525話 自分を得るための戦い
「……そうですか」
フランの言葉を聞いて、フラメウは納得……
するわけがない。
どこからともなく取り出した刃を両手に持つ。
さらに背中に翼を広げた。
カマエルも翼を広げる。
そして、鋭く長い槍を顕現した。
「どうやら、あなたは完全に壊れてしまったみたいですね。ならば、これ以上、あなたの意思を確認する必要はありません」
「不良品は廃棄する。それだけだ」
やっぱり、こうなるか。
フランと分かり合うことができた。
だから、フラメウとカマエルとも……なんていうのは都合がよすぎたかもしれない。
「お兄ちゃんは逃げて」
「フラン?」
俺をかばうようにフランが前に出る。
その背中に迷いは感じられない。
「仲間を助けてあげて」
「でも……」
「大丈夫。私はなんとかできるから」
心配をかけまいとフランが笑う。
その笑顔を見て覚悟を決めた。
フランの隣に並ぶ。
「お兄ちゃん?」
「置いていけないよ」
「でも、お兄ちゃんは……」
「みんなを助けに行くべきなのかもしれない。でも、今は……フランも仲間だから」
「……っ……」
彼女の決意に水を指したくない。
でも、どうしても置いていくことはできない。
「一緒に戦おう」
「……うん」
そして……戦闘が開始された。
――――――――――
「排除する」
最初に動いたのはカマエルだ。
同じ天使と戦うというのに、その動きに迷いはない。
力強い踏み込み。
一気に距離を詰めて、その速度を乗せて槍を放つ。
狙いは……フランだ。
「甘いよ!」
フランは翼を広げた。
その翼はフラメルやカマエルと違い、光で構成されている。
キラキラと輝いていて、星が集まっているかのようで、ついつい状況を忘れて見惚れてしまいそうになる。
フランは光の翼を巧みに操り、それで槍を弾いてみせた。
さらに、その場でくるっと回転。
羽を矢のように撃ち出す。
避けられてしまうものの、羽は床に深く突き刺さる。
「フランはその翼で戦うの?」
「うん。かっこいいでしょう?」
「どちらかというと、綺麗かな」
「えへへ」
まだ軽口を叩く余裕は互いにあるみたいだ。
この調子でいこう。
「でも、気をつけて。お姉ちゃんは別格だから」
「フラメウ……か」
第八世代型。
殲滅、なんて物騒な名前がつけられている。
彼女の実力は……?
「え?」
ふっと、突然、フラメウの姿が消えた。
ゾクリと悪寒が背中を走る。
ほぼほぼ勘だけで体を捻り……
「あぐっ」
しかし間に合わず、いつの間にか背後に回っていたフラメウに右肩を貫かれてしまう。




