表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

396/547

395話 偶然か必然か

 魔水晶。

 それは、悪魔の魂が封印された宝石。


 各地に散らばった魔水晶を回収して、魔王である俺の力とするか。

 あるいは、封印を解いて仲間にするか。


 もう一つ、旅をする目的がこれだ。


「それ、本当?」

「なによ。私の言うことを疑うわけ?」

「うん」

「むぐっ……ハルのくせに言うようになったじゃない」


 レティシアって猪みたいなんだよね。

 興味のあることに突撃して、場をひっかき回す。

 それは今も昔も変わらない。


 いや。

 力がついた分、今の方が厄介かもしれない。


 そんな彼女の言うことだから、ちょっと疑ってしまう。


「ねえ、その話は本当なの?」


 アリスにも聞こえたらしく、難しい顔をしていた。


「本当よ。証拠はないんだけど、ここにある、って感じるの」

「なるほど……レティシアの言うことなら、ちょっと疑わしいけど」

「あんたまで!?」

「でも、レティシアだからこそ、っていう信憑性もあるのよね」


 レティシアは、悪魔の魂を取り込んだ魔人だ。

 なら、同じ悪魔の魂を感知できるのかも。


「理屈はわかるんだけど……どうして、観光地の宿に魔水晶が?」

「私に聞かれてもわからないわよ」

「うーん」


 あまりに突拍子のない話だ。

 でも、なさすぎるだけに、逆に信憑性が高くなってきた。


「ハル、調べてみたほうがいいんじゃない?」

「そうだね。元々、そのつもりだったし」

「どういうこと?」

「ここ、色々とおかしいし」


 宿の規模から考えると、とてもリーズナブルなところだ。

 食事と部屋はまだわからないけど……

 それでも、値段を考えると、ここまでガラガラなのはおかしい。


 普通に考えて、満員。

 あるいは、半分以上の部屋は埋まっているはずなのに……


 人を遠ざける要因があるのか。

 あるいは、魔水晶が本当にあって、関係しているのか。

 それとも、まったく別の原因があるのか。


 色々と気になるところだ。


「えっとえっと……うー、どれもおいしそうで迷うっす!」


 一人、サナは呑気にごはんのことを考えていた。




――――――――――




「はふぅ……幸せっす」


 ごはんを食べて、サナは至福の笑みを浮かべていた。

 一回りほど大きくなったお腹をさすり、ごろごろと喉を鳴らしている。


 猫だろうか?


「ごはん、おいしかったね」

「そうね……お手頃価格なのに、すごくおいしくて量もたっぷり」


 この分なら、部屋も期待できると思う。


 それに、フランに聞いた話だと、お風呂も付いているとか。

 採算が取れているのか心配になるくらい、ものすごくお得だ。


「この宿、なんで流行ってないのかしら?」


 レティシアが小首を傾げつつ、周囲を見回した。


 客はゼロ。

 見事なまでに誰もいない。


 単に営業が足りていないのか。

 それとも、別の外的要因があるのか。


「うーん」


 色々と気になる。


「アリス、レティシア」

「あたしは問題ないわ」

「私も」


 ここに泊まる。

 そんな俺の意図が伝わったらしく、二人は問題ないと頷いてくれた。


 サナは……

 ごはんに満足しているみたいだし、反対することもないだろう。


「じゃあ、ひとまずここを拠点にしようか。領主とアンジュの情報を集めて……あと、この蒼の庭についても……」

「おうおうおうっ!」


 今後の方針を決めようとしたところで、なんだから乱暴が声が響いた。


 反射的に振り返ると、入り口に二人の男が。

 私達は悪人です、というような格好をして、ニヤニヤと笑っている。


 うん。

 ものすごいトラブルの予感。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ