515話 カマエル戦・その2
カマエルが動いた。
地面を蹴り、矢が射出されたかのように高速で動く。
狙いは俺。
拳を握りしめて、それを武器として叩きつけようとする。
ただの肉弾戦と侮ってはいけない。
相手は人間よりも遥かに高い身体能力を持つ天使だ。
拳一つが凶器になる。
「シールド!」
魔法の盾で攻撃を防いで……
ガシャン!
「嘘だぁ!?」
足止めはできたものの、魔法の盾はあっさりと壊されてしまう。
フラン達の前の世代と聞いているから、それほど能力は高くないと思っていたんだけど……
「お兄ちゃん、油断は禁物」
隣に並ぶフランがカマエルの方に視線を固定しつつ、言葉だけを投げかけてくる。
「量産品の第三世代型と、それ移行の世代は大きな差があるから。人間の基準で言うと、第三世代型がレベル30くらい。それ移行は60以上はあると思ってね」
「倍以上、っていうわけか……」
確かに、ちょっと油断していたかもしれない。
「本気の三歩手前くらいまでいっていいよ」
「難しい注文だなあ……」
魔王の力にだいぶ馴染んできたものの、まだ完全に使いこなしているわけじゃない。
細かい調整は苦手だ。
「でも」
やらないわけにはいかないか!
「ファイア!」
「ちょっ、ハル!? ハルが街中でそんな魔法を使ったら……」
「大丈夫!」
生み出した炎に魔力を乗せて、干渉。
周囲に被害を出さないようにコントロールしつつ、カマエルに向けて放つ。
大きな津波を一点に凝縮したようなもの。
暴れ回る炎の一撃を受けて、カマエルは大きく吹き飛んだ。
ガッ!
背中から建物の壁にぶつかり、鈍い音が響いた
ピシピシと建物の壁に放射線状のヒビが入る。
あ、あれは俺のせいになるのかな……?
なるよね、はい。
「お兄ちゃん、弁償☆」
「えぇ……」
「ふふ、冗談だよ」
冗談と本気の区別がつかない。
「カマエルも本気みたいだから……うん。もう周囲の被害は、ある程度までなら許容しちゃうから。遠慮なくやっちゃって」
「いいの?」
「いいよ!」
よし。
フランの許可を得られたから、思い切りやってもいいだろう。
街に多少の被害が出ることはよし。
その上で、カマエルが行動不能に陥るくらいのダメージを与える。
そのために必要な魔法は……
「フレアブラスト!」
中級火魔法を放つ。
「うわっ……艦首砲撃並の、ううん、それ以上の威力じゃない、これ……?」
隣のフランがなぜか唖然としていたけど、気にしない。
「ぐっ!?」
ちょうど、カマエルは先程のファイアで体勢を崩していた。
避けることはできず、真正面から受け止める形に。
もちろん、防御のための結界を展開していた。
魔人と同じもの。
ただ、一定以下の攻撃を無力化するだけで無敵というわけじゃない。
それ以上の大火力を叩き込めば突き破ることができる!
「バカな、このような力は……ぐうううっ!?」
カマエルの結界が消失した。
同時に豪炎がカマエルを飲み込み、そして爆発。
爆炎と煙が空の果てに届きそうなほど立ち上がり、周囲に衝撃波が撒き散らされる。
「ひぁあああああ!?」
あぁ、サナが吹き飛ばされている!?
……ごめん。
あとで美味しいものを食べさせてあげるから。
ちょっと薄情かと思いつつ、しかし、カマエルから視線を外すことはできない。
「ぐ……」
爆炎と煙が晴れて、カマエルの姿が見えてきた。
あちらこちらボロボロになっている。
よかった。
うまく調整できたらしく、倒す数歩手前で止まったみたいだ。
「このような力……やはり脅威でしかない。排除しなければ」
逆効果だったらしく、カマエルはさらにやる気に。
そんな時、フランが前に出た。
新作始めてみました。
『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』
こちらも読んでいただけると嬉しいです。




