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351話 人形

「……あれ?」


 気がつけば、図書館ダンジョンの最深部に戻っていた。

 あまりに突然のことに、さっきまでのことが夢のように思えてしまう。


「あっ、師匠!」

「うぐっ」


 ドン、と良い感じのタックルが。

 サナが抱きついてきたみたいだ。


「おかりなさいませ、ハルさま」

「大丈夫っぽいかな?」


 クラウディアとシルファが笑顔を見せてくれて、


「無事に戻ってきてくれて、よかったです!」

「おかえりなさいませ」

「おかえり、ハル」

「ふんっ」


 アンジュ、ナイン、アリス、レティシアも迎えてくれた。

 みんな、ここで俺の帰りを待ってくれていたみたいだ。


「やあやあ。その様子だと、無事に継承は終わったみたいだね」


 少し距離を取り……

 どこか様子をうかがうような感じで、シノがそう尋ねてきた。


 失敗した時のことを恐れているのかな?


「大丈夫。ちゃんと継ぐことができたから」

「本当に?」

「本当だよ。ウソついたり見栄張ったりする必要はないでしょ」

「なるほど……そっかそっか、うんうん。君ならうまくやってくれると思っていたよ、はっはっは」


 ようやく確証が持てたらしく、シノがわざとらしい笑い声をあげた。


 意外と怖がり?

 でも、魔王の力が暴走したらひとたまりもないだろうから、当たり前の反応なのかもね。


「……」


 レティシアがじっとこちらを見つめてくる。


「どうしたの?」

「……あんた、なんともないわけ?」

「あるように見える?」

「……見えないわね」

「なら、そういうことだよ」

「ふん」


 俺の心配をしてくれたのかな?

 なんとなくだけど、ひねくれモードのレティシアの感情が読めるようになってきた。


「それじゃあ、うまくいったことを記念して宴を……と言いたいところだけど、こんなところで立ち話もなんだ。まずは学園に戻ろうか」

「シノに賛成ね。ハルも疲れているだろうから、まずはダンジョンから出ないと」

「はい、そうですね。ハルさんを労いたいです」

「お嬢様、お手伝いいたします」

「シルファは、お腹が減ったかな」

「なにもしてなくないっすか……?」

「サナさんにツッコミを入れるなんて、シルファさん、やりますわね」


 みんな、楽しそうに笑顔を浮かべている。

 俺が無事に帰ってきたから安心した……なんていうことだと、ちょっとうれしい。


「良い仲間に恵まれたようだね」


 シノは優しい顔をして、俺にだけ聞こえる声でそう言う。


「君が試練を受けている間、彼女達、全員、とても緊張した様子だったよ。自分のことのようにハラハラしてて……うん。だからこそ、君が無事に帰ってきて、こうしてとても喜んでいるのだろうね」

「……そっか」


 うん。

 シノが言うように、みんなは、本当に良い仲間だと思う。


 みんながいなければ、俺なんて、とっくに野垂れ死んでいただろう。

 あるいは、魔王に呆れられて、体を奪われていたか……

 どちらにしても、ここにはいないと思う。


 それを可能としたのは、みんなのおかげだ。

 改めて、それを実感して、感謝した。


 だから俺は……


「……え?」


 ふと、視界に違和感を覚えた。


 あるはずのないものがある。

 いるはずのないものがいる。


「……」


 いつからそこにいたのか?


 ソレは人の形をしていた。

 手足があって、顔がある。

 しかし、目も鼻も口もない。


 まるで服屋に置かれている人形のようだ。


 そして……

 ソレの背中から光があふれていた。

 それは、まるで翼のよう。


「……」


 ソレに気づいているのは俺とシノだけだ。

 ソレは、ゆっくりと手をこちらに向ける。

 異常なほどの魔力が収束されて……


「まず……!?」


 直後、光があふれた。


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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