表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

342/547

340話 出発

 村の問題は解決した。

 復興もある程度進み、手を貸す必要はなくなった。


 そして……


 旅を再開するための補給を済ませた俺達は、村を発つことに。


「もう行ってしまうのかい?」


 話を聞いて、ソフラさんが見送りに来てくれた。

 彼女だけじゃなくて、他にもたくさんの村人達……それと、アルサムもいる。


「すみません。遠くの街で、待たせている人がいるので……」

「そうかい、それなら仕方ないねえ。まあ、これが今生の別れというわけでもあるまい。近くに来たら寄るといい」

「おう、あんたらなら歓迎だぜ!」

「その時は、また宴会だな!」

「もうっ、そうやって飲みすぎて二日酔いになるんだから、ほどほどにしなさいよ!」


 あははは、という笑い声が響く。


 賑やかで、明るくて、優しくて……

 うん。

 この村の雰囲気はとても好きだ。

 建前とかじゃなくて、機会があれば、また是非寄らせてもらおう。


「人間よ、世話になったな」


 アルサムはいつもの調子で言う。

 ここ数日、ずっと一緒にいたからなのか、そんな彼に愛嬌を感じるようになっていた。


 気ままに世界を旅するドラゴン。

 そして、サナのお兄さん。

 できれば、もう少し話をしたいところだけど……


 そうやってずるずると滞在を延ばしていたら、ずっと村を出れなくなってしまいそうだ。

 だから、この辺りで終わりにしておかないと。


「今回のこと、妹のこと。礼を言うぞ」

「いえいえ、大したことはしていないですから」

「そんなことはないが……まあ、そういう謙虚なところも、お前の美徳なのだろうな」

「ハルは、もうちょっとわがままになってもいいと思うけどね」

「そうですわね」


 アリスとクラウディアの妙な援護が飛んできた。


 わがまま、と言われても……

 今でも十分わがままをしていると思うんだけど?


「ハル様、そろそろ……」


 ナインに出立を促された。


「うん、了解」


 最後に、もう一度、ソフラさん達を見る。

 そして、ぺこりとお辞儀。


「色々とお世話になりました」

「こちらこそ」


 互いに頭を下げて……

 笑顔を交わして……


 そして、僕達はこの村での冒険を終えて、次の場所へ旅立った。




――――――――――




「……」


 カラカラと馬車の車輪が回る音がする。

 時折、小石を踏んだのか、カタンと馬車が小さく揺れる。


 ぼーっと、窓の外を見る。


 村にいた頃は、どんよりと空が曇っていた。

 風も強く、天気は荒れていた。


 でも、今は正反対の空模様だ。

 空は明るく、白い雲が流れている。

 降り注ぐ陽射しは温かく、ちょっと気を抜いたらそのまま居眠りしてしまいそうだ。


 ……でも、今はそんな気分じゃない。


「悪魔……魔王……」


 ぽつりと、そんな言葉がこぼれた。


 その原因は一つ。

 村を発つ前、アルサムと交わした言葉にある。


「悪魔。そして、魔王。その起源を知れ……か」


 そんな言葉をかけられたのだけど、どういう意味なのだろう?


 考えても答えは出なくて……

 もやもやとした気分だけが募る。


「現状って……わかっているようで、わかっていないことが多いんだよね」


 俺の中には、魔王の魂が。

 そして、レティシアは悪魔の魂を取り込み、魔人となった。


 でも、悪魔は根本的にどういう存在なのか?

 魔王とは?


 色々とわからないことが多い。

 そういう部分を知ることが、もっと大事になっていくんだろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ