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378話 絶対的な守護者

 壁が吹き飛んだ。

 天井が吹き飛んだ。

 床はかろうじて残った。


 突発的に起きた爆発で、領主の屋敷はひどい有様になっていた。

 三階部分がほぼほぼ消し飛んで、空がくっきりと見えている。


「今のを防ぐか」


 ゲオルグは変わらず、平然とした顔をしていた。

 こちらの生存をさほど驚いていない。

 今の不意打ちで倒せるとは思っていなかったのか、あるいは、感情を表に出さないようにしているのか。


「……」


 いつからそこにいたのか?

 そんな彼の隣に、以前に見た人形のような存在があった。


 手の平をこちらに向けて。

 そして、光の翼を背に生やしている。


 その顔は能面。

 感情は読み取れないけど……

 でも、敵意は感じられた。


「驚いているようだな」

「そいつは……」

「ふっ。この方は、鉄血都市を救うために降臨された天……」

「いただきっ!!!」

「ちょ!?」


 レティシアが飛び出した。


 話?

 そんなの知らないわよ、というような感じだ。


 俺を含めて、みんなが驚く中、レティシアが剣を振る。


「サザンクロス!!!」


 刹那の五連撃。

 上位の剣技が炸裂して、人形の体を一瞬で切り刻む。


 手足が。

 それと首が切断されて宙に舞う。

 支えるものを失った人形は、そのまま床に転がった。


「「「……」」」


 突然のことに、誰もが唖然とする中、


「ふふんっ、ザコね!」


 レティシアは得意そうに胸を張っていた。


「えっと……レティシアはなにをしているの?」

「見てわかるでしょ、先制攻撃よ」

「まだ敵か味方かわからないのに?」

「敵に決まってるでしょ、あんなの。どう見ても人間じゃないし、魔物とかそういう類にしか見えないじゃない」


 そこは反論できないかもしれない。


「なら、先手必勝あるのみよ!」

「わからないでもないんだけど、その発想に至るのに迷いがないのがもう……」


 ある意味でレティシアらしいのかもしれない。


 いや。

 褒め言葉じゃないからね?

 得意そうにしないでね?


「……やれやれ」


 ゲオルグはあくまでも落ち着いたまま、ため息をこぼす。


「いきなり斬りかかるとは。見たことがないが、外の者か? これだから外の者は信用ならん」

「えっと……いきなりの部分はこちらも想定外なんだけど、まあいいや……クロエ」

「……あっ、は、はい」


 我に返った様子で、クロエは部下に指示を出す。


 部下達は警戒をしつつ、ゲオルグとの距離を詰めて……


「「「っ!?」」」


 一様に足を止めた。

 その視線は、床に転がる人形に向けられている。


 レティシアにバラバラにされたはずの人形が、カタカタと動いていた。

 ほどなくして重力から解き放たれて、ふわりと浮き上がる。

 時間を逆再生するかのように手足がくっついて……


 そして、元の姿を取り戻す。


 ゲオルグが小さく笑う。


「天使が斬られたくらいで死ぬとでも?」


 コイツ、今……


 って、考えているヒマはない。

 人形……天使が、再びこちらに手の平を向けた。


 魔力の光が集まっていく。

 ゾッとするほどの圧倒的な量だ。

 今度は屋敷の三階だけじゃなくて、屋敷そのものが吹き飛んでしまうかもしれない。


 どうする?

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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