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458話 助けて

「うあ、あああああぁ!!!?」

「シロさん!?」


 突然、シロが苦しみ、大きな声をあげた。

 クラウディアは慌てて抱きしめようとするが、突き飛ばされてしまう。


「なにを……」

「来ないでっ!!!」


 鋭い叫び声にクラウディアの動きが止まる。


 シロはとても脂汗を流して、苦痛に顔を歪めて、自分を抱きしめるようにしていた。

 尋常ではない様子だ。

 しかし、ここまで鋭く制止されると、どうしていいかわからない。


「シロさん、いったいなにが……」

「あっ、ううううう……!? な、なに、これ……私が私じゃなくなる……あっ、あああ!?」

「シロさん!?」

「やだやだやだっ、こんなこと……やだぁ……!!!」


 シロは錯乱した様子で言葉にならない言葉をこぼしていた。

 体も不規則な痙攣を繰り返している。


 制止されたとか、そんなことはもう関係ない。

 今はとにかくシロの傍にいなければ。


 そんな使命感にも似た感情を抱いたクラウディアは、慌てて駆ける。


 しかし、それは一歩遅く……


「たす……けて……」


 シロはクラウディアに手を伸ばした。

 クラウディアもシロに手を伸ばす。


 だた、二人の手が交わることはない。


「あああああああああああ!!!?」


 シロが黒い光に包まれた。

 それは蛹が羽化するための繭に似ている。


 ドクン、ドクンという心臓の鼓動に似た音が響いて……

 そして、黒い光にヒビが入り、砕け散る。


「シロさんが……魔物、に……?」


 中から現れたのは魔物だった。


 武具店に置かれている人形に似ている。

 目と口はない。

 体は黒に染まり、子供のように小柄。


 それはシロが操る人形に似ていて……


「シロさん!!!」

「アァアアアアアァアアアッ!!!」


 悲鳴のようなシロの叫び声が響いた。




――――――――――




「いったい、なんだったんだろう……?」


 冒険者ギルドでの事情聴取が終わり、俺とアリスは帰路を辿る。


 街中に突然魔物が現れた。

 その魔物を倒すと子供になって……

 しかし、塵になって消えてしまう。


 わけがわからない。

 いったい、なにが起きているのだろう?


 ただ、どうしようもなく嫌な予感がした。


「……ねえ、ハル」


 アリスが苦い顔をして言う。


「その……これは確かな話じゃないんだけど」

「うん」

「魔物を倒した時の子供……見覚えがあるの」

「え?」


 思わぬ言葉に驚いてしまう。


 もしかして知り合い?

 でも、そんな様子はなくて……


「あの子、ガーデンで見たような気がするの」

「ガーデン……孤児院で?」

「絶対、って断言はできないんだけど……」


 確かな記憶がないらしく、アリスはとてももどかしそうだった。


 ガーデンのことを思い返す。

 ただ、アムズはともかく子供達にそれほど注意を払っていたわけじゃない。

 確かな記憶が蘇ることはなくて、なにも思い出せないままだ。


「ごめん、俺はよくわからないかも……」

「気にしないで。あたしも曖昧なところがあるから」

「でも……もしもアリスの言うことが正しいとしたら、アムズは……」

「ますます怪しいわね」


 シロのこと。

 街に現れた魔物のこと。

 子供のこと。


 全ての点が収束して、線になろうとしていたのだけど……

 でも、もう遅かった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 今回は完全に後手に回ってるな(٥↼_↼) かわいい妹分か養女にしてクラウディアがママでハルがパパですよ~で無理やりゴールインする口実にもできたのに(─.─||)
感想一覧
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