556話 隣にいてくれる人
パーティーは、一度、解散。
みんな、それぞれの道を歩いていく。
ただ、一緒に残る人もいる。
神様とフラン。
二人と一緒に旅をして、世界を『知って』ほしい。
色々なものを見て。
色々な経験をして。
俺がそうだったように、きっと、大きく成長できると思う。
その時のことを考えると、今から楽しみだ。
それと……
「ハル、準備はできた?」
荷物の整理をしていると、アリスに声をかけられた。
彼女も一緒だ。
みんな、一度解散!
……っていう流れになっていたから、てっきりアリスも、と考えていた。
でも、そんなことはなくて、これまでも……これからも一緒にいてくれるらしい。
素直に嬉しい。
頼りになるとか、寂しくないとか。
色々と思うところはあるけど……
やっぱり、隣にいてくれる人がいるっていうことは嬉しい。
「ありがとう、アリス」
「え、なに? 急にどうしたの?」
「いや、その……一緒にいてくれて、それと、いつも助けてくれて。ありがとう、本当に感謝しているよ」
「ちょっと……もう。や、やめてよ。いきなりそんなこと……」
アリスは顔を赤くして、それを扇ぐように手でひらひらした。
照れているみたいだ。
こんなアリスも貴重かもしれない。
「ねえ、アリス」
「なに?」
「今更なんだけどさ……この後、どうしようか?」
神様とフランに色々なことを知ってほしい。
そのための旅だけど、目的地が決まっていない。
「まずは、どこに行けばいいのかな、って」
「んー……どこでもいいんじゃない? というか、なにも考えなくていいかも」
「え?」
「ほら。特に目的はないわけじゃない? なら、気の向くまま風の向くまま、っていうのもいいかもしれないわよ。そういう旅も、たまには楽しいと思うの」
「なるほど」
言われてみると、そういう旅もいいかもしれない。
すごく楽しそうだ。
想像するだけでわくわくしてきた。
見知らぬ地。
なにが起きるかわからない。
驚きもハプニングもたくさんあるかもしれないけど……
でも、その分、楽しいことと笑顔があふれていると思う。
「楽しそうだね、それ」
「でしょう?」
「……なんか、アリスにはいつも助けられているね」
「どうしたの、突然」
「今回のことも、今までのことも。アリスがいなかったら、俺、行き倒れたりしていたかも」
「そんなことないわ」
アリスは優しく微笑む。
それは、まるで俺を抱きしめてくれているかのようだ。
「ハルは強いわ。魔力とか、そういうことじゃなくて……心が。あたしがいなくても、全部、なんとかしてきたと思う。あたしはただ、隣にいただけよ」
「そんなことないよ」
「ハル?」
「アリスが隣にいてくれたから、俺はがんばることができたんだ。一人になった時、最初にアリスが声をかけてくれて、助けてくれて……それからも、何度も何度も背中を押してくれた。支えてくれた」
今の俺があるのは、間違いなくアリスのおかげだ。
「そんなアリスがこれからも一緒にいてくれるのは、すごく嬉しいんだ」
「そ、そう……」
照れている?
「だから、これからも一緒にいてほしいな」
「え」
「わがまま言うと、ずっとずっと……ずっと隣にいてほしいよ」
「えええぇっ」
なぜか赤くなる。
え、なんで?
「そ、それって、もしかして……」
「?」
「……いえ、それはないわね。だって、ハルだもの。普通の天然発言で、深い意味なんてないわ。まったく……将来は、とんでもない泣かせになるかもしれないわね」
「えっと……どういうこと?」
「なんでもないわ。それよりも……」
アリスはこちらに手を差し出してきた。
にっこりと笑う。
「行きましょう」
「うん!」
さあ、新しい旅に行こう!
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
この回で一度、区切りとなります。
ここで終わるか、続けるか、ちょっと迷っているところでして……
時間を置いて、また再開するかもしれませんが…
ひとまず、ここで終わり。
またどこかで読んでいただけることを願いつつ、今はここで。




