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527話 四面楚歌

「うわ……」


 魔法は直撃したはずだ。

 それなのに、大してダメージを与えられていないなんて……


「お兄ちゃん、もっと威力の高い魔法は?」

「できる、けど……」


 こんなところで使うと、自分達も巻き込んでしまう。


 アムズにしたように、魔王の力と知識を引き出すか?

 でも、あれはいざという時の切り札にしたい。

 一度使うと、かなり消耗してしまう。


 とはいえ、今がその切り札を切る時なのかもしれないけど。


「って、うわ……まずいよ」


 慌てるフランの視線の先を見ると、壊れた通路から一般的な天使が現れた。

 一体、二体、三体……どんどん増えていく。


 後ろからも天使が現れた。

 数えるのが馬鹿らしくなるほどだ。


 フラメウとカマエルだけでも手一杯なのに……

 詰んだ?

 いや、諦めるわけにはいかない。


「……お姉ちゃん、本当にそれでいいの?」


 フランがフラメウに声をかけた。

 彼女もまた、諦めていないみたいだ。


「それで、とは?」

「お兄ちゃんを倒しちゃっていいのか、っていうこと」

「捕縛。それが叶わないのなら処分。それが、母が望むことです」

「お姉ちゃんは、それを望んでいる?」

「私の意思は関係ありません。そのようなものは必要ありません」

「本当に?」


 フランはすがるような目をフラメウに向ける。


「お兄ちゃんと一緒にいて、なにも感じなかった?」

「なにを言っているのですか?」

「前に、怪我を治してもらったでしょ。その時、なにも感じなかった?」

「……」


 フラメウの言葉が止まる。


「うまく言えないけど……お兄ちゃんは、そういう人間なんだよ。魔王だけど、でも、誰よりも人間くさくて、お人好しで……だから私達は、ちゃんと話を聞かないとダメだと思う」

「……」

「ねえ、お姉ちゃん。ママに、もう一度お願いしよう?」

「……」


 フランの返事はない。

 でも、攻撃は止まった。


 フランの言葉が届いたのだろうか……?


「フラン……私が間違っていたようです」

「う、うん!」

「あなたも処分しなければならないようですね」

「え?」


 フランが呆けて……

 フラメウが動いて……


「かはっ!?」


 フラメウが投擲した剣がフランの脇腹を貫いた。

 フランは血を吐いて、その場に膝をつく。


「フラン!?」

「お、お姉ちゃん……どう、して……」

「あなたは完全に壊れてしまったようですね。もはや再調整も不可能」

「ならば、ここで処分するしかない」


 カマエルがそう補足した。


 この二人は……いや。

 天使という存在の歪さに吐き気さえ覚える。


 そして、そんな天使を使役する神様に怒りを覚える。


 そうか、こういうことか。

 魔王は、この歪さを伝えたかったのか。


 自分の意思を持つと、それは失敗作という烙印を押されてしまう。

 血は繋がっていないけれど、姉妹のような関係。

 それでも、簡単に攻撃をすることができる。


 神様の思考が天使に伝わり、染まり……歪なものに作り上げていた。


「こんなこと……認められるか!」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 所詮作られ者の天使などこんな物か(ʘᗩʘ’) 使命が全て、個は不要、規制品天使はこれだから(-_-メ) 世界は正すが命は知らんか(↼_↼) 空っぽの世界だな(⌐■-■)
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