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401話 姉と妹

 フラメウは、フランの歳の離れた姉らしい。

 早くに家を出て、領主のところで働き始めた。


 親と仲が悪いわけじゃなくて、むしろ、親のため。


 蒼の庭は良い宿だけど、でも、運営は大変。

 そこでフラメウは、外からサポートをしようと、街のために尽力する領主の力になろうと思ったらしい。

 街が発展すれば宿も発展する、という考えだった。


「うーん」


 フラメウの話を聞いて、ついつい首を傾げてしまう。


 話の筋は通っているけど……

 ただ、それがうまくいっているかどうか、そこは疑問だ。

 現に、蒼の庭の運営は厳しく、また、嫌がらせも受けている。


 フラメウが望む展開になっているかと問われると、そこは否定するしかない。


「フランは……妹は元気にしていますか?」

「うん、それは問題ないけど……会っていないの?」

「ずっと忙しくて、なかなか機会が……」


 フラメウは暗い顔に。

 妹に会えず、家を任せきりにしていることを申しわけなく思っているみたいだ。


「フランは元気にやっているよ。フランのお母さんも……元気みたいで、宿も順調みたい」


 フラメウに本当のことを告げると、なんだか、とても落ち込んでしまいそうで……

 ついつい嘘を吐いてしまう。


「そうですか! それは良かったです、ふふ」


 すごく喜ぶフラメウだけど……

 その笑顔を見ていると、後ろめたい気持ちになってしまう。


 やっぱり、本当のことを言った方がよかったかな?


「つきました」


 あれこれ考えている間に、領主の屋敷に到着した。


 他の都市と比べると、かなり広い。

 建物は五階建て。

 たぶん、地下もあると思う。


 庭も広く、ちょっとしたスポーツができると思う。

 池もあって、綺麗な魚がゆっくりと泳いでいるのが見えた。


「こちらへ」


 使用人は正門を使えないらしく、裏手に回る。

 そこから中へ入ると、


「おー」


 屋敷の内観に圧倒されてしまう。


 たくさんの調度品が飾られているものの、嫌味な雰囲気は一切ない。

 建物とうまく調和していて、見る者の心を和ませてくれる。


 こういった内装はなかなか見かけない。

 建物は主の心を表すと言うけれど……

 領主の心は、とても綺麗なのだろうか?


 色々と気になるものの、今はフラメウの手伝いに集中することにした。

 あまりキョロキョロしていたら、怪しまれるだけじゃなくて、フラメウにも迷惑をかけちゃうからね。


 まずはキッチンへ移動して、保冷庫に食材を入れた。

 それから倉庫に移動して、残りのものを置く。


「手伝っていただき、本当にありがとうございました。ぜひ、お礼をしたいのですが……」

「ううん、気にしないで」

「ですが……」

「なら……領主さまに会えたりしないかな?」


 直接、話をすれば色々なことがわかるかもしれない。


「……申しわけありません。私はただのメイドなので、そこまでの権限は……」

「だよね。うん、仕方ないよ。気にしないで」


 さすがに無理みたいだ。

 とはいえ、期待はしていなかったから、がっかりすることはない。


「なら、ちょっとだけでいいから、屋敷の中を見ることは可能かな? こんなところ、来たことがないから……あ、もちろん、行ける範囲でいいんだけど」

「そう、ですね……はい、それなら大丈夫です。ただし、一階の半分だけになってしまいますが……」

「うん、それでもいいよ。ありがとう」


 よし。

 さらに一歩、領主の懐に潜り込むことができた。

 一気に解決とは言わないけど、できる限りの情報を集めないと。


「では、こちらへどうぞ」


 さっそく、フラメウの案内で屋敷を見て回る。


 まずは、キッチン。

 最新の設備が揃っているだけじゃなくて、十人近い専属のコックがいた。

 フラメウ曰く、領主はグルメで、毎日違う種類の料理を食べているとか。

 そのため、コックの数も多くなったらしい。


 次は書庫。

 図書館並に本が揃っていて、ずらりと本棚が並んでいた。


 それから客室をいくつか見て回り、最後に領主のアトリエを訪れた。


「ここは……」


 色々な絵が飾られていた。

 それだけじゃなくて、彫刻や抽象的な芸術作品もある。


「領主さまは芸術を愛しておられまして……ご自分で絵を描いたりしているのです」

「なるほど。ここは、そのアトリエなんだ……でも、大事なところっぽいけど、いいの?」

「いくつかあるうちの一つですから。それに、ここは一般の方にも開放されているんです。自分の趣味を理解してもらいたい、という感じでしょうか」


 スケールのでかい話だな。

 一般人の俺には理解できない。


 それでも、なんとなくの興味を覚えて、アトリエを見て回る。


「あれ?」


 ふと、アトリエの一角にこの街の模型が置かれていることに気がついた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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