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334話 やべーっす

 村を襲う最大の危機をなんとか乗り越えることができた。


 それを祝うため。

 あと、恩竜であり、新しい村人の一員でもあるアルサムさんを歓迎するため。

 盛大な宴が催された。


 そして……


「うぇえええええ……やべーっす……」


 翌日。

 サナが青い顔をして、ベッドに横になっていた。

 時折、指先がピクピクと震えていて、陸に打ち上げられた魚みたいだ。


「大丈夫?」

「師匠ぉ……し、師匠の魔法で……」

「なんとかしてあげたいけど、二日酔いを治す魔法はないかな」

「そ、そんなぁ……」


 ガクリとサナが崩れ落ちた。

 わりと自業自得なので、我慢して、としか言えない。


「それにしても……」


 昨夜は遅くまで宴が開かれていたから、みんな、まだ寝ている。

 サナだけひどい二日酔いで起きてしまったらしい。


「これじゃあ、今日中の出発は難しいかな?」


 寄り道をしてしまったから、なるべく早く学術都市に戻りたいんだけど……

 この村にもう一泊することになりそうだ。


「おや、もう起きたのかい」


 振り返るとソフラさんの姿が。


「おはようございます」

「はい、おはよう。早いんだねえ」

「なんとなく目が覚めて」

「ドラゴンのお嬢ちゃんも起きて……」

「うぅ……」

「大変そうだねえ」


 サナが二日酔いになっていることを見て、ソフラさんが苦笑した。

 なにやらポケットを探り、薬草を取り出す。


「ほら、これを食べな」

「うぅ……なんすか、これ……?」

「二日酔いに効く薬草だよ。直接、食べるといい」

「おぉ!」


 サナは目をキラキラして食べるが、


「ただ、恐ろしく苦いけどね」

「ぐはぁっ!?」


 撃沈した。


 二日酔いに苦しむか、苦い薬草で悶絶するか。

 なかなか悩ましい選択だ。


「ところで、もう一人のドラゴン様を知らないかい?」

「そういえば……?」


 アルサムの姿が見当たらない。

 あれだけの巨体なのだから、隠れていても簡単に見つかるはずなんだけど……


「外に出たのかな?」

「すまないけど、探して呼んできてくれないかねえ? ドラゴン様用のごはんを用意しているところなんだ」

「わかりました」


 それくらいなら問題ないと、さっそくアルサムを探してみることに。


 村の中を見て回り、どこにもいないことを確認する。

 やっぱり外かな?

 と入り口へ向かうと、陽の光を遮るような壁があった。


 いや、壁じゃなくてアルサムだ。


「おはようございます」

「む? お前か」

「こんなところでどうしたんですか?」

「なに。眠気覚ましに陽の光を浴びていたところだ」

「……俺も一緒していいですか?」

「構わん」


 少しくらいいいだろうと、隣に座る。


「……」

「……」


 穏やかな沈黙が流れた。

 こうして一緒に日光浴をしていると、種族とか関係なく仲良くなれるような気がした。


「ドラゴンと一緒に日光浴をするなんて、変わった人間だな」

「そうかもですね。ただ、サナと一緒にいるから、その辺りは慣れているのかも」

「ふむ……やはり変わった人間だな。ドラゴンと一緒に過ごすなんて、なかなかできることではない。それに……」

「それに?」

「悪魔と一緒に過ごすこともな」

「……」


 思わず言葉をなくしてしまう。

 アルサムが指している対象は、間違いなくレティシアだろう。


「気づいていたんですか?」

「うむ。あれだけ強烈な気配を放っているのだ、気づかない方がおかしい」

「そうですか」

「それに、お前もな」

「……」


 ちょっと抜けているドラゴンかも、なんて思っていたけど……

 そんなことはなかった。

 鋭い観察眼を持ち、わずかな違和感も見逃すことはない。


「昨日の宴で妹から色々と話を聞いた。魔王、悪魔、魔人……それらを全て解決しようとしていると。無茶な話ではあるが、しかし、お前達を見ているとそうでもないと思えてしまう。不思議な人間だ」


 褒められているのかな?


「その上で、一つアドバイスを贈ろう」

「アドバイス……ですか?」

「世界を知れ」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] タイトル回収来ましたー いや、これからかな
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