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369話 アニキ!

「待ちなさい!」

「っ!?」


 アリスの一喝。

 それは雷のような迫力があって、幹部達は思わず足を止めてしまう。


「な、なんだ……てめえも邪魔するのか?」

「そうなるわね」


 アリスはため息を一つ。


「ハルの言い方がちょっとアレだったのは認めるわ。それについてはごめんなさい」


 あれ?

 俺に問題があるということに。


 アリスの後ろでレティシアが頷いているけど……

 うん。

 君に納得されるのは、ちょっと心外かな?


「ただ、あたしもハルの意見に賛成よ。成し遂げたいことを考えるのなら、ああした場で問いかけられても動揺することのない強い意思を見せてほしいわ。まあ……言い方はちょっとアレだけど」


 アリスのジト目がこちらに。


 ごめんなさい。

 少なくても、やる前に相談は必要だったかもしれない。


「でも、このままだとしこりが残る。そんな状態で作戦に参加したどうなるか? あまりよくない結果になるでしょうね」

「それは……」

「そこで勝負をしてみたらどうかしら?」


 なるほど。

 アリスの考えていることを理解した。


 要するに、男同士のガチンコ勝負というわけだ。

 負けた方が勝った方の言うことを聞く。

 遺恨は一切残さない。


 ……とまあ、そう言うと聞こえはいいかもしれないけど、実際は力で言うことを聞かせるだけ。


 少し考えれば、わりと理不尽な内容に気づくのだけど……


「おう、いいぜ!」

「やったらぁ!」


 血の気が多い人がほとんどらしく、幹部達はなんの疑問も持たず、勝負を受け入れてしまう。


 うーん。

 このレジスタンス、大丈夫かな?


 なにはともあれ。

 俺と幹部達で勝負が行われることになった。


 場所を訓練場に移す。

 ほどほどに広く、防音や結界などの設備も整っていた。


 これだけの設備を用意しているということは、やっぱり、クロエは本気なんだろうな。

 施設を見ても、絶対に革命を成し遂げてみせるという強い意思を感じられた。


「おっしゃあ、俺が勝負を決めてやるぜ! おらぁっ、覚悟しろよおらぁっ!」

「えっと……」


 おらぁ、というかけ声は必須なんだろうか?

 街のごろつきに見えてしまうのだけど……

 でも油断は禁物だ。


 ごろつきに見えるとしても、相手はレジスタンスの幹部。

 それなりの力を持っているに違いない。

 なので、初手から全力でいこう。


「あ、ハル。わかっていると思うけど、加減を……」

「ファイアボム!」

「ぎゃあ!?」


 試合が開始されて、即座に魔法を唱えた。

 爆発。

 対戦相手の幹部がその場にひっくり返る。

 ぴくぴくと痙攣しているところを見ると、しっかりと生きているみたいだ。


「あれ?」


 こんなにあっさりと?

 もっと苦戦すると思っていたんだけど……うーん。


「ハル……やりすぎ」

「やるじゃない」


 対照的な反応が。


「もう、ダメじゃない。ちゃんと手加減をしないと。下手をしたら、今以上にこじれるわよ」

「ちゃんとしたよ?」

「もっと手加減をしないといけないの」


 難しい……


「お、おい……一撃でやられたぞ?」

「しかも、なんだよ、あの魔法の詠唱速度」

「それに見たことない魔法で……あれが、あいつの力?」


 残りの幹部達がざわついていた。

 それぞれ驚愕の表情を浮かべている。


 彼らは揃ってこちらを見た。

 瞳に宿るのは畏怖の感情。

 ただ、ほどなくしてそれはキラキラしたものへ変わり……


「「「今日からアニキと呼ばせてください!!!」」」


 一斉に頭を下げてきた。


「……えぇ」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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