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81話 攻略は順調に

 二度目ということもあり、攻略は順調だ。

 前回は思わぬトラブルで五層で引き返したものの……

 その五層に一時間ほどでたどり着いた。


 そこからさらに一時間をかけて、十層に到着。

 一層あたり約十分で攻略するという、かなりのハイペースだ。


 それだけの速度で進むことができているのは、サナとアンジュのおかげだ。

 雑魚敵が大量に現れたとしても、強引に蹴散らしてしまえばいい。

 多少の怪我はしてしまうが、それはアンジュに治療してもらう。


 トラップに関しても、サナが前に出ることでほぼほぼ無力化していた。

 なにせ、ドラゴンを害することができるトラップなんてない。

 強引に突き進むことができる。


 たまに、大量の地雷を起爆させてしまい、痛い思いをしているが……

 それもまた、アンジュに癒やしてもらえばいい。


 そんな感じで、俺達はダンジョンの奥へ奥へと進んでいた。


「あっ! 師匠、見つけたっす。次の階段っす」


 サナが指差す方向に、十一層に下る階段が見えた。

 ドラゴンだけあって目がいい。

 誰よりも早く階段を発見していた。


「師匠、師匠」


 サナにキラキラとした目で見つめられる。

 褒めて褒めてというように、自己主張するわんこみたいだ。


「ありがとう、サナ」

「えへへー」


 頭を撫でると、とてもうれしそうにされた。

 慕ってくれるのはうれしいんだけど、でも、サナはそれでいいのだろうか?

 ドラゴンとしてのプライドは……?

 最近は、ドラゴンというよりはわんこに見えてきたなぁ。


 そんなことを思いつつ、十一層へ。

 すると、今までとは違う光景が広がる。


 やや広い部屋。

 四方に大きな水晶が設置されていて、淡い輝きを放っている。

 そして、すぐ先に十ニ層に繋がる階段が見えた。


「ここは……?」

「たぶん、休憩部屋です。ダンジョンの中には、一定の確率で魔物が出てこない階層が出現するみたいです。ここなら、安心して休めると思います」

「なるほど。それじゃあ、ちょっと休んでいこうか」


 ダンジョン攻略を再開してから、一度も休憩をとっていない。

 そもそも、色々なことがあったから、一度目の攻略から休憩をとっていない。


 時間を置けば、紅の牙が……シニアスがなにかする可能性が出てくるから、急がないといけない。

 ただ、急ぐあまり休憩を怠れば、後で致命的な支障が出るかもしれないので無理はできない。


 あらかじめ用意しておいたキャンプキットを広げる。

 テントはないけれど、その他、食料や水。

 体を休めるための寝袋などがある。


「二時間ちょいで11層か……順調といってもいいかな?」

「はい、とても順調だと思います。この分なら、22層……いえ、それ以上に進むことができて、新記録を更新することも不可能ではないと思います」


 アンジュがうれしそうに言う。


「あ、そっか」

「どうされたんですか?」

「今思ったんだけど、別に財宝を見つける必要はないのかな、って」

「どういうことですか?」

「22層以上先に行って、そこの情報を持ち帰るだけでも、けっこうな成果じゃないかな? 22層以降の情報はないから、それも一つの立派な財宝になるんじゃないかな、ってさ」

「確かに、そうですね……どのようなフロアなのか? 魔物やトラップの情報。そういったものを得られると、今後のダンジョン攻略の速度に大きな進展が見られるでしょうし……はい、それでも問題はないと思います」

「でもでも、自分は財宝を探したいっす! キラキラのお宝物欲しいっす!」


 とても現金な意見が飛び出した。

 本当にドラゴンなのだろうか?


 でも、一部の説では、ドラゴンは財宝を好み蓄えると聞く。

 それが正しいのなら、サナが目を輝かせるのは普通なのかな?


「とりあえず、両方を目指していこうか。22層に到達できるかわからないし、財宝も見つけられるかわからない。どう転がってもいいようにしておこう」

「ですね」

「はいっす!」

「じゃあ、少し休んでおこうか」


 疲労回復に効果があるという果実水を水筒に入れておいた。

 それをみんなに配り、一口飲む。


 水筒に移してそれなりの時間が経っているから、すっかりぬるくなってしまっている。

 それでも果実水は甘くておいしく、疲れが消えていくみたいだ。


「それにしても……こんなダンジョン、誰が作ったんだろうね?」

「少し調べましたが、正確なことは判明していないようです。昔の砦だとか、魔物の家だったとか、神々が気まぐれに作ったとか」

「色々な説があるんだなあ」

「自分は、ドラゴンの寝床案を採用したいっす」


 他愛のない話をしつつ、体を休めること三十分ほど。

 気力も体力も十分に回復した。


「それじゃあ、そろそろいこうか」

「ういっす!」


 サナが荷物をまとめて背負う。

 女の子に……と思わなくもないのだけど、それは見た目だけの話で、中身はドラゴン。

 だから誰よりも力も体力もあって、俺達が運ぶより確実なんだよね。


「さてと……十二層はどんなところかな?」


 少しだけの期待とわくわく感を胸に、俺達は階段を降りた。


 たどり着いた場所は、一面が凍てついている氷の世界。

 どこからともなく冷気が流れ込んできて、思わず震えてしまう。


「これは……」

「す、すごいですね……まるで、季節が一気に進んでしまったかのようです」

「さ、寒いっす……ガクガクブルブル」


 サナは寒さに弱いらしく、一気におとなしくなっていた。


「この都市のダンジョンは、本当に不思議ですね。一層降りるだけで、こんなにも違う光景が広がるなんて。まるで、別世界に来てしまったかのようです」

「うーん……おかしいな」

「どうされたのですか?」

「いや、氷の世界に遭遇するなんて情報、聞いたことないんだよね」


 ダンジョンに潜る前に、簡単ではあるが情報収集をした。

 初心者向けのガイドブックなんていうものも購入しておいた。


 それらの情報の中には、突然、ダンジョンが氷の世界になるなんていう話はない。

 どういうことだろう?


「俺達の情報不足なのか。それとも……誰も体験したことのない、未知の現象に遭遇しているのか」

「あっ……ハルさま。もしもそうだとしたら、これ以上ないほど貴重な情報になるのでは?」

「うん、そうだね。この十ニ層は、隅から隅まで徹底的に調べることにしようか」

「はい、わかりました」

「まじっすか……自分、寒いっす……冬眠したいっす……」


 サナのテンションはダダ下がりだったものの、我慢してほしい。


「サナさん、がんばってください!」


 なんとか元気づけようと、アンジュがサナを抱きしめる。


「ふわぁ、あったかいっす……アンジュは温かいっす」

「ふふっ、元気になってくれたみたいでよかったです」

「師匠も、一緒にぎゅっとされてみないっすか? 気持ちいいっすよー」

「えっ!? は、ハルさんも? それは、その……えと……は、恥ずかしいです」


 もちろん、丁重にお断りさせていただいた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] ドラゴンだからって、トラップをモノともしないって…タンクと言うより、ヤ○ザの鉄○玉扱い(笑) [気になる点] セーフティーエリアだけど、他には誰も冒険者がいない。少しは跳ねっ返りがいても……
[良い点] このドラゴンは寒さに弱いかw トカゲ?w [一言] 罠をもろともせず突き進むサナ 絵になるなw
感想一覧
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