473話 VSアムズ・その3
「シールド!」
魔法の盾を作り出して防御をして、
「ファイアボム!」
それでも防ぎきれない分は、即座に次の魔法を唱えて迎撃する。
戦闘が開始して五分は経っただろうか?
こんなやりとりが繰り返されて、一向に進展がない。
アムズが操る糸はとても厄介だ。
鋭く速く。
視認しづらくて……
なによりも不規則に動いて、こちらの予測を超えてくる。
たぶん、体の一部のように自由自在に操ることができるのだろう。
思いもよらない角度から飛んでくることが多くて、防御と回避に専念するしかない。
たまに攻撃に転じる場面もあるのだけど……
ヤツの糸は防御も兼ね備えていた。
糸を複数束ねることによって盾を作り出す。
あるいは鈍器のように叩いて、こちらの魔法を迎撃して……
攻防共にとても優れていた。
伊達に天使を名乗ってはいない、か。
「まだ続けるつもりですかね? 私の力は十分に理解したと思いますが」
「もちろん」
「やれやれ、本当に人間は無駄なことが好きだ。まあ、しばらく付き合ってあげますね。最近、少し体がなまっていたので」
軽口を叩きつつ、アムズは糸を操作する。
片手で五本。
それぞれ生き物のように不規則に動いて、全方位から迫る。
それらを回避して。
あるいは魔法で防いで、アムズの隙を探る。
たぶん、やつはまだ余力を残している。
あの態度がなによりの証拠だ。
俺は俺で全力を出してはいないけど……
でも、こんな街中で全力を出せるわけがない。
けっこうな建物を吹き飛ばしてしまう。
というか、それを抜きにしても、わりと本気だ。
限定的な戦いではあるものの、手を抜くことなく全力を出している。
それでもまだ、アムズの方が上。
なんて厄介な。
これで戦闘特化じゃないというから、恐ろしい話だ。
フランやフラメウはどれだけ強いのだろう?
「ファイアボム!」
魔法で牽制しつつ、この状況を打開する方法を考える。
アムズの武器は遠距離タイプ。
どうにかして懐に潜り込めばこちらが有利になる。
ただ、常に糸が飛び交い、鉄壁の守備を敷かれている。
それを突破するには……
「……ダブル」
「……トリプル」
好機が訪れた。
「む?」
「「スラッシュ!!」」
アムズの背後からアリスとレティシアが現れて、それぞれ奇襲をしかけた。
タイミングはバッチリ。
威力も文句なし。
「ちっ、いつの間に……!?」
アムズは驚いているものの、実のところ、俺は二人にけっこう前から気づいていた。
異変を察したらしく、二人はすぐにここにやってきた。
ただ、無闇に突撃するようなことはしない。
ここぞという時を狙い、じっと待機。
そして、隙を見せた今、同時に攻撃を叩き込んだ……というわけだ。
この瞬間を俺も待っていた。
アムズには結界があるため、二人の攻撃は通らない。
ただ、注意を逸らすことができた。
それで十分だ。
「ファイアボム!」
手前の地面を爆破。
その粉塵に紛れて接近して……
「フレアブラスト!」
「しまっ……!?」
ゼロ距離で。
下から上に向けて、中級魔法を放つ。
これなら街に被害が出ることはない。
アムズだけがダメージを受ける。
俺のフレアブラスとは中級魔法の威力じゃない。
上級魔法のさらに上をいく。
それをまともに受けたアムズは、結界を砕かれて、紅蓮の炎に飲み込まれた。




