547話 最後の力・その2
「すぅ……ふぅううう」
深呼吸をした。
心が澄み渡る。
落ち着いていく。
それと同時に、さきほどまで展開していた魔王の力を解除した。
「うん」
これでいい。
通常の魔法は、デミウルゴスが開発したもの。
それでヤツを倒そうとしても、あなたの力であなたを倒してもいいですか? というようなものなので、効果が出るわけがない。
なので、通常の魔法は効かない。
だからといって魔王の力も論外だ。
よくよく考えてみると、魔王は一度、デミウルゴスと交戦している。
敗北したとはいえ、それなりのダメージを与えた。
デミウルゴスの脅威……天敵と言ってもいいだろう。
そんな存在を放置するだろうか?
まったくの無関心でいられるだろうか?
そんなわけがない。
たぶん、デミウルゴスは、魔王について徹底的に研究しただろう。
次があるとしたら、完膚なきまでに叩きのめすために。
万が一にも敗北がないように。
魔王の力について、どこまでもどこまでもどこまでも……
研究し尽くした。
だから、魔王の力が通じることはない。
「なんてことはない。やるなら、神様が考えた魔法じゃなくて魔王の力でもなくて……俺の力でいかないとダメなんだ」
神様が考えた魔法を元にするのではなくて。
魔王の力を借りるわけでもなくて。
一から全部、俺の力だけで完結する、俺だけの魔法。
それを作る。
「……」
みんなが時間を稼いでくれている。
必死に戦っている。
でも、それはいつまで続くかわからない。
次の瞬間、崩れてしまってもおかしくない。
急がないと。
焦りを覚えてしまうものの……
「……落ち着け」
本当の意味でゼロから魔法を作り上げるなんて、無茶苦茶なことだ。
雑念が混じっていたら時間がかかるどころか、完成させることができない。
大丈夫。
みんななら、きっとうまくやってくれる。
そう信じて、俺は俺のやるべきことをやる。
「……」
「…………」
「………………」
集中。
深く、深く、深く……
そして静かに集中する。
それでいて、同時に思考を加速させていく。
今までとはまったく違う方法で魔力を組み立てていく。
一から十の定められた工程を辿るのではなくて、自分で道を作る。
得られる効果はただ一つ。
願いもただ一つ。
ありったけの魔力を込めて。
ありったけの願いを込めて。
そして、希望と祈りを織り交ぜた魔法を作り上げた。
「うん」
これでいい。
これは、俺だけの魔法だ。
この力で。
この想いで。
「今度こそ、決着をつける!」




