表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

429/547

428話 世界の半分

「仲間、って……それ、本気?」

「もちろん♪」


 フランは楽しそうに言う。


「俺のこと、ちゃんとわかって言ってる?」

「わかってるよ」

「母様の一番の敵ですね」


 わかっているみたいだ。

 その上で仲間に誘うということは……

 良い意味でも悪い意味でも、俺のことを警戒している、っていうことだよね?


「うーん……待遇は?」

「「……」」


 そう問いかけると、二人はきょとんとして、


「あはは!」

「ふふ」


 フランは爆笑して、フラメウも小さく笑った。


「そんなにおかしなことを聞いたかな?」

「だって、話に乗ってくるだけじゃなくて、待遇まで聞いてくるんだもん。そんなの想定外だよー」

「今までにもこういった勧誘は何度かしてきましたが、あなたのような答えは初めてですね。大抵は、突っぱねられてしまうので」


 いい感じに俺に興味を持ってくれたみたいだ。

 このまま話を進めて、できる限りの情報を引き出したい。


「ただ……それは本心ですか?」

「どういうこと」

「話を合わせて、私達から情報を引き出そうとしているのでは?」


 お見通しだったらしい。


 うーん。

 どうやら下手な小細工は通用しないみたいだ。

 こういう時は、素直に本心をぶつけた方がいい。


「正解。ただ、二人に興味があるのは事実だよ」

「お兄ちゃん、それ、口説いてる?」

「そういうわけじゃないよ。ただ……」


 俺は魔王を継いだ。

 神や天使のことを知った。


 ただ、それは魔王から見た一方的な知識と経験と記憶だ。


 本当に戦わないといけないのか?

 倒すべき敵なのか?

 そこは自分の目でしっかりと確かめて、慎重に見極めたいと思う。


 だからこそ、今、彼女達と色々な話をしたい。


「俺は、君達のことを知りたい。というのも、これからどうするのか? 特に決めていないんだよね」

「あれ? そうなの?」

「実は神様が本当にいて、裏で世界を調整している。魔王は本当の自由を取り戻すため、悪魔を率いて神様に戦いを挑んでいた……っていう事実を知った直後、強制転移させられたからね。仲間はバラバラになって、見知らぬ土地に飛ばされて……考えるヒマがないんだ」

「あー……あれね」


 フランが気まずそうな顔に。

 ちょっと意外な反応だ。


「実を言うと、あれ、部下が暴走しちゃってねー」

「暴走?」

「魔王の継承を阻止しよう! って感じで突撃しちゃったんだ。でも、もう継承は行われていて、お兄ちゃんは力を手に入れた。そんなところに無茶な攻撃をして、事故が起きて……」

「その結果が、あの強制転移?」

「そゆこと。あははー……ごめんね?」


 本気で悪いと思っているらしく、フランは苦い顔をしていた。


 演技のようには見えないけど……

 でもこの子は、途中まで見事に俺達を騙してみせたからな。

 なにを信じていいのやら、わからなくなってしまいそうだ。


「二人の話を信じると、あれは事故っていうことになるけど……じゃあ、鉄血都市で領主をそそのかしていたのは?」

「そそのかしてなどいません。あれは、あくまでも領主が望んだこと。私達はそれに力を貸しただけにすぎません」

「他都市への侵略を許すの?」

「母様がそれを許容したので」

「その意図は?」

「あの都市の力を削ぐためですね」

「うん?」

「他都市への侵攻。それは許されることではありません。しかし、領主が変わらない以上、都市の根幹が変わらな以上、いつか必ず侵攻が開始されるでしょう。そのために……」

「あえて背中を押して、そして、自滅することを望んでいた?」

「正解です」


 フラメウは真面目な顔をして頷いた。


 わからない話でもないけど……

 でも、その計画が実行されると、たくさんの血が流れることになる。


 世界平和なんて壮大な話を叶えようとしているわけじゃない。

 冷たい話かもしれないけど、世界の裏側で顔も知らない人が死んでもなんとも思わない。


 だけど。


 こんなにも簡単に犠牲を許容しようとする二人の姿勢には、ちょっと……色々と思うところがあった。


「とりあえず、すぐに答えは出せないと思うんだ」

「うん、そうだね。この話も二人の正体も、色々と突然すぎて、ちょっと思考が麻痺しているよ。それに……」


 俺一人で決めるのではなくて、みんなと話し合いたい。

 ただ、そのみんなはまだ揃っていない。


 クラウディア、シルファ……どこにいるんだろう?


「答えは先延ばしでいいよ」

「いいの?」

「急かしすぎている、っていうのは自覚してるからねー。すっごく待たされると困るけど、ある程度、ゆっくり考えていいよ」

「それはありがたいかな」

「私達があなたを本気で仲間にしたいと考えている……その証明となるかわかりませんが、こちらの誠意を見せましょう」

「誠意?」

「クラウディア・ファナシスとシルファ・クロウブラストの居場所を知りたくありませんか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 話の通じず一方的に要求する奴も多いけど冷静で器の広い奴もまた油断できんが(ʘᗩʘ’) 部下の暴走から始まったこの事件、誠意以前に詫びで情報よこせや(╯°□°)╯
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ