表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

369/547

367話 ちょっとまてや

 レジスタンスのアジトはとても広い。


 砦を一つ、まるごと使用しているらしい。

 たくさんの部屋があるだけではなくて、武器も豊富だ。

 いざという時のためのバリケードなどもある。


 メンバーは百人ほど。


 領主に反逆することを考えると少ないけど……

 でも、小さな女の子がこれだけの数を集めて、アジトを用意したというのだから驚きだ。


 さすが領主の娘というべきか。

 彼女は将の才能がある。


 とはいえ……

 クロエのような女の子が武装蜂起しなければいけない現状は、とても歓迎できるものじゃない。

 俺達には俺達なりの目的があるのだけど、それを抜きにしても、彼女の力になりたいと思った。


「では、今後の方針を決めたいと思います」


 会議室へ移動して、これからを話し合う。


 メンバーは、クロエとレジスタンスの幹部が数人。

 それと俺達だ。


 幹部達は、突然やってきた俺達を胡乱な目で見ている。

 素性不明なので、助っ人と言われてもすぐに納得できないのだろう。


 一般構成員は歓迎してくれたけど……

 幹部ともなると、そう簡単に信じるわけにはいかないのだろう。


「その前に、彼らのことを紹介します。ハル・トレイターさん。アリス・スプライトさん。レティシア・プラチナスさん。私達に力を貸してくれる、新しい仲間です」

「……お嬢、その方々は本当に信頼できるので? 領主のスパイという可能性は?」

「あの男はスパイなどという手は使わないでしょう。真正面から叩き潰そうとするはずです」

「それはそうですが……」

「すぐに信じることは難しいかもしれません。ですが、彼らはとても強い。味方になってくれれば、目的を果たすことができるはず」

「……わかりやした。お嬢がそこまで言うのなら」

「ありがとうございます」


 クロエの熱意に負けた様子で、幹部が引き下がる。


 ただ、こちらを睨んだままだ。

 クロエを裏切るような真似をしたら承知しない、そう目が語っていた。


「……なによ、あいつ。やる気? 斬るわよ?」

「……斬らないで」


 とても好戦的なレティシアだった。


「では改めて……今後についてですが、一気に攻勢に出るべきと私は考えます。領主を倒して、妄執から都市を解放しないといけません」

「ちょっと確認しておきたいんだけど」


 挙手をしてから発言をする。


「領主を排除するって聞いているんだけど、それは、殺すっていうこと?」

「てめえ!?」


 領主の娘であるクロエになんてことを聞く。

 そんな感じで幹部達が怒るものの、当の本人は冷静だった。


「はい」


 即答。

 迷いもない。


「それは確定?」

「確定です」

「そっか……うん、了解」


 そこまでの覚悟を決めているのなら、なにも言うことはない。

 俺達の目的のため。

 クロエの目的のため。

 共闘して、一緒に戦うことにしよう。


「それでは、まずは……」




――――――――――




 会議は一時間ほどで終了した。


 クロエ達はすでに綿密な攻撃計画を立てていたらしく、話が停滞することはなかった。

 俺達に説明することが目的で、後は、細部を詰めるだけだったみたいだ。


 まず、メンバーを三つに分ける。


 陽動班は二つ。

 それぞれ時間差で事件を起こして、領主の兵を少しでも削る。

 そうやって隙ができたところで、クロエ率いる精鋭が領主の館へ突入する。


 シンプルな作戦だ。

 でも時間やタイミングなどは細かく考えられていて、よくできていると思う。

 うまくハマれば、一気に優位に立つことができるだろう。


「ふふん、私達は突入班ね!」

「レティシア、うれしそうね?」

「陽動なんてチマチマしたことはやってられないわ! 私にふさわしい舞台で、思い切り斬りまくりたいもの」


 発言が切り裂き魔と変わらない。


 うーん。

 幼い頃のレティシアが懐かしい。


「天使のこと、誰も知らなかったのは残念ね」


 会議中、天使について尋ねてみたけど、成果はなかった。

 幹部もクロエも詳しくない様子で、なにも知らないという。


 できれば、突入前にある程度の情報を集めておきたかったんだけど……

 時間をかけると他都市への侵攻が始まるかもしれないから、仕方ないか。


「作戦は明日ね。私、それまで寝てるわ」

「あたしもゆっくりしようかしら?」

「なら俺も……」

「おうおうおう、ちょっと待てや兄ちゃん」


 ふと、そんな声が聞こえてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ