524話 迫る危機
「このまま、まっすぐ!」
フランと一緒に通路を駆ける。
ほどほどに広く、高い。
壁も天井も床も白。
全体が淡い光を放っていて照明いらずだ。
「これ、どういう仕掛けなんだろう……?」
「そういうのは後! 今は逃げないと」
「そ、そうだね」
フランの指示通りに通路を進む。
今、向かっているところは牢だ。
そこにみんなが囚えられているらしい。
俺は魔王ということで特別な棟にいたらしく、場所は別だ。
「みんな、無事かな?」
「大丈夫だと思うよ。ママにとって、現状、最優先はお兄ちゃんだからね。お兄ちゃんの処分よりも先に他の人間を処分、ってことは考えづらいよ」
「うん。そうであることを祈るよ」
断言することはできない。
だから、この目でみんなの無事を確かめないと。
「そこの曲がり角の先に階段! 三階分降りて、そこから右。で、最後にまっすぐいったところに牢があるよ」
「了解!」
言われるまま駆けて……
「っ!?」
曲がり角を抜けた先に、フラメウとカマエルの姿があった。
罠!?
いや……
フランも苦い顔をしている。
そもそも、こんな遠回りな方法をする意味がわからない。
ハメられたわけじゃなさそうだ。
「フラン、あなたはなにをしているのですか?」
「……お姉ちゃん……」
「魔王は母の元、厳重に管理されることが決定しています。それなのに、脱走を手伝うなんて」
「第七世代型でありながら壊れたか?」
フランとカマエルの視線は厳しい。
答え一つ間違えたら、即座に開戦しそうだ。
「……私は、私が正しいと思うことをやっているだけだよ」
「天使にそのような意思、判断は必要ありません」
怯みつつ、しかし、はっきりとフランは己の選択を告げるのだけど……
フラメウはバッサリと切り捨てた。
そんなものは必要ない。
考える必要はない。
ただ従うだけでいい。
忠実な手足であることが最良であり最善。
「フラン、魔王を牢に戻しなさい。そして、メンテナンスを受けなさい。あなたは今、異常が生じています」
「それは……そうかもしれないけど」
「自覚はしているのですね。なら、次にとるべき行動はわかっていますね?」
「……わからないよ」
フランは泣きそうな声だった。
姉と仲間に。
それと、母である神様に反抗することをとても辛く思っているのだろう。
今すぐに止めたいと思っているはず。
間違っているのは自分と考えているはず。
でも。
フランは前言撤回することはない。
俺を捕まえようとせず、むしろ背中にかばう。
「わからないけど、わからないからこそ間違えたくないよ。私は、こうしたいって思ったから……変えたくない。戻りたくない」
「……フラン……」
「この胸の温かいものを大事にしたいの」
彼女は大きく変わった。
大きく変えることができた。
それは正しいのか?
それとも間違っているのか?
その答えをすぐに出すことはできないけど……
でも、後悔してほしくない。
その気持ちは俺も同じだ。
だから、ここで捕まるわけにはいかない。




