表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/547

60話 次の目的は?

 アリスと二人でしばらく待ってみたところ、アンジュ達と無事に合流することができた。

 シルファのことが気になるけれど……

 さすがに往来のど真ん中で、領主がどうのこうのなんて話はできない。


 アンジュがあらかじめ宿を予約していたらしく……

 そちらへ移動した。

 手際のよい行動に感謝だ。


「それじゃあ、情報の整理をしようか」


 宿の一室に移動して扉を閉めたところで、そう言う。

 なんとなく、流れで俺が話をしきることになっているのだけど、みんな、特に不満はないらしくなにも言わない。

 それならばと、そのまま話を進める。


「まずは、俺達から。俺達が冒険者ギルドで得た情報は……」


 紅の牙のこと。

 領主の黒い噂のこと。

 端折ってはいけない部分だと思い、少々長くなってしまうものの、丁寧に説明をする。


「紅の牙ですか……私達の方でもちらりと噂を耳にしましたが、厄介な相手みたいですね。そんな部隊の隊長に目をつけられてしまうなんて……私、ハルさんの力になりますからね!」

「領主の噂に関しては、こちらでは耳にしませんでした。積極的に聞いて回らなかったということもありますが、街の人々は、その話を避けている傾向にあり……噂を聞くことはできませんでした」


 得た情報にばらつきがあるみたいだ。

 二手に分かれて正解だったかな?


「それじゃあ、私達の番ですね。私達は、主に街とダンジョンについての情報を集めていました。その結果、非常に興味深い情報を得ることができました。もしかしたら、領主に直接会うことができるかもしれません」

「えっ、それは本当に?」

「可能性の話なので、断定はできないんですけど……ただ、実際に領主に会えたという前例がいくつかあります」

「その方法は?」

「ダンジョンに潜ることです」


 アンジュ曰く……


 迷宮都市はダンジョンと共にあり、そこから得られるもので街が発展していく。

 故に、領主はダンジョンの攻略の支援を行っているらしい。


 踏破記録を更新、あるいは最下層にたどり着いた者には、領主から直々に報奨が与えられる。

 あるいは、ダンジョンにて貴重な財宝を得た者に対しても、直々に報酬が与えられる。


 この制度は代々の領主が引き継いでいて……

 現在の領主も行っていて、何度か、冒険者達と顔を合わせているらしい。


「なるほど、そんな方法が……」

「この方法なら、領主と問題なく面会することができます。また、報奨ももらえるので、一石二鳥ですね!」

「うん、そうだね。こんなことを調べてくれて、ありがとう」

「ふわっ」


 普通にお礼を言っただけなのに、なぜかアンジュが赤くなってしまう。

 俺、変なことは言っていないよな……?


「うぅ……ハルさんに褒められてしまうと、とてもうれしくなって、ドキドキして、勝手に顔が熱くなってしまいます。私、どうしたんでしょうか……?」

「……無自覚な想いに振り回されるお嬢さま、とてもかわいらしいです」


 アンジュがあたふたと慌てて……

 その後ろに控えるナインが、とても幸せそうな顔で主を見ていた。


 なにをしているのか、まったくわからないのだけど……

 でも、深くツッコミを入れない方がいいような気がして、見なかったことにしておいた。


「うーん」


 サナが小首を傾げていた。

 喉に魚の小骨が刺さっているような感じで、どこかもどかしそうだ。


「どうかした?」

「なんていうか……うまく言葉にできないんっすけど、なーんかイヤな感じがするっす」

「イヤな感じ?」

「ゾワゾワってするというか、ブルブルって震えるというか、むにゃにゃにゃーんって甘えるというか……」


 むにゃ……三番目はどういう意味?


「なんか、落ち着かないっす。イヤな感じがするっす。勝手に震えてしまいそうになるっす」

「それって……もしかして、怖い、っていうこと?」

「あっ、そんな感じかもしれないっす!」


 アリスの指摘に、それだ! というような感じで、サナが強く言う。


「師匠に魔法をぶちこまれた時と、ものすごく似ているっす。ただの人間と思いきや、魔王のようなとんでもない魔力を持っていて……いやー、あの時は、自分、本気で死んだかと思ったっす」

「ちょっとタイム」


 色々とツッコミを入れたいところはあるんだけど……

 ものすごく見過ごせないことを聞いた。


「つまり、サナは今……死ぬかもしれないっていう恐怖を感じている、っていうこと?」

「そうっすね」

「なんで?」

「なんでっすかねぇ……自分でもよくわからないっすけど、イヤーな感じがするっす」


 サナの言葉を受けて、アリスと顔を見合わせる。


「どう思う?」

「普通に考えるなら、ドラゴンであるサナが恐怖を感じるような存在が、この街にいる……っていうことになるわよね」

「だよね……」

「他の意味合いが隠されているのかもしれないし、サナの思い過ごし、っていう可能性もあるわ」

「うーん……いや、そう考えるのは危険だよ。ドラゴンのサナが恐怖を感じる……そんな相手が本当にいた場合、甘く考えていたら取り返しのつかないことになるかも。いると仮定して、最大限に警戒して動いた方がいいと思う」

「そうね……ええ、了解よ」


 ドラゴンであるサナが怯えるような相手。

 いったい、どんなヤツなのか?

 そして、どこにいるのか?

 この街にいる間は、気を抜けそうにないかもしれない。


「情報の共有、整理としてはこんなところかしら? その上で、次の目的を決めておいた方がいいと思うんだけど……どう思う?」


 アリスの視線が、まずはアンジュとナインへ。

 考えるような間を挟んでから、二人が順に口を開く。


「アーランドで得た情報。そして、この街で得た情報を総合すると、やはり領主が怪しいという結論になると思います。このまま調査を重ねつつ、できることなら、直接、話をする機会を得たいところです」

「そこで私から提案させていただきますが、ダンジョンに潜るというのはいかがでしょう? 最下層に到達する、あるいは、類まれなる財宝を手に入れる。難しいかもしれませんが……」


 ナインが俺を見た。

 次いで、アンジュもこちらを見る。


「ハルさまがいれば、なんとかなるのではないかと」

「そうですね。ハルさんがいれば大丈夫ですね」


 なにその、謎の信頼感?

 ものすごいプレッシャーを感じるんだけど……


「アリス、なんとか……」

「そうね、ハルがいれば問題なさそうね」


 言ってほしい、という台詞の途中で、アリスまでそんなことを言う。

 サナは……目をキラキラさせて、こちらを見ていた。


 味方は……いない。


「あー……ということは、ダンジョンに挑むということでいいの?」

「いいんじゃないかしら? 他に領主に会う方法は、なかなかに難しいだろうし……ダンジョン内なら、あの紅の牙に絡まれることもないんじゃない?」


 言われてみれば、その通りだ。

 うまくいくかどうかはともかく、成功した場合、一石三鳥くらいになる。


「ありといえば……ありかな?」


 他にうまいことは思い浮かばない。

 のんびりしているわけにはいかないし……

 ダンジョンに挑戦してみてもいいかもしれないな。


「じゃあ、次の目的はダンジョンの攻略ということで」

「「「おーっ!」」」


 みんな、元気のいい声を響かせるのだった。


 それにしても……

 シルファのこと、どうしよう?

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

ブクマやポイントをしていただけると、とても励みになります。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] なし崩しにダンジョンかw いかなる強敵がいてもハルがいれば大丈夫 ただし幼馴染勇者はかんべんなw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ