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500話 乙女の決意

「集まってくれてありがとう」


 オータム家の客間。

 そこに、アリスとアンジュとレティシアの姿があった。


「大事な話ってなんでしょうか?」

「私、これでもけっこう忙しいんだけど? ハルにあれこれ仕事を押しつけられたから」

「そう、そのハルについての大事な話があるの!」


 アリスがびしっと言う。

 妙な迫力があって、ついついアンジュとレティシアは黙ってしまう。


「まず最初に確認しておきたいんだけど、アンジュとレティシアはハルのことが好きよね?」

「「っ!?」」


 アンジュは耳まで赤くなり、レティシアも視線を泳がせた。


「わ、わわわ、私はそんな、べ、別に……」

「なんでそういう話になるの? 私は、ただの幼馴染よ」

「ごまかさないで。うんうん、いいの。ちゃんとわかっているから」


 アリスは、今度は妙に優しい顔で言う。

 全部わかっているから。

 照れ隠しはいいよ? という感じで、まるで子を見守る母のようだ。


「ちなみに、あたしはハルが好きよ」

「「っ!?」」


 再びアンジュとレティシアが動揺した。


 アリスの気持ちは知っている。

 というか、遠回しにではあるが確認したことがある。


 しかし、こうもはっきりと言ったことは一度もない。


「だから、ハルに告白しようと思っているの」

「「っ!?!?!?」」


 三度、アンジュとレティシアが驚いた。


 告白。

 なんて衝撃的な展開なのだろう。


「そ、それは本当に……?」

「あんたねえ……よりにもよって、こんな時に告白? これから敵の本拠地に乗り込もう、っていう時に?」

「だからこそ、よ」


 表向きは友好的な訪問。

 ただ、その裏に悪意が隠されていてもおかしくない。

 アムズという天使の暴虐っぷりを目の当たりにしたばかりだから、そうやって警戒するのは当然のことだ。


 そんな状況で告白?

 いやいやいや。

 他にするべきことがあるだろう。

 次の旅に備えるべきだろう。


 ……というのがレティシアの考えではあるが。

 アリスの考えは、また違うものになる。


「次の旅はこれまでない過酷なものになると思う。なにが起きるかわからない。今まで以上の危険があるかもしれない……死ぬかもしれない」

「それは……」

「だから、後悔したくないの。あの時こうしておけばよかった、なんて思うようなことは避けたいの」

「だから、ハルに告白するっていうの?」

「そうよ。今、このタイミングで以外、告白する機会なんてないし」


 そこまで言って、アリスは苦笑する。


「とはいえ、これは自己満足ね。あたしは告白しようと思っているけど、答えは求めないつもり。返事はまた今度、っていう感じね」

「なによ、チキンじゃん」

「振られるのが怖いわけじゃないわよ? いや、まあ、多少はあるけど……でも、ハルにあまり負担をかけたくないの。私の自己満足だから、なおさら」


 告白の返事を求めなければ、ハルはただ話を聞くだけで終わる。

 それ以上のことはしなくてもいい。


 断り、傷つけて……

 そして、ギクシャクする、という事態を避けることができる。


 もっとも、ハルは思い切り悩むだろう。驚くだろう。

 そこについてのフォローは最大限にするつもりだけど、多少の影響が出ることは避けられないだろう。


 それでも、とアリスは思う。


 死ぬかもしれない、ということを考えると気持ちを伝えておきたいと思ったのだ。

 わがままで、自己満足。

 それでも、そうしないと後悔しそうだから。

 これ以上、前に進めなくなってしまいそうだから。


「あの……」


 アンジュが小さく挙手する。


「それを、どうして私達に?」

「抜け駆けはずるいと思って」

「え?」

「だから、ほら。さっきも言ったけど、アンジュとレティシアもハルのことが好きでしょう?」

「っ!?」


 アンジュは、今日何度目になるかわからない赤面を繰り返した。

 よく見ると、レティシアの頬もわずかに赤くなっていた。


「私だけ告白、っていうのはさすがにずるい気がして……だから、アンジュとレティシアも一緒にどう? っていうお誘い」

「無茶苦茶なお誘いね……」

「いや?」


 レティシアは真面目な顔をして考える。


「……いいわ、乗ってあげる」

「えっ」


 思わぬレティシアの反応に、アンジュが声を出して驚いた。


「ハルのことなんてどうでも……とか、ここで強がっても仕方ないもの。あんたを見習って、私も素直になることにするわ」

「それはよかった♪」

「でも、ハルがその場で告白に応えて、私を選ぶ可能性もあるわよ? その時はごめんね」

「その逆もあるっていうことを忘れないでね?」

「ふふふ」

「うふふ」


 アリスとレティシアは不気味に笑う。


「それで、アンジュはどうする?」

「わ、私は……」


 アンジュの頭はいっぱいいっぱいだ。

 熱を出してしまいそう。

 それでも、必死に考えて考えて答えを出す。


「私も、ハルさんに告白します!」

新作始めてみました。

『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 茶化して言えばフラグだけど3人同時告白ならフラグも吹っ飛ぶかもね┐(´ー`)┌
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