512話 てへぺろ
翌日。
「ごめんね、けっこう厄介な事態になっちゃったかも。てへぺろ♪」
フランが戻ってきて、ごまかすように笑う。
それを見て、ちょっとイラッとした様子を見せつつ、レティシアが問いかける。
「なによ、それ。どういうこと?」
「失敗した? シルファ、代わりにやる?」
「やらないでね」
シルファの思考が物騒になっているような……?
誰の影響だ?
なんだか気分は親のような感じ。
「俺達が神様に会うのを……というか、俺達がここにいるのも嫌な天使がいて、フラン達は、その人達を神様に従わない……欠陥品として処分することにした」
『欠陥品』と言うのはちょっと抵抗があった。
ただ、話をスムーズに進めるために、あえてそう口にする。
こういう時、互いの認識を揃えないとだ。
「フランはともかく、フラメウはものすごく強いから問題なく進むはず……って聞いていたけど、実際はうまくいかなかった?」
「さらりと私がディスられている……まー、お姉ちゃんの方が強いんだけどねー。でも、私だってやるんだよ? ぷんすか」
「えっと……ごめん?」
「あはは、そこで謝るところ、お兄ちゃんはホント素直だね」
フランは楽しそうに笑う。
ほんと……
その笑顔は人間となにも変わらない。
「私の言い方が悪かったかな。処分といっても、壊すわけじゃないんだ」
「どういうこと?」
「ママがお説教して、改心させる。あるいは、捕まえて再調整する。それがほとんど」
「説教はわかるけど……再調整?」
「そ、再調整。頭の中をちょこちょこっと」
嫌な図が思い浮かんだ。
「普通の人間や他の生き物にはしないよ? 私達天使だけ。で、天使にとってはわりとよくあること。人間を模しているとはいえ、私達は道具だからねー」
「それで……いいの?」
「うん?」
「フランはそれでいいの? 道具扱いされて、自分でも道具って言うなんて……」
そんなの寂しいじゃないか。
悲しくて、虚しすぎる。
「別に? それが天使だからね。むしろ、そこに疑問を持つのは失敗作だよ」
「……そっか」
いつか、この認識を変えてみたいと……ふと、そう思った。
「えっと……結局、どうなったんでしょうか?」
「話が逸れて、肝心なことを説明していただいていないのですが」
アンジュとナインの言う通りだ。
「あはは、ごめんねー? 簡単にまとめると、半分くらいは捕まえたんだけど、残り半分くらいは逃げられちゃった♪」
「笑いながら言うことじゃないっすね」
「敵? 襲ってくる?」
「たぶんね」
「ここの宿は安全っていう話だけど……その辺りはどうなのかしら?」
「アリス、それ、フラグよ。そういう話をしたら、大抵、ここは安全じゃなくなるわ」
「正解♪」
「なんで嬉しそうなのよ、あんた……」
レティシアがやれやれと吐息をこぼす。
「相手は、第四世代型をトップとした天使のグループ。第三世代型までならどうとでもなるんだけど、第四世代型になると、完全に防ぐことはできないかな」
「自分達のことを知ってほしい、とか言っておいて仲間割れを見せられるとか、笑えるわね」
「あははー、面目ない」
「レティシア、その辺に……」
「ふんっ」
なんでレティシアは機嫌が悪いんだろう?
……危険な目に遭っているから?
それで、もしかして、僕の心配をしてくれているから……とか?
まさかね。
「とりあえず現状は理解したよ。それで、これから俺達はどうすればいいの?」
「安全な場所に案内するから、お出かけの準備をして?」
「安全な場所? そこなら、えっと……第四世代型でも問題はない?」
「というか、どんな天使でもなにもすることができないよ」
フランはにっこりと笑い、言う。
「ママのところに連れて行くね」
新作始めてみました。
『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』
こちらも読んでいただけると嬉しいです。




