうやら、この先で戦闘が行われているみたいだ。

 唇に指を当てて、声を出さないように、と二人にアピール。

 その後、そっと角から顔を出して、物音と悲鳴がする通路を覗き込む。

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] アッサリとトカゲ認知しちゃった…(笑) [気になる点] 『見られちゃった…お嫁に行けなーい!』と叫ばないところに、世界の差を感じさせます(※違う(笑)) [一言] 氷の世界…となると、敵は…
[良い点] うむ 白か・・・(予想)w 凍った地面だぞ 足元注意! [一言] 敵がいないのは氷漬けだからじゃw
感想一覧
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