表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

528/547

537話 言葉はいらない

 光がフランを貫いた。


 一瞬。

 本当に一瞬の出来事だ。

 なにも反応できない。


「……どう、して……」


 フランが倒れて、


「フラン!!!」


 そこで、ようやく動くことができた。

 慌てて駆け寄り、抱き起こす。


 胸元が血で濡れている。

 服がどんどん赤く染まり……


「ヒール!」


 急いで治癒魔法を唱えた。

 流れる血の勢いが弱くなるものの、完全に止めることができない。


「アンジュ! 手伝って!」

「は、はい!」


 我に返った様子で、アンジュがこちらに駆けてきた。


「セリクリッドブレス!」


 アンジュも治癒魔法を使う。

 俺とアンジュの二人がけ。

 これなら……


「……うぅ……」


 どうにかこうにか出血は止まった。

 でも、まだ危ない状態だ。

 さらに魔法をかけて……


 どうにかこうにか落ち着いたところで、アンジュに任せて、俺は神様と対峙する。


「……どうして、こんなことを?」

「こんなこと、というのは?」

「フランを傷つけたことだよ! フランは、さっきも傷ついていて、それなのに……!」

「彼女は不確定要素となりました」

「不確定要素……?」

「私の命令を聞かず、独自の答えを導いてしまった。そのため、このように予想外の行動を取っています」


 与えられた任務をこなすだけをよしとせず。

 そこからさらに一歩を踏み込み、自分の考えることを実行する。


 それは、普通に考えて『成長』だ。

 しかし、神様は認めるつもりはないらしい。


「身勝手に行動することはイレギュラーでしかありません。全てが正常に機能しなければ、世界の管理は正しく行うことはできません」

「……だから、フランを攻撃した?」

「不確定要素は排除されなければなりません。全ては、調和を保つためです」

「……」


 これまでに一番。

 今までで最大級に、神様の……こいつの歪さを実感した。


 フランは神様の子供のようなものだ。

 親が子を傷つけるなんて、あっていいことじゃない。


 世界という巨大なものを管理するためには、とにかく合理的でなければいけないのかもしれない。

 一つのミスも許されないのかもしれない。


 でも……


 そのために、親が子を不要と断じるなんて認めたくない。

 そんなものが必要だっていうのなら、世界の管理なんていらない。


 これはただの感情論だ。

 でも、感情を宿すのが人間だ。

 それを切り捨ててしまえば、後にはなにも残らない。

 空っぽで、冷たい世界だけ。


「もう一度話し合いを、って思っていたけど、それは必要ないみたいだね」

「私の結論は、先に伝えた通りですが?」

「うん、そうだね。そうだった……俺が甘かった」


 アリスとパーティーを組んだ。

 アンジュとナインが笑顔をくれた。

 サナと仲間になった。

 シルファとわかり合うことができた。

 クラウディアと仲良くなれた。

 レティシアとやり直すことができた。


 フランと友達になれた。


 だから、もしかしたら神様も……って考えていたんだけど。


 彼女はダメだ。

 どうしても相容れない存在というのは、確かにいるらしい。


「なら、もう言葉はいらない。あなたを止めてみせる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] さてさて此処で完全決着までしとかんと最悪は世界が敵になるパターンもあるぞ(ʘᗩʘ’)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ