549話 最後の力・その4
「終わりにする」
そんな言葉と共に、デミウルゴスに今までにない魔力が集まっていく。
空気が震える。
肌を刺すような圧を感じる。
「うわ……これは、かなり、まずいかも……」
フランが顔を青くした。
「どういうこと?」
「聞いたことあるだけだから、全部は知らないんだけど……ママのとっておき。たぶん、それを使おうとしているんだと思う」
「……効果は?」
「わ、わからないよ……ただ、噂だけど……時間逆行」
「時間?」
「対象の時間を逆行させて、何百年も……そして、完全に消滅させる」
「それは、また……」
なんて凶悪な。
限定的なものだろうけど、時間にまで干渉できるなんて。
そんなものを食らったら治癒することはできないだろう。
フランが言ったように消滅してしまう。
文字通りの『必殺』だ。
「ど、どうしよう……?」
「大丈夫。なら、先に攻撃をすればいいんだ」
「そういうこと」
アリスが隣に並んだ。
「あたし達が、もう一回、道を開いてあげる」
「だからハル、あんたはとことん突き進みなさい」
「私達に任せてください!」
レティシアとアンジュも前に出た。
うん。
みんながいればなんでもできる。
強がりとかそういうのじゃなくて、そんなことを心の底から思うことができた。
「あたし達が」
「何度でも」
「ハルさんの背中を」
「押してあげる!」
そして、みんなで一緒に歩いて行こう。
「行くよ」
守るのではなくて。
避けるのでもなくて。
あえて前に出た。
デミウルゴスが放つ魔法は必殺。
直撃したら、そこで終わり。
逆に言い換えると、魔法を打たせなければいい。
打つ前に決着をつけてしまえばいい。
規格外の再生能力と、破格の防御能力。
それを突破して、ヤツが魔法を放つ前に叩く。
普通に考えて不可能だ。
無理というしかない。
「でも、無理を押し通してみせる!」
まずは、アリスとレティシアが前に出た。
同調しているかのような動きで、左右から迫る。
そして、同時に斬撃。
精霊と魔人の力を乗せた双撃は、ダメージを与えることこそ叶わないものの、その衝撃はしっかりと伝わり、デミウルゴスの体勢を崩す。
続けて、アンジュが動いた。
さきほどのヤツの攻撃を真似するかのように、無数の光球を生み出した。
それをデミウルゴスに突撃させて……
光が弾ける。
単純な目眩まし。
ただ、単純だからこそ効果的でもある。
光の爆発が連続するせいで、デミウルゴスの動きが止まる。
視界を奪われるというのは、なかなか厄介なものだ。
最後にフランが行動を起こす。
翼をめいっぱい広げて、デミウルゴスを包み込む。
幾重にも、幾重にも。
それは、まるで結界だ。
絶対に動きを止めるという、強いフランの意思を感じる。
「「ハル!」」
「ハルさん!」
「お兄ちゃん!」
みんなの想いを受けて、俺は最後の一手に賭けて出た。




