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373話 拗ねる二人

 一時間後。

 レジスタンスにより領主を討つ作戦が開始された。


 今は一つ目の陽動を起こしたところだ。


 レジスタンスが街の中心部で派手に暴れて……

 鎮圧のために派遣された兵士と激突。

 小さな戦争が勃発していた。


 もう少ししたら、二つ目の陽動を起こす。

 そうして領主の兵が大きく削られたところで、本命である俺達が突入。

 領主を討つ。


 作戦の成否は俺達にかかっている。

 俺達が失敗したら、レジスタンスは終了だ。

 反乱に加担したとして、クロエも処罰されるだろう。


 絶対に失敗することは許されない。


 ……許されないんだけど。


「「……」」


 アリスとレティシアはとことん不機嫌そうで、場の空気がひたすらに重い。

 その空気を感じて、同行するレジスタンスの幹部達は顔を引きつらせていた。


 たぶん、俺も顔を引きつらせていると思う。


 気にしていないのはアリスとレティシア。

 それと、クロエだけだ。


 今いる場所は、クロエと最初に出会った空き家。

 家の中はどんよりと重い空気に包まれている。


「えっと……」

「なに?」

「なによ?」

「……ナンデモナイデス」


 場を和ませようとしても、失敗してしまう。

 このまま作戦も失敗してしまいそうな勢いだ。


 クロエとのことは誤解なのに、二人は聞く耳を持たない。


「でも」


 アリスはわかるんだけど、レティシアはなんで不機嫌なんだろう?

 もしかして、レティシアも俺のことを……?


「いやいや」


 まさかね。

 そんな都合の良い話、あるわけがない。


 ……ないよね?


 一瞬、剣を持ってニヤリとするレティシアに追いかけられる図を想像してしまい、ちょっとだけ背中が震えた。


「ハル?」

「え?」


 気がつけば、アリスがこちらの顔を覗き込んでいた。


「なにか様子がおかしいけど……」

「えっと」

「……ごめんなさい。あたし、嫌な態度だったわね」

「それは……」


 そんなことないよ、と言えればいいのだけど、ついつい口ごもってしまう。

 アリスが苦笑する。


「いいの、あたしが悪いから」

「……アリス……」

「誤解っていうのはわかっていたんだけど、でも、感情が追いつかないというか……妙に腹立たしくなって。それで、あんな態度に……ごめんなさい」

「いや、俺の方こそ……!」

「作戦もあるし、仲直りしましょう」

「うん」


 笑顔で握手。


 よかった。

 これで心置きなく作戦に挑むことが……


「でも、詳細は後でたっぷり聞かせてもらうからね?」

「……ハイ」


 やっぱり根に持たれていた!


 作戦のことだけじゃなくて、アリスとレティシアのことも考えないといけない。

 うう……胃が痛い。

 こっちの方が高難易度ミッションじゃないだろうか?


「ハルさん、そろそろ時間です」


 クロエがそう言ってきた。


 時間を確認してみると、作戦開始まであと五分。

 こんな状況だとしても、ここまできたら引き返すことはできない。

 どんな場面だとしても、やれることをやるだけだ。


 ただ……


「むぅ……」

「ふんっ」


 アリスとレティシアがとことん不安だった……

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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