表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

501/547

510話 嫌な予感はだいだい当たる

「フラン」


 ふと、第三者の声が響いた。

 静かで透明な声で……聞き覚えがある。


「あれ? お姉ちゃん」


 いつの間にかフラメウの姿があった。


 その顔は、感情を窺うことができない無表情。

 彼女のことをなにも知らずに接していた時、静かな笑顔などを見ていたんだけど……


 もう見ることはできないのかな?

 全部、演技だったのかな?

 だとしたら寂しい、と思ってしまう。


「どうしたの? お姉ちゃん、巡回をしていたよね」

「少し問題が発生しました」

「問題?」


 こちらに聞かせたくない話らしく、二人は体を寄せ合って内緒話をする。

 最初は呑気な顔をしていたフランだけど、次第にその表情がこわばっていく。


「……マジ?」

「このような嘘を言う意味はありません」

「まいったな、このタイミングで……ちっ、やってくれる」

「フラン?」


 彼女らしくない様子でとても苛立っている。

 いったい、なにが起きたんだろう?


「どうかしたの?」

「えっと……うーん」

「フラン、ここまで来たら隠し事はしない方がいいですよ」

「でも、今、わりといい感じだったんだけど……」

「黙っていては、逆に不信感を招いてしまいます。それに、いざという時に行動が遅れ、致命的な展開になるかもしれません」

「うー……それもそっか。よし」


 フランはなにか覚悟を決めた様子でこちらを見た。


 ちょっと怯えているような感じ。

 いたずらをした子供が親に告白するような、そんな感じ。


「えっと……ごめんね、お兄ちゃん」

「なにが?」

「さっきの話、もっと面倒なことになっちゃった。てへ♪」


 ……どこの話?




――――――――――




「天使があたし達を狙っている……?」


 みんなが起きてきた後、改めて事情を説明した。


 アリスは落ち着いていて、取り乱すことはない。 

 さすがだけど……

 ただ、どういうこと? という感じでフランを睨みつけていた。


「いや、あの……ほんとーにごめん!」


 ぱん! と両手を合わせて、拝むようにフランは頭を下げた。


「お兄ちゃんには話したんだけど、一部の天使は今回の訪問を歓迎していなくて……元々、ちょっと過激な連中で? アムズみたいな?」

「あんなのがたくさんいるなんて、ゾッとしないわね」


 アムズを思い返しているのか、レティシアが眉をひそめた。

 その手は腹部の辺りに寄せられている。

 アムズにやられた傷を思い返しているのかもしれない。


「その……具体的に、どんな問題が起きているんでしょうか? その天使達が私達を狙っている……とか?」

「安心してください、お嬢様。お嬢様の身は、私が命に変えても守ります」

「シルファもがんばる」

「ダメですよ。その気持ちは嬉しいですけど、命に変えても、とか言わないでください。なにかあったら悲しいです」

「っ……はい!」


 ナインは悶えるような喜ぶような、なんだか複雑な顔に。


「はいはーい! もしも天使が襲ってきたら、ぶっとばしてもいいっすか?」

「過激だねー……まあ、うん。そういう連中は自業自得だから、なにをしてもいいんだけど……できれば、おとなしくしてほしいかな?」

「どうしてっすか?」

「あまり暴れちゃうと、それだけ反感を持つ天使が増えていくから。もっとまずい展開になるかも」

「全部ぶっとばせばいいっす!」


 サナらしい意見だけど、さすがにそれは無理だろう。

 意思を持たないっていう古い天使なら、まあ、なんとかなるかもだけど……

 アムズのような天使が大量に出てきたら、さすがにお手上げだ。

 ゾッとする。


「俺達はどうしたらいいの?」

「今、お姉ちゃんと他の天使が対処しているから、ここで待っていてほしいな。大丈夫。ちゃんと解決してみせるから」

「それは……大丈夫なの?」


 今更、フランを疑うことはない。

 ただ、彼女達だけで対処できる問題なのか気になるところだ。


「んー……大丈夫! だと……思いたいような、気がしないでもない?」

「どっちなのさ」

「ごめんね。ちょっと確実なことは言えなくて……でも、私も一緒にいるから! それに、お姉ちゃんはすっごく強いからねー。たぶん、最強かな? だから、おかしなことを考えた天使達は、すぐに殲滅されると思うよ」

「殲滅?」

「処分、ってこと」


 にっこりと笑いつつ、フランは恐ろしいことをさらりと言うのだった。

新作始めてみました。

『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 人間、真似て作った天使なだけに不完全性が見えて来たな(ʘᗩʘ’) でも異議を唱え、反乱まがいの行動に出た時点で裁判や黙秘権も無く、促神罰で撃滅するのは天上界の規律であり調和の為か(٥↼_↼…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ