478話 永遠に
「ふざけるな! このようなところで私が……」
今度は糸を束ねて剣を作り出した。
そんなこともできるなんて、とことん器用なヤツ。
ただ……
「お前、バカだろう?」
「がっ!?」
カウンターで拳を叩き込み、地面に殴り落とす。
その体が土にまみれて……
さらに、その上に足を落とす。
踏みつけつつ、冷たく声を飛ばす。
「剣も作れるのはおもしろいが、そんなもの、簡単に防げるに決まっているだろう? 糸よりも遥かに対処しやすい。選択を誤ったな」
「く、くそっ……!」
アムズはどうにか立ち上がろうとする。
逃げようとするが、俺がそれを許さない。
しっかりと背中を踏みつけて。
そのまま砕くような勢いで力と体重を乗せてやる。
「がっ、あああ……!? ば、バカな、これほどの力があるなんて聞いていない……以前、覚醒した時は、これほどの力は……」
「もう一度、言うぞ。お前、バカだろう?」
以前というのは、迷宮都市のミリエラの時のこと指しているのだろう。たぶん。
あれはだいぶ前のことで、俺がどんな存在なのか自覚していなかった。
なにも知らない状態だった。
でも今は違う。
全てを知った。
そして、受け入れた。
完成度がまるで違う。
「言うなれば、これが俺の本気だ」
「ひっ……」
殺気を叩きつけると、アムズは怯えてみせた。
その態度にさらなる怒りを覚える。
いざ自分に危険が及ぶと怯えるのか?
子供達に酷いことをしてきたくせに、自分の命は大切なのか?
ふざけるな。
「お前は救えないヤツだな」
「な、なにを……」
「殺しはしない。が、生きることも許さない」
俺はアムズを空に蹴り上げた。
ほぼ同時に魔法を発動させる。
「グレート・アトラクター」
拳大の漆黒の弾が放たれた。
着弾。
空間を歪めつつ『漆黒』が広がり、アムズを飲み込んでいく。
「なっ!? こ、これは……」
「亜空間への扉を開いた。悪いが一方通行だ」
「や、やめろ!?」
「生きることはできず、死ぬことも許されない。永遠にさまよえ」
「やめろやめろやめろおおおおおぉっ!!!?」
「さようなら」
肉食獣が獲物を食べるように。
アムズは亜空間に飲み込まれた。
亜空間はこちらと同じようで、まるで違う。
時間の流れはないに等しい。
故に、肉体が衰弱することはない。
ただ、思考はそのままだ。
心に直接的な作用は及ぼさないため、きちんとものを考えることができる。
例えるなら、空の果てに投げ出されたようなもの。
脱出することは不可能。
どこまでも果てに落ちていく。
永遠に。
「ざまあみろ」
新作始めてみました。
『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』
こちらも読んでいただけると嬉しいです。




