507話 戸惑い、迷い、悩み
「……」
いくらかの質問を終えて……
そして、思わず言葉を失う。
未知の情報がたくさん出てきて……
話を聞く度に衝撃を受けて、脳のキャパシティーがオーバーしてしまいそうだ。
過去に起きた戦争。
荒廃した世界。
それを再生するために生み出された神様。
「どう? 知りたいこと、知ることができた?」
フランが呑気に尋ねてきた。
「知れたけど、知りすぎたというか……」
「これ、全部、本当のことなの……?」
アリスの疑問はわかる。
俺も同じようなことを、ついつい考えてしまう。
「本当だよ?」
「でも……」
「証明しろ、って言われたら無理だけどね。色々な記録はあるけど、捏造だ、って言われたらどうしようもないから。だから、そこは信じてもらうしかないかなー」
突拍子もない、というか……
理解できないと、というか……
こんな話が待ち受けているなんて思ってもいなかった。
どうしても頭を整理する時間を必要としてしまう。
フランもそのことを理解しているらしく、こちらが声をかけない限り、黙ってくれていた。
「……」
戦争、荒廃、再生、神様……情報を一つ一つ整理していく。
これらの情報が正しいという前提で……
神様の目的は、世界の再生と管理だ。
そのために文明を管理する。
時に人間社会に介入する。
そこに自由はないのかもしれない。
悪魔や魔王のように反発する者が現れるのは当然かもしれない。
でも……
生きるためなら仕方ないのでは?
「……ダメだ」
今はどうしても冷静にものを考えることができない。
神様寄りの考えになってしまう。
少し時間を置いて、改めてものを考えたい。
「フラン。今日はちょっと、どこかで休みたいんだけど……みんなもそれでいいかな?」
「ええ、いいわ」
「私も構わないわよ」
「はい……ちょっと、色々と考えたいです」
「お嬢様と同じく」
「ふわわわ……」
サナは知恵熱で目を回していた。
やっぱり休息が必要だ。
「オッケー。じゃあ、泊まれるところに案内するね」
「ありがとう」
こうして、俺達は資料館を後にした。
それから少しの距離を歩いて、城のように高い建物の中へ。
中はコンパクトな作りになっていて、そこそこのサイズの部屋がずらっと横に並んでいた。
「ここ、好きに使っていいよ。鍵は中に置いてあるからね」
「宿?」
「んー……宿を模した、資料的要素の強い建物、ってところかな? ここにお客さんがやってくることなんて滅多にないから、宿なんて必要ないんだよね。でも、人間のことを知るために作っておいたやつ。あ、ちゃんと一通りの機能は揃っていて動くから問題ないよ」
「ありがとう」
なるべく離れない方がいいだろうということで、それぞれ近くの部屋を選んだ。
俺は入り口から一番遠い、最奥の部屋だ。
「おぉ……なんか、すごい」
部屋に入ると、中は思っていたよりも広かった。
ソファーにテーブルにクローゼット。
キッチン、お風呂。
ベッド。
一通りの家具が揃っている。
「……これ、キッチンだよね?」
コンロらしきもの、オーブンらしきものがあるけど……うーん?
どうやって火を点けるんだろう?
魔道具の反応はない。
かといって、火を灯す空間も見当たらない。
なにやらつまみがあるのでひねってみると、シュボッと火が点いた。
「すごい……」
まったく原理はわからないけど、すごく簡単に火がついた。
それでいて、しっかりと火力がありそうだ。
「これが天使の……ううん、神様の力と知識……か」
新作始めてみました。
『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』
こちらも読んでいただけると嬉しいです。




