511話 同じようで違う
あれから解散となり、各自、自由に過ごすことに。
ただ、宿の外に出てはいけない。
要人が宿泊するための施設らしく、強固な結界が展開されているらしい。
ここにいれば安心。
よほどのことがない限りは大丈夫、とフランが言っていた。
「フラン……か」
仲間を簡単に『処分する』と言った時の顔が忘れられない。
わかりあえるような気がした。
実は、俺達と変わらないのでは? と思うこともあった。
「でも……やっぱり、違うのかもしれない」
あんな残酷なことをさらりと言ってしまうなんて……
いや。
でも、俺も人のことは言えないか。
魔王の魂に引っ張られて、たまに過激な言動をしているような……
「はぁ……よくわからなくなってきた」
ベッドに転がる。
天使のことを知るために天上都市にやってきた。
その結果は正しく、天使と……そして、神様について知ることができた。
まだまだ十全とはいえないけど、それなりに理解を深めることができた。
ただ、ここに来て悩む。
「俺達人間と似ているような……でも、似ていないような……」
人間臭い。
かと思えば、冷たいただの道具のような気もして……
「……やっぱり、神様と話をしたいな」
最終的に、全ての鍵はそこにあるような気がした。
「ん?」
ふと、表の方から物音が聞こえてきた。
気になり部屋を出る。
「ハルさんも聞こえました?」
廊下にはアンジュとナインがいた。
彼女も物音が聞こえたみたいだ。
「もしかして、天使が……」
「可能性はあるけど、まだ決まったわけじゃないから、ナインは武器をしまってね?」
「失礼しました」
ナインは一瞬で武器をスカートの中にしまう。
手品みたいだけど、どうやっているんだろう?
「とりあず、二人は俺の後ろに」
なにが起きても二人をかばえるように警戒しつつ、表に向かう。
そして……
「フラメウ?」
ホールにいたのはフラメウだった。
いつもの無表情。
でも、どうしてそんな顔をしていられるのか不思議なくらい全身がボロボロになっていた。
服はあちらこちらが破れ、その下に深い裂傷や火傷が。
赤い血が流れている。
「まだ起きていたのですね。起こしてしまったようですみません」
「いや、えっと……謝ることじゃないけど、それは……」
「欠陥品を処分してきたところです」
「欠陥品、って……」
「ほぼほぼ処理が終わったので、こちらの様子を見に来ました。問題はなさそうですね」
「問題大アリです!」
アンジュが大きな声をあげて、慌てた様子でフラメウに駆け寄る。
相手は天使。
あまりにも大旦な行動に俺とナインはギョッとした。
「こんな酷い怪我をして……今、治療しますね!」
「いえ、私は……」
「セイクリッドブレス!」
フラメウがなにか言おうとしたが、それを無視してアンジュは治癒魔法を唱えた。
優しい光がフラメウを包み込み、その怪我を治していく。
「……そっか」
そんな光景を見て、俺は、妙な納得を覚えていた。
天使も傷つく。
そして、血が流れている。
俺達人間と同じ赤い血だ。
だから……
根本的なところは同じなのだろう。
よくわからないのは、まだ時間が足りないから。
ちゃんと話をして、深く接していけば、そのうち理解できると思う。
細かいことはいいや。
信じる人を信じる。
「俺も手伝うよ」
「ハルさん、お願いします」
「では、私は着替えを用意してきましょう」
なんとなく、アンジュに教えられたような感じになったな。
新作始めてみました。
『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』
こちらも読んでいただけると嬉しいです。




