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541話 最後の戦い・その4

「……魔王の力を全部解放する」


 俺の発言に、みんなはぎょっとしたような顔に。


 それも仕方ないだろう。

 魔王を継いだものの、その力を全て解放したことはない。


 アムズと戦った時、解放されたことがあるけど……

 それでも一部だ。

 全てじゃない。


 力に溺れないか?

 心が飲み込まれてしまわないか?


 不安はある。

 うまくいくという確信はない。


 それでも、今は必要なのだ。

 力が。


「オッケー。なら、ハルが切り札って考えていいのね?」

「それは、すぐに解放できるもの? あたし達、時間稼ぎをした方がいい?」


 驚きなのだけど、レティシアとアリスは反対しなかった。

 むしろ、もっとやれというような感じで援護を申し出てくれる。


「お兄ちゃん、解放のコツはわかる? 瞑想するような感じで自分の心の奥底に触れて、鍵をくいっと捻る感じかな」

「なにかあった時は、私がなんとかします。ぱーん、ってハルさんを叩いてでも」


 フランとアンジュも反対しない。

 やはり、アリスとレティシアのように賛成してくれる。


「……うん、がんばるよ」


 いいの? とか。

 どうして? とか。


 今更、そんな問いかけは必要ない。


 みんなが俺のことを信じてくれている。

 なら、俺はその期待に応えるだけだ。


「滅びよ」


 先に動いたのはデミウルゴスだ。

 炎弾と氷弾を同時に放ってくる。


 広範囲に攻撃をばらまいて。

 避けるスペースも残されていない。


 一撃一撃が上級魔法に匹敵するだろう。

 数発なら防ぐことができるだろうけど、それ以上となると厳しい。


 わりとピンチではあるのだけど……


「それくらいで!」


 アリスが前に出て、剣を振る。

 精霊の力を宿した剣は、炎弾と氷弾を最初からなかったことのように消してしまう。


 デミウルゴスは俺達には理解できない高度な魔法を使っているけど、しかし、それは魔法というカテゴリー内だ。

 故に、魔力がなくなれば維持することはできない。

 アリスはそこに着目したらしく、精霊の力を借りることで、魔力を奪うことにしたらしい。


 その試みは成功。

 見事に攻撃を防ぐことができた。


「お姉ちゃん、合わせて!」

「あんたが合わせなさい!」


 続けて、フランとレティシアが前に出た。


 フランは翼を広げて、武器を手に収めて。

 レティシアは黒いオーラをまとい、魔人と化す。


「無駄なあがきを」


 デミウルゴスは二人に狙いを定めた。

 四本の腕を交差させるように横へ振る。

 その軌跡に従い、ゆっくりとした衝撃波が発生して、地面を削りつつ二人に迫る。


 おそらく、触れただけで即死だろう。

 かといって、衝撃波を突破することも避けることも難しい。

 攻防一体の攻撃だ。


 しかし、フランとレティシアは焦らない。

 むしろ不敵な笑みを見せていた。


「悪いけど、ママのことはよく知っているから……」

「今更、そんなものでどうにかなると思わないことね!」


 フランが武器を腰だめに構えて、力を溜めて、溜めて、溜めて……

 一気に振り抜いた。


 ギィンッ!!!


 空間が震えるような音。

 フランが生み出した衝撃波がデミウルゴスのものと激突して、その勢いを削ぐ。


「おいしくいただかせてもらうわ!」


 そこにレティシアが突撃した。

 剣に黒いオーラをまとわせて、それを叩きつける。


 普通なら折れて、飲み込まれてしまうはずなのに……

 しかし、逆の現象が起きていた。

 レティシアの黒いオーラが衝撃波を喰らい、自分のものにしている。


 あれが彼女の『魔人』の力だろう。

 他人の力を喰らい、己のものとする。

 以前に聞いたけど、ミリエラも食べたとか。


「「ハル!」」

「お兄ちゃん!」


 道は切り開いた、というかのように三人が叫んだ。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 展開自体は王道、ここで決めねば男が廃る(ʘᗩʘ’) な場面だけどスンナリ行くか?(٥↼_↼)
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