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442話 野良猫少女

 色々な意味で後始末をして……

 それから、シロを連れてアーランドに戻った。


 意外というか、シロはおとなしかった。

 暴れることなく、素直に僕達についてきてくれた。


 ただ、アリスの背中に隠れて、僕と目が合うとびくびくと震えてしまう。

 嫌われた……というよりは、恐れられているみたいだ。

 脅したけど、本気で実行しようとは思っていないのに。


「この子が事件の犯人なんですか?」

「あら、可愛らしい子ですわね」


 屋敷の客間にシロを連れていくと、アンジュとクラウディアが意外そうな顔をした。


「な、なによ……?」


 一方のシロは、借りてきた猫のようにおとなしい。

 口調はいつも通りだけど、常にびくびくして、あちらこちらに視線をやっている。


 保護された野良猫のようだ。


「それじゃあ、話をしようか」

「っ!?」


 シロはダダダと駆けて、ソファーの後ろに隠れてしまう。

 ややあって、こっそりと様子をうかがうように顔だけを出す。


 本当に猫みたいだ。


「ハルにトラウマを植え付けられたみたいね」

「えぇ……俺、そんなにひどいことはしていないような」

「ダメですわ、ハルさま」


 一通りのことを聞いているクラウディアは、子供にするように「めっ」としつつ怒る。


「シロちゃんはまだ子供。自分のしていることをきちんと理解していない可能性がありますわ」

「それは……」

「それなのに大人と同じように厳しく接していたら、怯えてしまうのも当然ですわ」

「……詳しいね」

「学院にいた頃は、年下の子の指導をしていたこともあるので」


 私に任せてください、とばかりにクラウディアは自信たっぷりの顔に。

 メイドさんにお願いしてあらかじめ持ってきてもらっておいたクッキーを手に、シロに語りかける。


「はじめまして。私は、クラウディアといいます。あなたの名前は?」

「……シロ」

「シロちゃん、って呼んでもいいですか?」

「……いいよ」

「おいしいクッキーがあるんですけど、食べますか?」

「……いいの?」

「もちろんですわ」

「食べる!」


 シロは勢いよくソファーの裏から飛び出して、クラウディアからクッキーを受け取る。

 そしてまたソファーの裏に戻り、クッキーを食べる。


「おいしいですか?」

「……うん」

「まだありますよ。おかわり、いりますか?」

「いる!」


 再びシロが飛び出してきた。

 ただ、今度はソファーの裏に戻らない。

 クラウディアからクッキーを受け取り、その場でかりかりとかじる。


 猫?

 いや、ねずみ?


「ふふ」


 クラウディアは笑顔でシロの頭を撫でる。

 クッキーを食べるのに夢中なのか、シロは逃げることなく、されるがままだった。


 すごい。

 この短時間で、ここまでシロの警戒心を解くことができるなんて。


「はえー、クラウディアはすごいっすね」

「子供に対してどのように接すればいいか、クラウディア様は本能で理解しているのですね」


 クラウディアがいてよかった。

 色々な意味で彼女に感謝する俺だった。


「ねえ、シロちゃん」

「なーに?」

「どうして、あんなところにいたんですか?」

「お友達と一緒に遊んでいたの」

「街の外で?」

「うん。だって、私と同じくらいの子って、みんな子供なんだもん。一緒にいてつまらないよ」

「シロちゃんは大人っぽいから、仕方ないですわ」


 大人っぽいかな? と俺は疑問に思うのだけど、クラウディアはシロの言葉を否定しない。

 彼女の言葉を全肯定しつつ、さらに話を進めていく。


「魔物を退治したりして、みんなで遊んでいたの」


 遊びの内容が豪快だ。

 子供とはいえ勇者候補なだけはある。


「そうしたら、おじいちゃんに話しかけられたの」

「おじいちゃん?」

「うん、天使のおじいちゃん」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 前回の不祥事があっさり触れず触らず流されてるけど聞かないでおくか紳士として(ʘᗩʘ’) しかしチョロイな勇者は(↼_↼)歳関係なくそこん所は似てるな(⌐■-■)
感想一覧
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