461話 存在を書き換える
黒い魔物……シロを助けるにはどうすればいいか?
人間が魔物になった話なんて聞いたことがない。
なら、まずは知ればいい。
知ることから全てが始まる。
「サナ、そのまま押さえておくことはできる?」
「楽勝……うわっ、わわわ!?」
「ガアアアッ!!!」
サナの腕の中で黒い魔物が暴れる。
離せと言うようにもがいて、叫んでいる。
「ちょっ、おとなしく……あわわわ!?」
「サナさん!」
「わたくし達も!」
アンジュとクラウディアが魔法で小さな結界を作る。
その中に閉じ込められた黒い魔物は、目に見えて動きが鈍くなった。
魔物の動きを阻害する。
アンジュとクラウディアだからこそできる技だろう。
「では、私も」
「あたしも手伝うわ。ほら、レティシアも」
「まったく、仕方ないわね」
ナイン、アリス、レティシアの三人は先端に重りをつけたロープを取り出した。
獲物に投擲して捕縛するためのアイテムだ。
黒い魔物を囲むように、三方向からそれぞれロープを投げる。
狙いはピッタリ。
黒い魔物と……それと、ついでにサナをまとめて拘束することに成功した。
「ちょ、なんで自分まで!?」
「ご、ごめんね? あたし、そこまで繊細なコントロールはできないから……」
「同じく」
「そこまで密着されてしまうと、もはやどうしようもなく……」
「あーもうっ、こうなりゃヤケっすよ! 自分も全力で止めるんで……今っす、師匠!」
「了解!」
みんなががんばってくれている。
シロを助けるために、自分にできることをやっている。
なら、俺も自分にできることをやらないと。
「シロ、待ってて」
今助けるから。
動きを封じられた黒い魔物の前に移動する。
動けないものの、意識は失っていない様子だ。
こちらを睨みつけてくるものの……
ただ、その瞳はどこか弱々しい。
タスケテ。
コロシテ。
そう言っているかのようだ。
大丈夫。
今、なんとかしてみせるから。
「……」
黒い魔物に両手をかざして集中する。
まずは魔力を手の平に集めていく。
そして、それをゆっくりと黒い魔物に流していく。
攻撃するのではなくて調査。
魔力を媒介にして、相手が持つ様々な情報を盗み取るのだ。
情報を手に入れた後は、それを解析する。
黒い魔物の体は、今、どのような構造になっているのか?
なにが正常で、なにが異常なのか?
適切なものとそうでもないものを分けていく。
そして本番。
魔力を流す量を増やす。
水で汚れを洗い落とすイメージ。
黒い魔物の中にある『いらないもの』を打ち消していく。
数え切れないほどの量があった。
奥の奥にまで染み込んでいるところもあった。
でも、諦めない。
一つ一つ、しっかりと丁寧に。
そして時間をかけて、完璧と言えるくらいの作業をこなしていく。
そうやって、ありったけの魔力を注いで……
「シロ、戻ってきて!!!」




