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377話 親子の対峙

 俺達の快進撃は続く。


 その後もたくさんの兵士や秘密兵器が出てきたものの、足を止めることはない。

 蹴散らして、蹴散らして、蹴散らして……

 ほどなくして屋敷の最深部に到着した。


 屋敷の三階にある執務室。

 そこに領主……ゲオルグ・フェルナルドはいた。


 教会で見た時と同じだ。


 その瞳の奥。

 ゾクリとするほど冷たい感情が宿っていた。

 実の娘と再会したのに、なんの感情も抱いていないような……人形なようなイメージ。


「騒々しいな」


 執務室に突入すると、ゲオルグは静かな反応を見せた。


 これだけの騒ぎの中、驚くことに書類と向き合い、執務を行っている。

 レジスタンスの革命なんて大したことはない……そう言っているかのようだ。


「ゲオルグ・フェルナルド」


 クロエが一歩前に出た。

 領主のことを父ではなくて名前で呼んだのは、彼女なりのケジメなのだろうか。


 刃を向けて、強い調子で言う。


「今ここであなたを討ち取っても構いません。しかし、最後の情けです。おとなしく投降しなさい」

「……ふむ」


 周囲を敵に囲まれて逃げ場はない。

 味方はおらず自分一人だけ。


 そんな絶望的な状況なのに、ゲオルグは落ち着いていた。

 虚勢を張っているわけじゃない。

 俺達を驚異として認識していない様子だ。


「クロエよ」

「……なんでしょう?」

「貴様が反乱を企てた。そういうことで間違いないな?」

「はい」


 ゲオルグの圧に負けることなく、クロエは真正面から答えてみせた。


「この都市をあなたに任せていたら、いずれ滅んでしまいます。あなたの無謀な野心に民や他都市の人々を巻き込むわけにはいきません」

「他の都市はともかく、鉄血都市の民は、私に全てを委ねてくれているぞ?」

「洗脳に近いことをしておいて!」

「ふむ」


 ゲオルグは顎を指先で撫でた。

 それから、ため息を一つ。


「私の娘だから、最後の情けとして話し合いをしたのだけど、意味はなかったようだな」

「それは私の台詞です」

「さて、どうだろうか?」


 ゲオルグはあくまでも不敵な態度を崩さない。


 会話を引き伸ばして、時間を稼いでいる?

 でも、各地の陽動で応援がやってくることはない。

 こんな状態で他者を頼りにしても意味はない。


 なら……

 自分に絶対的な自信を持っている?


「……残念です」


 クロエはわずかに目を伏せる。


 討つ決意を固めたとはいえ、それでも相手は父親。

 できることなら穏便に済ませたかったのだろう。


 しかし、それは叶わない。

 ゲオルグの態度がそれを示している。


 なら、これからするべきことは一つ。


「彼を捕らえなさい。抵抗するのなら、攻撃も許可します」

「「はい!!」」


 レジスタンスのみんなが勢いよく返事をして、ゲオルグに近づいていく。


 そこに来て、ようやくゲオルグはペンを置いた。

 席を立ち……


「……ふっ」


 彼らの行動を愚かと笑うように、小さく漏らす。


 瞬間、

 どうしようもない悪寒を覚えた。

 命の危機に晒されたような危機感も同時にやってくる。


「シールド!」


 ほぼ反射的に防御魔法を唱える。

 直後……


 ゴガァッ!!!


 耳をつんざく爆音と共に、視界が白に染まった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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