494話 ツンデレ勇者
「……そっか。クラウディアが」
二人と話した後、アリスとレティシアと合流した。
「寂しくなるわね……」
「うん。でも、クラウディアが決めたことだから応援したいんだ。それに、一生の別れっていうわけじゃないし……会おうと思えばいつでも会えるよ」
それと、どこかで予感があった。
クラウディアとまた一緒に旅をすることになる。
肩を並べて戦うことになる。
今は一度足を止めるけど……
またそんな日がくる。
そういう予感。
「それで、歓送会を開こうと思うんだけど、どうかな?」
「うん、いいんじゃない? せっかくだから盛大に開きましょう」
「ちょっと待ちなさいよ」
レティシアからストップがかかる。
「今の会話の流れだと、私達がハルと一緒にいるのは当たり前、っていう風になるじゃない」
「そういえば」
残るか、一緒にいるか。
二人の答えは聞いていない。
でも、一緒にいるのが当たり前のように思っていた。
「なんだろう? アリスとレティシアは絶対に一緒に来てくれると思っていたかも」
「そうね。あたしはそのつもりだったけど……」
「私はなーんにも言ってないわ。ここで別れてもいいのよ? そもそも、今まで一緒にいたのは成り行きのようなものだから」
レティシアの問題はほぼほぼ解決した。
色々とあったけど、彼女は大事な幼馴染のままだった。
魔人の問題は、たぶん、なんとかなるだろう。
あれから色々と考えたのだけど……
魔人になったことで暴走しているのなら、レティシアの中の悪魔の魂を再封印してしまえばいい。
それこそ、フランの手を借りるなどして。
そうすれば彼女の問題は解決だ。
最初はレティシアのことを『知る』ために旅を始めた。
でも、今は違う。
世界の仕組みを『知る』ために旅をしている。
その目的を考えると、レティシアがついてこなくても問題はないのだけど……
「……ついてきてくれないの?」
「ちょ……なんで捨てられた子猫のような目をしているのよ」
「俺は、レティシアと一緒にいたいな。せっかく、またパーティーを組むことになったんだから」
「だから、それは成り行きで……」
「成り行きでも、俺はすごく嬉しかったよ」
「……っ……」
「レティシアと別れてから思ったんだ。なんか物足りないというか、満たされないというか……一緒にいたいな、って」
長い時間を一緒に過ごしてきた幼馴染なんだ。
一緒にいて当たり前。
だから……
「これからも俺の隣を歩いていてほしいな」
「なぁ!?」
なぜかレティシアが赤くなる。
その隣でアリスが呆れていた。
「あのね……ハル、それだとプロポーズみたいじゃない」
「あれ、そうなるの?」
「そうなるわ。まったくもう、あたしだってそんなこと言ってもらったことないのに……」
「レティシア、照れている?」
「て、ててて、照れてなんかいないわよ!? はぁ? はぁ? 私がハルの言葉で動揺するとか、ありえにゃいし!」
噛んでいた。
「ふふ。あの斬撃姫もハルの前だと可愛らしいのね」
「ちょっと、アリス!?」
「可愛いね」
「にゃあ!?」
うん。
やっぱり、レティシアとアリスと一緒にいると楽しい。
二人と離れ離れになるイメージがまるで湧いてこない。
「まったく……仕方ないわね。私も特にやることはないし、もう少し付き合ってあげる」
「もちろん、あたしも一緒するわ。ハルは強い、でも、でも、まだまだ危なかっしいもの」
「ありがとう、レティシア、アリス」
新作始めてみました。
『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』
こちらも読んでいただけると嬉しいです。




