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359話 再会できたものの……

 磔にされていたのはアリスだった。


「……」


 意識がない様子で、ぐったりとしている。


 パッと見た感じ、怪我らしい怪我はしていないけど……

 でも、油断はできない。


 ハッキリとした外傷がないだけで、骨や内蔵が傷ついている可能性もある。


「悪魔めっ!」

「この街から出ていけー!」


 街の人は、それぞれ怒りの声を吐き出している。

 どうして、ここまで外の人を拒絶するのだろう?


「ハル」


 レティシアが耳元でささやく。


「わかっていると思うけど、短気は起こさないでよ? 見た感じ、アリスはすぐにどうこう、ってわけじゃなさそうだから、まずは機会を……」

「うん、大丈夫」


 俺は、にっこりと笑い、応える。


「すぐにアリスを助けないとね」

「ちょっ!?」


 レティシアが慌てているけど、気にしない。

 群衆の真ん中に向けて、手の平を向ける。


「ファイアボム!」


 ドンッ、という炸裂音。

 それと、強烈な衝撃と音が広がる。


 威力を最小限に。

 その代わり、衝撃と音を最大限になるように設定したものだ。


 ファイアボムと大きく性能が異なるから……

 名付けるなら、「スタンボム」というところか。


「きゃあああああっ!?」

「な、なんだ!? 耳が……」

「悪魔の仕業か!?」


 群衆達は大混乱。

 うん。

 計算通り。


「さ、いくよ。レティシア」

「ハル、あんたっていうヤツは……私よりメチャクチャね。ちょっと目を離した隙に、どうして、こんな風になっているんだか」


 なにやらため息をこぼしつつも、レティシアは俺を追いかけてくれた。


「アリス!」


 磔のところまでたどり着いた。

 すぐに拘束を外して、アリスを自由にする。


 怪我は……見た感じはない。

 意識はないものの、ちゃんと呼吸をしている。


「よかった……」

「のんびりしてないで、さっさと逃げるわよ。ほら!」

「う、うん」


 レティシアに思い切り手を引っ張られる。


「あ……」


 これ、なんていうか……

 確か、ずっと前にもこんなことがあったよな。


 小さい頃。

 レティシアと一緒に遊ぶと、いつも彼女が俺を引っ張ってくれて……


「なにニヤニヤしているのよ?」

「……なんでもないよ」


 こんな時になんだけど、ちょっとだけ昔に戻ったような気がして懐かしくなった。


 とはいえ、思い出に浸るのは後。

 アリスをしっかりと背負い、一気に広場を駆け抜ける。


 そのまま裏路地へ……


「っ!?」


 瞬間、ものすごい悪寒を感じた。


「ちょ、ハル!?」

「待って」


 足を止めて、物陰に身を潜める。

 レティシアも強引に引っ張り、隠した。


「どうしたのよ?」

「……あれ」


 広場の上空に人影が見えた。


 細身のシルエット。

 背中から光があふれていて、それが翼のように形成されている。


 そして、顔はない。


「……あいつ」


 レティシアも知っているみたいだ。

 険しい表情になり、動きを止める。


「……俺達を探しているのかな?」

「……たぶんね。確かに、今は下手に動かない方がいいわね」


 レティシアと一緒に、じっと息を潜める。

 気分はネコに追われたネズミだ。


 早く立ち去ってほしいと願い、祈り……

 そして、それが通じたのか、人形は彼方へ消えた。

アニメ化記念で、ビーストテイマーのスピンオフを書いてみました。

↓になります。

https://book1.adouzi.eu.org/n3478hr/

こちらも読んでもらえたらうれしいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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