表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/547

76話 死闘・その2

「いい……いいぞっ、すばらしい!!!」


 突然、シニアスが叫ぶ。

 歓喜の表情を浮かべて、何度も何度もすばらしいと叫んでいた。


「俺と戦い、まだ生きているなんて! お前達のようなヤツは初めてだ。いいぞ、すばらしいぞ……あぁ、なんてたまらないのだろうか。このような戦いを俺は求めていたのだ。ははは……あははははっ!!!」

「コイツ……正気か?」

「正気に見えるとしたら、師匠は目を診てもらうことをオススメするっす」

「だよね……」


 自分の命を省みることなく、ただただ戦うことのみを追い求めている。

 異常だ。

 完全に狂っている。


 いったい、どんな経験をしたらこんな風に歪んでしまうのか?

 どのような道を歩いてきたのか?


 多少の興味を覚えるものの……

 今はそれを追求している場合じゃないか。

 最悪、殺す覚悟で戦わないと、逆にこちらが殺されてしまう。


「……慣れないなあ」


 レティシアと別れ、アリスと出会い……そこそこの戦いを経験してきた。

 でも、同じ人同士で本気の殺し合いをしたことなんてない。

 ジンを捕まえた時も、彼を殺す気なんてゼロだ。


 だから、人を殺すという覚悟を持つことができない。

 甘いと言われてしまえば、それまでなんだけど……

 言葉が通じる相手……ましてや同じ人を殺すなんてこと、イヤなんだよな。

 そんなことに慣れたくない。


 でも。


 ここで退くことはできないし、見逃してもらえることはないだろう。

 サナが一緒にいるし……下手をすれば、アリス達が狙われてしまうかもしれない。


 それはダメだ。

 だから……やれる限りのことはやろう。


「サナ、タイミングを合わせて」

「ラジャーっす」


 小声で打ち合わせをしておいた。

 この短いやりとりで理解してくれるのは、本当に助かる。


「今日は良い日だ……最高の殺し合いをしよう!」


 狂気の笑みを浮かべつつ、シニアスが駆けてきた。

 体を低く、被弾面積を少なくしての突撃だ。


 その状態から体を捻り、回転しつつ剣を薙ぐ。

 超高速の斬撃。

 正直なところ、視認できない。


 だから、勘で避けた。


「師匠!」

「俺は平気だから……今っ!」

「うりゃあああああっ!」

「ファイアッ!」


 サナがブレスを吐いて、それと同時に魔法を唱える。

 二つの炎が重なり、紅蓮の業火となりシニアスを襲う。


 多少のバックファイアは覚悟しつつ放った、サナとの合体技だ。

 通路を埋め尽くすように炎が広がり、床と壁と天井を焼いている。


 避けるスペースなんてない。

 逃げる時間もない。

 そのはずなのに……


「オオオオオォッ!」

「なっ!?」


 シニアスは、あえて迫りくる炎に突撃した。

 体を半身に構えて、最小限のダメージで炎の波を乗り越える。


 まさか、自ら炎に飛び込むなんて。

 確かにそれが最適解なんだけど、だからといって、本気で実行できるかどうかは別の話。

 それしか道がないとわかっていても、炎の壁に飛び込める人はなかなかいないだろう。


「トリプルスラッシュッ!」


 シニアスの長剣スキルが発動して、三連撃が放たれた。

 一撃目、二撃目を後ろに跳んで避ける。


「師匠!」


 三撃目は、サナが前に出て防いでくれた。

 今のはかなり危ない、本当に感謝だ。


「音速剣っ!」


 それなりの距離があるはずなのに、シニアスは剣を縦に振る。

 相変わらず視認できないほどの速度だけど、いくらなんでも距離が足りない。


「なにをして……っ!?」


 瞬間、ゾクリと悪寒を覚えた。

 死神が鎌を振り上げているかのような、絶望的な感覚。


 頭の中で警報がうるさいくらいに鳴り響いて……

 本能に従うまま、俺は横に跳ぶ。


 直後……ザンッ! と、さっきまで立っていた場所をなにかが通り抜けていく。


「今のは……!?」

「音速剣を避けるか……いいぞっ、素晴らしい! 今までのヤツは、俺の目にかなったと思っても、音速剣で死んで俺を失望させていたものだ。しかし、お前は違う。初見であるにも関わらず、避けることができた……本当に素晴らしい相手だ。最高に殺し甲斐があるぞっ、いいぞいいぞいいぞぉっ!!!」


 シニアスは剣を深く構えて、再び、遠く離れた場所で振り放つ。

 一瞬、空気が揺らぐのが見えた。


「まさか……」


 超高速で剣を振り、その衝撃波で攻撃している!?


 慌てて剣を振る軌道上から体を逃した。

 再び剣撃の音が間近で響いて、ダンジョンの壁に亀裂が入る。


「し、師匠!? 大丈夫っすか!? っていうか、なにが起きてるんっすか!?」

「たぶん、だけど……衝撃波を発生させる長剣スキルを使用しているんだと思う。遠くからの攻撃が可能で、ほとんど見えない。もちろん、速度も威力も抜群」

「な、なんすか、それ……めっちゃ反則技じゃないっすか」

「くくく……たったの二回で俺のスキルを見破るか。素晴らしいぞ。その首、ぜひ貰い受けるとしようか」


 シニアスが再び剣を深く構えた。


 ヤツの長剣スキル……音速剣といったか?

 かなりの反則技だけど、付け入る隙がゼロというわけじゃない。

 一撃一撃を放つ度に、剣を深く構えないといけないらしい。

 それと、衝撃波が発生するのは剣を振った後。

 一応、攻撃のタイミングはわかるということになる。


「とはいえ……」


 不可視の攻撃。

 風のように速く、ギロチンのように一撃が重い。

 さながら、カマイタチというところか。


 このスキル、どうやって攻略すればいい……?

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

ブクマやポイントをしていただけると、とても励みになります。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 飛ぶ斬撃…ドラゴンとタッグ組んでも大ピンチ…ガンバレー!負けるなー!ガンバレ……え?ドラゴンはメス?…戦闘中にイチャついてたり…してない?それどころじゃない?…やはりガンバレー!! …と、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ