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408話 なんで?

 ナインと別れた後、考え事をしつつ倉庫へ戻る。


 フランのことは心配だけど……

 アリスとレティシア、サナがいれば、問題なく誘拐犯を撃退できるはず。


 ……若干、サナがやらかさないか心配だけどね。


「うーん」


 アンジュとナインを助ける。

 蒼の庭……フランを助ける。


 どちらも実現するための作戦は、わりとシンプルなものだ。

 いくらか準備は必要だけど、大して難しいことじゃない。

 とあるところに情報をばらまいておくだけ。


 その情報の真偽は曖昧でも構わない。

 とある人達に疑問を抱かせて、動かすことができればそれでいい。


 他の仕込みも、多少の時間はかかるものの、そこまで複雑なものじゃない。

 しっかりと準備をしていけば、問題なく達成することができるだろう。


 ただ……


「フラメウはどうしよう?」


 彼女は領主のことを信頼している。

 救ってもらったと思っていて、深い信頼を寄せている。


 そんな彼女が領主の裏の顔を知れば、大きなショックを受けるに違いない。


 全体を考えれば、フラメウの気持ちは些細なことだ。

 気にすることじゃない。

 俺も、フラメウとアンジュ、どちらを優先するか? と問われれば、アンジュを優先すると迷うことなく答える。


 答えるんだけど……


「でも、うーん……できるなら、フラメウもなんとかしたいよね」


 欲張りかもしれない。

 でも、妥協を覚えたらダメだと思うんだ。


 やりたいことをやる。

 どれだけ難しくても、目標は最大限に。

 そこに向けて努力することが、なによりも大事だと思うから。


「よし!」


 ひとまず、フラメウとコンタクトをとってみよう。




――――――――――




 その後……


 倉庫に戻ると、アリス達がフランを無事に救出してくれていた。

 誘拐犯も捕まえることができた。


 案の定というか、誘拐犯は大した情報を持っていない。

 元々、切り捨てられる予定だったのだろう。


 それでも、ナインからある程度の事情を伝えられたことは大きい。

 今回の作戦は成功だ。


 とはいえ、フランに大きな負担をかけてしまった。

 説明は後にして、今はゆっくり休んでもらうことに。


 もう一度、アリス達にフランの警護を頼んで……

 その間に、俺は街へ繰り出した。




――――――――――




 夜。


 陽が暮れているのだけど、街は活気づいていた。

 あちらこちらに明かりが灯されて、たくさんの人が笑顔で酒を煽っている。

 どこからともなく綺麗な音楽が流れてきて、自然と笑顔になるような、そんな温かい時間が流れていた。


 良い街だと思う。

 でも、領主は裏で地上げや誘拐などに手を染めていて……


「なんで、あんなことをしているんだろう?」


 領主の考えていることがわからない。


 不正に手を染めて、私腹を肥やしている。

 そんな悪党なら、ある意味、わかりやすくて助かるんだけど……

 でも、違う気がする。


 フラメウは聡明な女性だと思う。

 そんな人が、なんの疑いもなく領主を信じるだろうか?

 あれほどの信頼と感謝を向けるだろうか?


 そのことを考えると……

 領主はただの悪党じゃなくて、悪党なりの信念を持っている……そんな気がした。


「厄介な相手かもしれないな」


 ついつい、ため息をこぼしてしまう。


 とはいえ、歩みを止めるわけにはいかない。

 厄介だとしても、やり遂げてみせる。


「えっと……あっ、見つけた」


 肉を専門に扱う店を訪ねた。

 ナインの情報が確かなら、ここに……


「あら、あなたは……?」

「こんにちは」


 偶然の再会を装い、俺は、フラメウに笑顔を向けるのだった。


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 事態が事態だけに力押しはできんからな(ʘᗩʘ’) もう大泥棒になって全部盗み取って証拠バラ撒いてアンジュもナインも脇に抱えてスタコラサッサと逃げるじゃ駄目か(?・・) しかしハル(ʘᗩʘ…
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