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77話 死闘・その3

「はぁっ!」


 シニアスが音速剣を連射する。

 連射といっても、十秒に一発程度というもので、避けるヒマもないというわけじゃないんだけど……


「くっ、なんて厄介な……!」


 不可視の斬撃。

 しかも速度は異常に早く、切れ味も抜群。

 避けることに精一杯で、反撃に移ることができない。


 シールドで受け止めればいいのかもしれないけど……

 シニアスの斬撃は、こちらの魔法を超えてきた。

 下手をしたら、シールドごと真っ二つ、なんていう事態になりかねない。

 さすがに、そんな賭けをすることはできない。


「ふふーんっ、そんなもの自分に通用しな……あいたたたっ!? 痛い、痛いっす!?」


 浅くではあるがサナが肩を斬られて、涙目になっていた。

 ドラゴンの装甲を貫くところを見ると、やはり油断はできない。


「サナ、まともに受け止めたらダメだ。全部、きっちりと避けないと!」

「そ、そんなこと言われても、見えない斬撃をどうやって避ければいいか……逆に、師匠はどうやって避けてるっすか? 人間業じゃないっすよ」

「え? ……勘?」

「……やっぱり、師匠は魔王かなにかっすかね?」

「軽口を叩いてないで……次、来るっ!」


 シニアスは涼しい顔をして音速剣を立て続けに放っている。

 これだけ強力なスキルだ。

 普通は一定のクールタイムが必要になるか、魔力などの相応の代価が必要とされるのだけど……

 彼を見る限り、そんな様子はない。

 代償はなしに、無制限にスキルを放っているように見える。


 でも、そんなはずはない。

 なにかしら、カラクリがあるはずだ。

 それを見破ることができれば、あるいは……


「……そうかっ、そういうことか!」


 攻撃を避けつつ、ひたすら観察に専念していると、とあることに気がついた。

 それこそがヤツが無限に攻撃を放つことができるカラクリなのだろう。


「サナ、合図で突撃するよ」


 ヤツにバレないように、小声で打ち合わせをする。


「えっ!? で、でも、そんなことしたら真っ二つにされないっすかね?」

「一撃くらいなら、なんとかなるよね?」

「それなら、まあ……でも、二撃目、三撃目となると怪しいっすよ?」

「その前にヤツの攻撃を止める。狙いは……」


 作戦を伝えると、サナは驚いたような顔に。


「この短時間で……しかも、こんな状況で、よく見抜くことができたっすね……すごいっす! さすが師匠っす!」

「感心するのは後。まずは、アイツを倒さないと」

「ラジャーっす!」


 俺とサナ、二人で足並みを揃えて突撃する。

 それを見たシニアスが、口元に笑みを浮かべる。


「狂った……わけではないだろうな。やぶれかぶれの突撃でもあるまい。活路を見出したか……おもしろいっ、派手に命を賭けて抵抗してみせろ!!!」


 警戒するわけでもなく、むしろ楽しそうに笑う。

 やはり、コイツは心が壊れているのだろう。


 戦うことにしか興味が持てないなんて、ある意味で魔物と同じだ。

 そんなヤツの歪んだ心を満たすために負けるつもりなんてない。


「音速剣っ!」


 不可視の斬撃が迫る。

 勘で避ける以外の方法がないのだけど、今回はそれはなし。


「シールドッ!」


 走りながら魔法の盾を展開。

 ギィンッ! と鉱石が弾けるような音が響いて、盾が砕ける。

 ただ、斬撃も消滅して防ぐことに成功。


 まずは、一撃目を防ぐことができた。

 ただ、シニアスとの距離はまだ開いている。


「音速剣っ!」


 二撃目。

 これはサナに任せる。


「だっしゃらーっ!!!」


 女の子が発してはいけないようなかけ声を口にしつつ、サナが拳を繰り出した。

 ドラゴンが放つ一撃必殺の拳。

 それは衝撃波をまとうほどで、音速剣を相殺する。


 さらにシニアスとの距離を詰めた。

 あと少しでヤツの懐に潜り込むことができる。


 しかし、その前に三撃目が放たれる。


「音速剣っ!」

「それを待っていたっ、フレアソードッ!」


 ヤツが剣を振り……

 その先に、魔法で生み出した炎の剣を叩きつける。


 相殺。


 バチィッ! という音と共に衝撃波が周囲に撒き散らされる。

 俺とシニアス、両方が飲み込まれた。


 俺は予測をして、覚悟をしていたために動揺することはない。

 ただ、ヤツは違う。

 思わぬ俺の反撃に、多少なりとも驚いたらしく手を止める。

 それが大きな隙となる。


「届いたっ!」

「師匠っ!」


 サナが手頃なサイズの石を投げた。

 ただの投擲と侮ることなかれ。

 ドラゴンが石を投げれば、それは立派な凶器となる。


 空気をえぐり取るようにしつつ、回転しつつ飛翔。

 吸い込まれるようにして、シニアスの仮面を叩く。


「がっ!?」


 痛烈な一撃を頭部に受けて、シニアスがのけぞる。

 しかし、まだ倒れない。

 仮面も砕けていない。


 でも、


「これで終わりだっ!」

「貴様っ!?」


 駆け込み、シニアスの頭部……仮面に手の平をあてがう。


 この仮面が怪しい。

 よくよく観察してみると、なにかしらの魔力を感じた。

 おそらく、身につける者に力を与える魔道具なのだろう。


 コイツがあるから、シニアスは音速剣を連射することができた。

 ならば、打つ手は一つ。


「ファイアボムッ!!!」


 ゼロ距離で魔法を炸裂させた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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