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475話 VSアムズ・その5

「……あ……」


 悲鳴にならない悲鳴。


 三本の糸は、レティアの太もも、脇腹、左胸を貫いていた。

 ビクンと彼女の体が震えて……

 少し遅れて、その口から血があふれる。


「レティシア!!!」


 慌てて彼女に駆け寄り、崩れ落ちる体を支えて……


「それも、させないよ」

「うぐっ」


 アムズの糸が生き物のように動いた。

 糸を通じてレティシアが持ち上げられて、空高く放り上げられてしまう。


 助けないと。

 あの高さから落ちたら怪我じゃ済まない。

 手が届くだろうか?


 混乱してまともにものを考えることができない。

 それでも体は動いで、彼女の元に向かう。


 一秒でも早く。

 他には目もくれず。


 ……でも、それが失敗だった。


「うあ!?」


 突然、右の太ももに激痛が走る。

 見ると、アムズの糸が太ももを貫いていた。


「三回目……させないよ?」

「邪魔を……するなぁ!!!」


 早くしないとレティシアが。

 助けないといけないのに、駆けつけないといけないのに。

 でも、アムズが邪魔をするせいで動けない。


「師匠!」

「ハルさま!」


 アリスをアンジュに預けて、サナが飛び出してきた。

 クラウディアも続く。


 でも……間に合わない。

 だって、レティシアはもうすぐそこで……


 ――――――


 表現したくないような鈍い音が響いた。

 同時に、レティシアが地面に叩きつけられる。


「……」


 彼女は動かない。

 ピクリとも動かない。


 代わりに血が広がる。

 ゆっくりと、じわじわと。

 地面を赤く染めていく。


「……ぁ……」


 レティシアが……死んだ?


 いや、まさか。

 大丈夫、きっと大丈夫だ。

 まだなにも確認していない。

 そう判断するのは早計だ。


「レティシア、今……!」

「やれやれ、私のことを忘れないでほしいな。そんなに隙だらけだと、すぐにでも殺してしまいたく……」

「だから、さ」


 自然と声が冷たく、鋭くなるのを自覚した。


「邪魔をするな」


 太ももを糸に貫かれたままだけど、構わない。

 強引に動いでレティシアのところに向かう。


 肉が裂ける。

 激痛が骨に響く。


 でも、今はまるで気にならない。

 レティシアのこと以外見えない。


 そうやって彼女のところに駆けつけて、そっと体に触れた。


「……よかった、まだ生きている」


 ちゃんと体は温かい。

 弱々しいけど呼吸もしている。


「ヒール」


 ひとまずの応急処置。

 これですぐにどうこう、っていうことはないだろう。


「サナ、クラウディア。悪いけど、今度はレティシアをお願い」

「師匠、自分も戦うっす! あいつ、めちゃくちゃすぎて許せないっす!」

「わたくしも、サナさんと同じ気持ちですわ」

「ごめんね」


 二人の気持ちは嬉しい。

 嬉しいけど……


「……あいつを殺すのは、俺だから」

新作始めてみました。

『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 殺られたのが腐れ縁・幼馴染でも女の柔肌ぶち抜く表現はリョナだろ(٥↼_↼)
[気になる点] この怒りが収まることはあるのか…? [一言] あーあ、これは塵一つとして残らないほどに一方的にボコられるんだろな…
[一言] 本当に珍しくリョナに走ったな(ʘᗩʘ’) そしてやっぱり沸点越えたか(٥↼_↼)
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