383話 天敵?
ゲオルグが放つ光は、触れたものを消滅させてしまう。
凶悪極まりない攻撃だ。
範囲がそれほど広くないのがせめてもの救いか。
ファイアで相殺できたから、シールドで防ぐことはできるかな?
ただ、盾ごと飲み込まれてしまいそうな気もする。
……試すのはやめておこう。
失敗した時のリスクが大きすぎる。
と、なると……
「みんな、離れて!」
「「「っ!?」」」
「またか!?」というような感じで、アリス達は顔を引きつらせて俺から離れた。
うん。
その反応はちょっと気になるけど、でも、それでよし。
「フレアブラスト!」
敵が強力な攻撃を放つのなら、その前に倒してしまえばいい。
強引だけど、でも、すごく単純な理屈だ。
そう判断して、今現在、放つことができる攻撃の中で二番目に火力の高い魔法を叩き込む。
荒れ狂う竜のように炎が吹き荒れた。
それは一直線にゲオルグに向かって飛んで、その身を喰らう……はずだった。
「えっ!?」
ゲオルグは防御行動を取らず、回避行動を取ることもなかった。
無防備に体を晒して……
そして炎が直撃するけど、しかし、彼の体を焼くことはない。
一瞬、ゲオルグの体から光が放たれる。
すると、時間を逆再生するかのように炎の向きが反転。
こちらに炎が……
「って、えええぇ!?」
なんでこんなことに……
って、まさか魔法を反射することができる!?
そんな能力、聞いたことがない。
でも、天使という存在の詳細も知らないから、可能性としては……
「あああ、みんな、逃げて!?」
「ハルの……」
「アホぉおおおおお!!!」
「きゃあああああ!?」
爆発の寸前、アリスとレティシア、それとクロエ達のジト目が向けられたような気がした。
うん。
どう考えても俺が悪い。
ごめんなさい。
「ごほっ、ごほっ……」
咄嗟に防御魔法を唱えた。
みんなをカバーできるほどの広範囲に展開することはできないから、炎の流れを調整することだけを考えた。
結果、なんとか直撃を避けることはできて……
「ハルの魔法って、こんな恐ろしい威力なのね……わかっていたつもりだったけど、自分の身に降りかかると、より深く理解することができるわね……」
「後で斬る後で斬る後で斬る後で斬る後で斬る……」
「さすが、というべきなのか、ものすごく迷うところですわ……」
よかった。
みんな、無事みたいだ。
……一部、とても危険なことをつぶやいている人がいるけど、それは見なかったことにしておいた。
「見ての通りだ。私に魔法は通用しない」
ゲオルグがドヤ顔で言う。
ちょっとイラッとするな。
「終わりだな。私に逆らったこと、神に刃を向けたこと。後悔して死ぬがいい」
「それはどうかな?」
「なに?」
「確かに魔法を反射できるみたいだけど……でも、それがなに? 魔法を封じたくらいで勝ったつもりになるなんて、ちょっと気が早くないかな?」
「貴様以上の火力を出せる者が他にいると?」
「もちろん」
「……つまらんハッタリだな。いや、しかし……」
ゲオルグは迷い、追撃に移らない。
彼の魔法反射の能力はとても厄介だ。
俺だけじゃなくて、他の人の戦力も半減してしまうだろう。
だからこそ、絶対の自信を持っていたのだけど……
それを突破することができるなら?
あるいは、無効化できるなら?
その時は、ゲオルグの致命傷に繋がるかもしれない。
故に、ハッタリと切り捨てることはできず、迷い、考える。
「まあ……」
ハッタリなんだけどね。
魔法を反射する能力なんて初めて見た。
初見の技をいきなり見破れるほど、俺は頭が良くない。
だからせめて、時間稼ぎをするために、それらしい言葉をぶつけて動揺を誘った……というわけだ。
試みは成功。
それなりの時間を稼ぐことはできそうだ。
その間に、どうにかして打開策を……
「ふふん」
ドヤ顔のレティシアが前に出た。
「魔法を反射する? だから私達が終わり? なにそれ、笑っちゃう。ハルのバカ魔法は脅威だけど……でも、それだけが全部じゃないってこと、教えてあげる」
バカ魔法とか言わないでほしいんだけど……
「くたばりなさいっ!!!」
おおよそ、勇者とは思えない台詞を口にしつつ、レティシアが突撃した。




