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555話 幼馴染との別れ

「ハル」


 最後、レティシアに呼ばれた。


 彼女とも別れることになる。

 その理由は……

 正直なところ、知らない。


 なんで? と聞いたのだけど、教えてくれなかったのだ。


 ただ、最後の別れとか、そういうつもりはないらしい。

 またどこかで、というような感じ。


 とはいえ……

 寂しいな。


 ようやく仲直りをすることができて。

 一緒に笑い合うことができて。

 それと、その……告白もされて。


 今度こそ、ずっと一緒にいるものだと思っていたから、それだけに衝撃は大きい。


「じゃ、私もそろそろ行くわ」

「……本当に行っちゃうの?」

「ええ。こんな冗談、口にするわけないじゃない」

「そっか……うーん、そうなんだ……」

「ちょっと。捨てられた子犬みたいな顔、しないでよ」


 俺、そんな顔をしているのかな?

 鏡はないから、自分が今が、どんな顔をしているかわからない。


 でも、たぶん、当たっているんだろうな。


 ずっと前に、俺から別れた時とは違って……

 今は寂しくて、寂しくて、寂しくて。

 やっぱりやめてくれないかな、なんて思っているから。


「まったく……色々あってハルは成長したと思っていたのに、まだまだね」

「そんなことは……」

「まだまだよ……んっ」


 抱きしめられた。


「いい? 別に、これが今生の別れ、っていうわけじゃないの。みんなと同じ。また……そう遠くないうちに、ハルのところに帰ってくるつもりよ」

「なら、どうして、一度別れるの?」

「それは……けじめをつけるというか、自分を見つめ直したいというか……」

「?」

「……私は、ハルに酷いことをした」


 たぶん、最初、パーティーを組んでいた時のことを指しているのだろう。


「でも、あれは悪魔のせいで……」

「それでも、私がハルに酷いことをした、っていう事実は変わらない。消えない。私は、そんな自分が許せないわ。自分で自分をひっぱたきたい」

「……レティシア……」

「だから、二度ともう、あんなことが起きないように……その……まずは、一人でがんばってみたいのよ。ハルと一緒にいたら、ずっと甘えちゃいそうだから」

「甘えていいよ?」

「そういうところがダメなのよ、まったく」


 レティシアがそっと離れた。

 苦笑して、じっとこちらを見つめて……


「私が私を許せるようになりたいの。そうでないと、また、パーティーを組むことは許されないと思うの。私自身が」

「そういうことなら……うん、わかったよ」


 レティシアの固い決意を感じた。

 寂しいけど、止めることはできない。

 なら、せめて笑って送り出して、応援するだけだ。


 俺は今、困った顔じゃなくて、笑顔を作れているかな?


「帰ってきた時は、また、一緒に旅をしましょう。色々なところを冒険するの。とんでもない財宝を見つけたり、物語に出てくるような巨大な魔物を討伐したり。色々なことをしましょう?」

「うん、そうだね。楽しみにしているよ」

「ふふっ、私も」


 笑い合う。


 いつものレティシアだ。

 優しくて、勇ましくて、かっこいい幼馴染。


 それは、小さな頃しか見ることができず……

 大きくなってからは、すっかり変わってしまった記憶しかない。


 でも。


 その悪い記憶は塗り替えられていく。

 優しい笑顔に更新されていく。


「それと……私がハルのところに戻ってくる理由は、もう一つ、あるから」

「え?」

「……んっ」


 レティシアの顔が近づいて、目の前に来て……

 そして、唇に柔らかい感触が広がる。


「「「あーーーっ!?」」」

「え? あ、その……えぇえええ」

「ふふ。今度は、もっとすごいことをしましょう?」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 流石に腐っても幼馴染み、お手付きも早いな(ʘᗩʘ’) 次全員揃ったら結婚式待った無しだな(⌐■-■)
感想一覧
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