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338話 一緒に!

 アルサムさんがいるとはいえ、村が二度と襲われないという保証はない。

 それでも盗賊はやってくるかもしれないし、あるいは魔物の襲撃を受けるかもしれない。


 そうなった時に備えて、小さな横穴などは潰して、入り口は一つに。

 それでいて、移動がスムーズにできるように改良して……

 あと、いざという時の避難経路も確保しておきたい。


 本当はここまでする必要はないんだけど……

 ここまできたら成り行きだ。

 やれることは全部やっておこう。


 そう考えて、あちらこちらをチェックして回っていたのだけど……


「師匠!」

「うわっ」


 いきなりなにかがぶつかってきた。

 突然のことに耐えることができなくて、吹き飛ばされてしまう。


「ああ!? ご、ごめんなさいっす!」

「いたた……サナ?」

「大丈夫っすか、師匠!?」

「うん、大丈夫。ちょっと擦りむいたくらいだから……ヒール」


 軽い傷だけど、化膿したら大変なのですぐに治療しておいた。


 それから立ち上がり、コツン、とサナの頭にげんこつを。


「いた」

「なにがあったのかわからないけど、いきなり抱きついてきたらダメだよ」

「うぅ、ごめんなさいっす……」

「サナはただでさえ力があるんだからね」

「反省しているっす……」

「うん、それならいいよ」


 サナはやらかすことが多いけど……

 同じ間違いはそうそう起こさない。

 しっかりと注意すれば問題ない。


「それで、どうしたの?」

「ふへ?」

「なにかあったんじゃないの?」

「あっ、そうっす!」


 忘れていたんだ……


「師匠! 自分は、師匠達についていくっす、一緒にいたいっす!」

「それって……」

「はい。さっきの話っす」


 こんなに早く結論を出したのかな?


 焦って考えていないだろうか?

 深く考えていないのでは?


 なんてことを、ちらりと思ってしまうのだけど……


「……!」


 サナのまっすぐな瞳を見て、それはないな、と否定した。


 この短い間でなにがあったのかわからないけど、彼女はしっかりと考えた。

 その上で、俺達と一緒にいるという選択を選んだ。


 俺だって、サナと別れたくなんてないと思っていたし……

 彼女に問題がないのなら、これからも一緒にいたい。


「サナ」

「ほへ?」


 手を差し出すと、サナはぽかーんという顔に。

 らしい反応に、ついつい苦笑してしまう。


「握手だよ、握手」

「どうして?」

「これからもよろしく、っていう握手」

「あっ……」


 サナの顔が、みるみるうちに笑顔になっていく。

 花が咲いたような、とても綺麗な笑顔で……


「はい!!!」


 とてもうれしそうにして、俺の手を握った。


 尻尾がぶんぶん。

 翼がぱたぱたと揺れている。

 ちょっと犬っぽい。


「改めて……これからもよろしくね」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」




――――――――――――




 和解というべきか。

 それとも、絆の再確認というべきか。


 ハルとサナは、笑顔で握手を交わす。

 そんな二人を、レティシアは少し離れたところで見ていた。


 その瞳にあるのは……羨望の色だ。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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