501話 告白
「あたしは、ハルのことが好きよ」
「あの、その……私も、えっと……ハルさんが好き、です……」
「まあ……右に同じく」
大事な話があると言われ、アリス達に呼び出されたのだけど……
予想の斜め上をいく、ものすごく大事な話だった!
「えっと……」
ついつい冗談だよね? とごまかしてしまいそうになり……
しかし、その言葉は慌てて飲み込んだ。
アリスもアンジュも、あのレティシアも恥ずかしそうにしている。
それと、どこか緊張した様子だ。
間違いなく本気。
それなのにごまかしてしまうのはあまりにも失礼な話だ。
「どうして、いきなり? あ、いや。たぶん、その気持ちは前から抱いていたんだろうけど……」
俺が気づかないだけで、三人は密かに想いを育んできたのだろう。
いや、本当にいつから?
もしかして、かなり前から?
だとしたら申しわけなさすぎる。
「ほら。もうすぐ天使の街に行くでしょう? もしかしたら、そこでなにか起きるかもしれない。嫌な話だけど、あたしが死ぬかもしれない」
「そのようなことになった時、後悔のないようにしたい、という話になりまして……」
「で、とりあえず気持ちだけ伝えておこう、っていう話になったのよ」
「そうなんだ……」
その考えは理解できた。
これから先、本当になにが起きるかわからない。
後悔を残したくないと思うのは自然な流れだ。
とはいえ、まさか、三人から同時に告白されるとは思っていなかった。
「えっと、俺は……」
返事をしないといけない。
でも、頭がうまく働かなくて答えが出てこない。
俺は、みんなのことをどう思っているんだろう?
アリスは?
アンジュは?
レティシアは?
彼女達のことを、俺は……
「あ、返事はいらないから」
「え」
レティシアがあっさりと言い放つ。
「こんなことになるなら告白しておけばよかった、っていうような後悔をなくすために告白しただけよ。別に、今すぐハルとどうこうなりたいとか思っていないの」
「そう……なの?」
「そうよ」
きっぱりと断言されてしまう。
えっと……おかしいな?
こういう時は、誰か一人を選んで、とか。
いっそのこと三人共、とか。
答えを決めるのが一般的だと思うんだけど。
「あたしもレティシアと同じ。勝手に告白しておいて申しわけないんだけど、今すぐの答えは必要ないわ。というか……」
「むしろしないで欲しいです、という感じです」
「えっと……???」
意味がわからない。
「天使の街に行って、それから無事に帰ってくることができたら……その時、返事を聞かせてくれませんか? どんな答えでもいいから、その時に返事を聞きたいです」
「だから、ハルは絶対に無茶をしないこと。ちゃんと『ハル』が戻ってくること」
「これ、一方的な約束だけど、破ることは許さないわ。いい?」
そういうことか。
告白の返事を約束することで、天使の街に行ってなにか事件が起きたとしても、ちゃんと生き残ろう、っていう……
そんな決意表明。
未来に向けた約束なんだ。
「うん、わかったよ。天使の街に行って……その後、ちゃんと返事をする」
「よろしい」
アリスはちょっと茶目っ気を見せて、笑顔で頷いた。
アンジュとレティシアも笑顔になる。
「ちなみに、私を選んでもいいわよ? ま、特別ね」
「ちょっとレティシア、いきなり抜け駆けしようとしないで」
「ず、ずるいです。私だってハルさんのことが、いえ、その……あう」
「そこで照れてどうするのよ」
こういう時、険悪になるかと思っていたけど、でも三人は仲が良い。
きっと、今まで紡いできた絆があるからだろう。
その中にレティシアもしっかりと加わっている。
うん。
「絶対に生きて帰らないと」
新作始めてみました。
『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』
こちらも読んでいただけると嬉しいです。




