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466話 一歩ずつでも前に

「ガァアアアッ!!!」


 少し離れたところで魔物が叫んでいる。

 その魔物は、この前見たやつと同じ姿だ。

 子供が元になっているのだろう。


「ちょっとおとなしくするっす!」


 サナが魔物を後ろから羽交い締めにする。

 ドラゴンの力だ。

 魔物はその場から動くことができず、ただ叫ぶことしかできない。


 それでも手足の先や頭は自由に動く。

 離せと叫び、爪でサナを傷つけようとする。


「ホーリーサークル!」

「アースバインド!」


 アンジュとクラウディアの魔法が発動した。

 光と土が魔物を包み込み、完全にその動きを封じる。


「師匠!」

「うん、了解!」


 今のうちだ。


 魔物化したシロと対峙した時のことを思い返しつつ、集中。

 魔力を集めて、それを魔物に流し込んでいく。


 叩きつけるような暴力的なイメージはなし。

 そっと汚れを洗い流すような、優しく触れる感じ。

 魔物の中にある『いらないもの』を流し取る。


 そして……


「……あぅ……」


 魔物の体が揺らいで、黒い霧のようなものがあふれた。

 後に残されるのは子供だ。


 意識を失っている様子で、ふらりと倒れそうになる。

 慌てて駆けより、その小さな体を受け止めた。


 触れた体はほのかに温かい。

 よく見てみると、胸元は規則正しく動いている。


「よし」


 浄化完了。


 ……ちなみに、魔物化した存在を元に戻すことを『浄化』と名付けることにした。

 ピッタリな名前だと思う。


「この子をお願いします」

「はっ、おまかせください!」


 同行していた兵士達に子供を託した。


 これで三人目。

 浄化は順調に進んでいるのだけど……


 街のあちらこちらで争う音が響いている。

 魔物化した子供が暴れているのだろう。


 アリスやレティシア、ナインが街を駆け回り……

 他の兵士達も魔物化した子供達を抑えてもらっている。

 そのおかげで、今はまだ致命的な被害はない。

 それでもゼロにするのは難しくて、こうして戦火が拡大している。


 本当にこれでいいのか?

 いっそのこと、子供達を切り捨てるべきでは?

 そうすれば被害が出ることはない。

 仲間や兵士達が危険に晒されることもない。


 そんな迷いがある。

 胸にずっと抱えたまま、いつまでも消えてくれない。


 でも……


「みんな、次にいこう!」


 仲間が信じてくれている。

 兵士達も信じてくれている。


 なら、弱音をこぼすわけにはいかない。

 前へ前へ。

 一歩ずつでも進んでいかないといけない。


 そう、決めたのだから。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] やられてる以上、やり返すかひっくり返しかの何方かだが(ʘᗩʘ’) ここで止まる訳にもいかんだけにやりきるしかないか(٥↼_↼) でも敵の目的がまだ定かでない(ب_ب)これではタダのテロで終…
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