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330話 襲撃

「どうした?」

「ごめん、ちょっとまってて!」


 不思議そうにするアルサムさんを置いて、俺達は来た道を全力で駆け戻る。

 なにが起きているかわからないけど、村がピンチなのは確か。


 急いで戻らないと!


「師匠、自分の背中に乗ってくださいっす!」

「了解!」


 言われるままサナの背中に乗る。


 女の子におんぶをしてもらうというのは、ちょっと情けない絵柄なのだけど……

 この際、そんなプライドは捨てる。


「いくっすよー!」

「ハル、あたし達もすぐに追いつくから!」

「うん、まって……るぅううううう!!!?」


 ギュウウウウウゥンッ! という音が響きそうな感じで、サナが急加速した。


 重力が横に変化したかのように、体が後ろに引っ張られる。

 景色が横にスライドしていく。


「わわわっ」


 風圧で息ができないくらい速い。

 それと、上下左右にガクガクと動くものだから、下手したら落ちてしまいそうだ。


「師匠、しっかり掴まっててくださいっす!」

「りょ、了解!」


 女の子に抱きつくなんて……と、そんなことを言う余裕はない。

 サナにしっかりと抱きついて、絶対に落ちないようにする。


 すると、サナがさらに加速して……


「うわっ!? わっ、わっ、わっ……!!!?」




――――――――――




「師匠!」

「はっ!?」


 サナの大きな声で、俺は意識を取り戻した。

 あまりの加速に気絶していたみたいだ。


「ついたっすよ」

「う、うん。ごめん……それと、ありがとう」

「えへへー」


 お礼代わりに頭を撫でると、サナはでれっとした顔に。

 最近、サナのことがわんこに思えてきた。


「それよりも、村は……!」

「まだよくわからないっすね」


 洞窟の入り口に到着しただけで、まだ村についたわけじゃないみたいだ。


 ただ、ここまでくれば俺でもわかる。

 なにかが暴れるような音と、そして悲鳴が聞こえてくる。


「サナ、急ごう!」

「アイアイサー!」


 村がある場所へ急いで……

 途中、ふと思いサナに尋ねる。


「そういえば、嵐の結界は機能していたの?」


 何事もなく洞窟に入れたことを、今更ながら不思議に思う。


「なにもなかったっす」

「結界を解除した? いや、でもそんなことをする理由が……」


 理由を考えようとして、思い直す。

 今は理由を突き止めている場合じゃない。

 何者かに襲われているのなら、早く助けないと!


 勢いをつけて走り……

 ほどなくして、洞窟の中に広がる村が見えてきた。


「これは……」


 村が盗賊に襲われていた。

 屈強な男達に武器を向けられて、村人達が悲鳴をあげて逃げている。


 その中にはソフラさんもいて……


「このっ! ……ファイアッ!!!」


 怒りで魔法を放つ。

 ただし、ソフラさんを巻き込まないように、威力はきちんと調節しておいた。


 弱く弱く。

 ほんの少しの魔力を流す程度に。


 うまい具合に調節された魔法は盗賊だけを飲み込み、吹き飛ばす。


「ソフラさん、大丈夫ですか!?」

「あんたは……」

「怪我は……大丈夫みたいですね」


 腰を抜かしてしまったのか、ソフラさんは地面に座り込んでいる。

 もしかしたら捻挫などをしているかもしれないが、ただ、見た目で大きな怪我はない。


 なら、治療は後回しだ。

 他の村人達を助けないと。


「ファイアッ!」


 俺が魔法で、サナが拳で盗賊を狙うものの……

 くそ、数が多い!

 数十人以上の大規模盗賊団なのか、倒しても倒しても、どこからか湧いて出てくる。

 まるでゴキブリだ。


 このままだと被害が拡大してしまう。

 そうなる前に、どうにかして盗賊達の動きを抑えないと……


「あっ……サナ、ドラゴンの姿に戻って!」


 ふと、俺はそんなことを口にした。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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