表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

514/547

523話 その言葉は確かに届いていた

「……フランは俺の見張り役、っていうところ?」

「うん、正解」


 あっさりと肯定されてしまう。


 その答えはこちらを警戒させるものでしかないのだけど……

 彼女にとっては、そんなことはどうでもいいのかもしれない。

 俺のことを考える理由なんてないのかもしれない。


 いつでも動けるように身構える。


「お兄ちゃん、脱走するつもり?」

「もちろん」


 すぐに殺されなかったということは、神様は、現状は殺意はないのかもしれない。

 時間を置くことで考えを理解してほしい、とか思っているのかもしれない。


 でも、俺の答えは変わらない。

 こんなところで飼い殺しにされるつもりはない。


「……私からママに頼んでみようか? お兄ちゃん達のことを考え直してほしい、って」

「え」

「ここでずっと保護されるか、あるいは殺されちゃうか……どちらにしても、お兄ちゃん達にはいい結果にならないと思うから。だから……うん、私がどうにかしてみようかな、って」


 どうにか、と言われても……

 そんなこと可能なのだろうか?


 フランは神様に作られた天使だ。

 親と子の関係に近いけど、そこにはっきりとした主従関係が作られてしまっている。

 神様の命令に従うことが当然で、意見を口にするなんて難しいような……?


「私、これでも天使の中では偉い方だからね。今、最新型は第八世代。私は第七世代だから、上から二つ目」

「そんなに若いのに?」

「若いとか関係ないよ。新しい技術の方が優れているでしょ? だから、新しい方が偉いの」


 その辺りの感覚は、わかるようでよくわからない。


「私が言えば、もしかしたら……」

「でも、それって可能なの? 天使って、神様の手足となって動く存在なんだよね? それってつまり、逆らうことは無理。絶対服従じゃあ?」

「うん、そうだね」

「なら……」

「そうなんだけど……なんだろう? 不思議だよね。なんかこう、今のままじゃいけないような気がしたんだ」


 フランが苦笑した。


 それから、自分の胸元に手をやる。


「なんか……ここが苦しいんだ。このままお兄ちゃんが死んじゃうってなると、よくわからないけど、この辺りが締め付けられるみたいで……嫌なの」

「……フラン……」

「ほら。ここに来る前に、人間の街を一緒に見て回ったよね? あれ、楽しくて、また行きたいなって思っていて……だから、なんかこう、このままは嫌なんだ」


 もしかして、俺の言葉がフランに届いていたのだろうか?

 彼女の心になにかしらの変化を与えていたのだろうか?


 天使なのに。

 神様に絶対服従なのに。


 それでも、変えることができたのか?


「自分でもおかしいってわかっているんだけど、でも、こうしたいって思っていて……はぁ、私、壊れちゃったのかな? メンテ、受けた方がいいかな?」

「壊れてなんかいないよ」

「ほんと?」

「フランは自分で物を考えるようになったんだよ。ただ、それだけのことだと思う」

「それって、アウトだよ。天使としてダメダメだよ」

「でも、フランっていう個としては、アリじゃないかな?」

「……」

「天使も成長するんだ。その証拠が、フランそのものだよ」


 俺は、神様に対して、人間は成長するものでいつかあなたの手から巣立つ時が来るという話をしたけど……

 フランが庇護下から離れようとしていた。


 人間じゃなくて天使だけど……

 でも、そういうことなんだと思う。

 成長して、親の庇護下から離れていく。


 それが当たり前のことで……

 奇しくもフランがそれを証明してみせた。


「その考えは壊れているとかじゃなくて、成長の証だよ。フランは、神様に守られるだけじゃなくて命令を受けるだけでもなくて、旅立とうとしているんじゃないかな?」

「私が……」

「俺は、それはとてもいいことだと思うよ。フランがどう思うかわからないけど……」

「……」


 フランは自分のことを考えている様子だった。

 変化を良しとするか悪いものとするか。


 じっと考えて……


「よくわからないや」


 そう言って笑う。


「いきなりそんな難しい話をされても、っていう感じかな。うーん、って考えても、知恵熱が出ちゃいそう」

「そっか」

「でも……やっぱり、お兄ちゃんには死んでほしくないかな。だから、私は……お兄ちゃんのことを助けるよ。ここから出るのなら、その手助けをするよ」


 それは、フランが考えて考えた末に出した、彼女自身の答えだ。


「うん、ありがとう」


 俺は小さく笑い、フランに手を差し出した。

 彼女はどことなく照れくさそうにしつつ、俺と握手を交わすのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 天使として見れば問題行動、人として見れば変化とも言える行動だけと(ʘᗩʘ’) 死んで欲しくない男の為に動くね〜(´-﹏-`;) また増えるかもな(⌐■-■)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ