表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/547

51話 思っていた以上に……

「これは、さすがに……」

「なんてこと……」


 北出口に移動すると、魔物群れが遠くに見えた。

 すでに視認できるほどに近づいている。


 その数は……百ではきかないかもしれない。

 地平線を全て埋め尽くしてしまうほど、土煙が立ち上がっていて……

 ひょっとしたら、千を超えているのではないか?


 その光景を見て、アリスとアンジュは難しい顔に。

 ナインは言葉を発しないものの、主と同じような顔を。

 サナはドラゴン故の余裕なのか、いつも通りのほほんとしていた。


 そして、シルファは……


「よいしょ」


 足や手を伸ばして準備運動を始める。

 サナ以上にマイペースで、しかも、まったく恐怖を抱いていないようだ。


「シルファは怖くないのか?

「なにが?」

「今から、あれだけの数の魔物と戦うんだけど……」

「別に。戦いだから、死ぬ時は死ぬ。生きる時は生きる。それだけだよ」


 あまりにも淡々とした答えだ。

 シルファが殺し屋だから……なのだろうか?


「どうしたの?」

「……いや、なんでもないよ」


 シルファのことについて、考えるのは後にしよう。

 今は、この局面を乗り切ることを優先しないと。


「ハル、どう戦う?」

「そうだなあ……なるべく敵を引きつけてから、そこに俺が一撃を叩き込む。どれくらい削れるかわからないけど、たぶん、敵は驚くと思うんだ」

「「絶対驚く」」


 アリスとアンジュが声を合わせて言う。


 本当に驚くのかな?

 あまり自信はないんだけど……二人が言うのなら、がんばろう。


「動揺したところで突撃。近接戦に持ち込んで、各個撃破」

「近接戦なんすか?」

「敵の方が数は圧倒的に上だけど、その分、乱戦になれば同士討ちも起きやすいと思う。だから、途中からは近接戦の方が有利になると思うんだよね」

「なるほど! さすが、師匠っす」


 話しているうちに魔物の群れがどんどん近づいてきた。

 そろそろ魔法の射程距離になる。


「みんな、そろそろ始めよう」

「え? でも、まだあんなに離れているわよ?」

「え? もう射程範囲内だろう?」

「え? 普通は届かないんだけど……ハルは届くの?」

「届くと思うけど……」

「「「……」」」


 アリス、アンジュ、ナインが揃って微妙な顔をした。

 こいつはもう……なんて言葉が聞こえてきそうだ。


「……まあいいわ、ハルだもの」

「ハルさんですからね」

「ハルさまなら、まあ、ありえることかと」

「その反応が気になるけど……まあいいや。とにかく、始めよう」


 色々とツッコミを入れたいものの、そんな時間はない。

 俺は、迫りくる魔物の群れに手の平を向けて、魔力を収束させていく。


 まずは、第一撃。


「フレアブラストッ!」


 出し惜しみなしの、全力全開の一撃だ。

 赤い線が彼方に飛び、魔物の群れの中央に収束されて……

 そして、爆裂。

 魔物の群れを飲み込むように、巨大な炎の壁が立ち上がる。

 一瞬遅れて、熱波と衝撃波がこちらにも飛んできた。


「あ、あいかわらず、すさまじい威力ね……これで中級魔法っていうんだから、もう、なにかの冗談としか思えないわ」

「私達もハルさんに負けないように、がんばりましょう!」


 みんなが武器を構えて、魔物の群れに突撃を……


「あ、まって」

「どうしたの?」

「まだ早いから」

「え?」

「フレアブラストッ!」


 第二撃を放つ。


「「「連射っ!?」」」


 なぜかアリス達が驚く中、俺は第三撃を放つ。


「フレアブラストッ!」

「「「三連射っ!?」」」


 一発目は、魔物の群れの中央に。

 二発目は左側、三発目は右側に寄せて、それぞれ放つ。


「えっと……ハル? なにをしているのかしら?」

「なにって……事前の打ち合わせ通り、魔法を撃っているだけだけど?」

「連射できるなんて……しかも、三連射なんて、聞いていないんだけど……」

「あれ? 知らなかったっけ?」

「「「知らないから!!!」」」


 アリス、アンジュ、ナインが口を揃えて言う。

 おかしい。

 確かに、この前使ったはずなんだけど……って、そうか。

 アークデーモンと戦った時、アリス達は近くにいなかったっけ。


 でも……


「もしかして……魔法の連射は、おかしいことなのか?」

「おかしいわよ……剣士であるあたしでも、異常だってことくらい知っているわ」

「初級であれ上級であれ、魔法は連射することはできません。多少のクールタイムが必要になります。そんな弱点があるから、魔法使いは頂点を極めることができず、物理職と同じレベルにいるんですけど……」

「連射ができるとなると、ハルさまは、その弱点を完全に克服していますね。賢者だからこその能力なのでしょうか?」

「ううん、ハルだから、って言った方がすごくわかりやすいと思うわ……」

「「なるほど」」


 えっと……バカにされているのか感心されているのか、非常に判断に困る。


「とりあえず、残りを倒した方がいいんじゃないっすか?」


 サナがもっともなことを言う。


 視線を彼方に向けると、未だ複数の魔物が見えた。

 かなり数は減っているが、全滅というわけじゃない。


 それなりに距離も近づいている。

 みんなを巻き込んでしまう可能性があるため、遠距離魔法はもう使えない。


「あとは近接戦でがんばろう」

「はいっ、がんばるっす! たくさん活躍して、師匠に褒めてもらうっす! なでなでしてもらうっす! うへっ……うへへへぇ」

「ちょっと、サナ……? その顔、危ない薬を飲んでいるみたいで、怖いんだけど……」


 アリスにドン引きされるのも構わず、サナが突撃した。

 二番手は、


「シルファもいくね」


 サナに続いて、シルファが駆ける。

 果たして、その実力は……?


「って、武器を持っていない!?」

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

ブクマやポイントをしていただけると、とても励みになります。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] アッサリと限界点を超えて、泰然自若(と周りには見える)…何だかなぁ(苦笑) [気になる点] 無手という事は…かい○んのい○げきが連発出来るって事ですかな?(微笑)
[良い点] ハルが異常なのはもはや通常w [気になる点] シルファは驚いていない? [一言] 無手だと! 魔物相手にどうたちまわるのか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ